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疲れるコミュニケーション ーダブルバインドー

「あの人と話すとどうも思ったとおりに行動できなくなる」
「あの上司の言ったとおりにしたのになぜか怒られた」
そう思ったことはありませんか。

こうした人とのコミュニケーションにはダブルバインドが隠れているかもしれません。
ここでは、疲れるコミュニケーションの中の一つ、ダブルバインドについて説明します。

ダブルバインドとは?

受け手を混乱させるダブルバインド

二重拘束 double bind とは、あるメッセージとそれとは矛盾するメッセージ(メタメッセージ)との間で身動きが取れなくなっている状況のことです。
文化人類学者であり精神科医でもあったグレゴリー・ベイトソンが1956年に発表した『ダブルバインド理論』の中で提唱された心理的効果です。

ダブルバインドの例

上司から「何でも訊いてくれ」と言われて質問に言ったら「そんなこと自分で考えろ!」と言われてしまったとき、あなたはダブルバインドの状況に陥っています。

また、「何もしないでいいから」と言われた会議でなるべく参加者の邪魔にならないよう黙っていたら、終わってから「本当に何もできないんだな」と言われてしまったときも、ダブルバインドの状況におかれていると言えるでしょう。

ダブルバインドの種類

ダブルバインドの状況におかれた人は混乱し、それが解消されないままだと「あの人は何が言いたかったのだろう」と悩み、つぎ行うべき行動は何なのか葛藤状態に陥ります。
「言われたことの分からない自分はバカだ」と自分を責めたり、「どうしていいのか分からない」と無力感から何もできなくなったりします。

ネガティブ感情を引き起こすダブルバインドですが、いくつかの種類に分類することができます。
ダブルバインドについての解像度を高めることで、ダブルバインドをしかけられても素早く気づき、適切な対応を取りやすくなります

言語メッセージと矛盾する言語メッセージ
先に言ったことを後から覆されるダブルバインド

1つ目は、メッセージとメタメッセージがどちらも言語(セリフ)によって発されるものです。
「自由にやっていいぞ」と言われたのに、後から「勝手なことするな」と言われた、といった場合がこれに当たります。

この場合、メッセージとメタメッセージは時間差をおいて発せられるのが特徴です。

言語メッセージと矛盾する非言語メッセージ
言葉と態度で同時にしかけられるダブルバインド

もう1つは、メッセージは言語、メタメッセージは非言語(態度や言い方)によって同時に発されるものです。
上司から怒った口調で「もう勝手にしろ!」と言われた場合、部下は『勝手なことをするな』というメッセージをその言い方から受け取るでしょう。

もしくは、上司がため息をつきながら「お前は楽そうで良かったな」と言われた場合、ため息からは『良くはない』というメッセージを、セリフからは『良い』というメッセージをそれぞれ受け取っています。
これも受け手は混乱し、その後、ネガティブ感情に苦しむことになります。

複雑なコミュニケーションになるほどダブルバインドは起こりやすい

困るのは「セリフ」と「言い方」と「行動」のような、複数の階層(モジュール)から発されているメッセージが異なる場合です。
「もう勝手にしろ!」は『勝手にして良い』、「怒った口調」は『勝手なことはするな』というメッセージだとして、そこに「扉を強く閉めて部屋から出される」という行動が加わると、『どこへでも勝手に行け』というメッセージとも取れますし、『勝手なことはせず反省しろ』というメッセージとも取れます。

このような高度なコミュニケーションを求められると、大人でさえ混乱と動揺が生じるのですから、子どもがダブルバインドの状況におかれたときの苦しさは想像を絶することでしょう。
いわゆる毒親と呼ばれる養育者は、ダブルバインドの使い手と言えます。

エリクソニアン・ダブルバインド

一方、それほどネガティブな感情を引き起こさない、いわゆるポジティブなダブルバインドもあります。
ミルトン・H・エリクソンが催眠療法の中で用いたことから、エリクソニアン・ダブルバインドと呼ばれます。

例えば、車の販売員の「黒の車と白の車でしたら、どちらがイメージに合っていますか」といった訊き方がそれに当たります。
「車を購入するかしないか」という前提をスキップし、黒か白かを選ばせることで購入する流れに誘導するテクニックであり、誤前提暗示とも呼ばれます。

混乱に陥れて「行動できなくなる」ダブルバインドに対して、エリクソニアン・ダブルバインドは「行動させる」ダブルバインドと言えます。

ダブルバインドの原因と影響

ダブルバインドは元々、グレゴリー・ベイトソンが統合失調症(幻覚と妄想を主症状とする精神疾患)患者の家庭環境を調査したときに各家庭に共通するコミュニケーション傾向として報告したものです。
当初はダブルバインドが統合失調症の原因とも言われましたが、現代ではその仮説は否定され、元々持っている遺伝子が精神負荷(ストレッサー)によって発症することが分かっています。

ダブルバインドを多用する人というのは他者に動いてもらうときに依頼や期待を伝えるのではなく、ポジション・パワーを用いりやすい人だと思われます。
ポジション・パワーとは役職や立場から生じる力であり、プライベートでは親や長男長女、ビジネス場面では経営者、重役、議員、医師、弁護士、教師などが有している権力のことです。

尊敬や崇拝を集めやすい人は、相手に頭を下げて行動をお願いしたり「○○してほしい」と率直に伝えたりすることに抵抗があり、その代わりとしてダブルバインドのようなポジション・パワーを使ってのコミュニケーションの方が相手を容易に動かせることを経験的に知っているため、これを多用するのです。

一方、ポジション・パワーを有していながらもダブルバインドをあまり用いない人もいます。
その差は、幼少期の養育環境から生じるものと考えられます。

家庭の中で親、特に父親の威厳が強かった場合、幼少期は「何を買ってもいい」と言われながら親の気に入らないものだと落胆され、成長してからは「好きな進路に進め」と言われながら好きな進路を選んでも親の期待に応えても親の言ったことに従ったことになり、大人になってから「そろそろ結婚相手の一人でも」と言うので交際相手を会わせても職業や年収を理由に難色を示される――こんな環境におかれていると、次第に自分もダブルバインドを使いやすくなってしまうことでしょう。

ダブルバインドへの対処

ダブルバインドにおかれた人はメンタルをやられやすく、そこからパフォーマンスも低下してしまいがちです。
代表的な対処法を5つ挙げますが、心身に不調をきたしている方はなるべく早く相談されることをおすすめします。

ノートなどに書き出す
出来事を書き出すことでストレス状況を整理できる

特定の相手とのコミュニケーションを「苦しい」と感じたときには、いつどこでどんなことがあったのか書き出してみると良いでしょう。
書くことで一瞬の間に過ぎ去ってしまった考えや感情が何だったのか捉えることができ、続けることでダブルバインドやそれに対する自分の行動パターンから対策に気づきやすくなります。

非言語メッセージの方に従う
態度・行動・言い方のメッセージを受け取ると失敗しづらい

メッセージとメタメッセージが言語と非言語によって発されている場合には、非言語メッセージ(態度・行動・言い方など)の方に対応する癖をつけると良いでしょう。
ダブルバインドにおかれたときには『どうしたらいいんだろう……?』と戸惑った結果、言われたこと(言語)の方を選択しがちですが、実は言語メッセージというものはもう一度同じことを言うのが困難なほどあいまいなメッセージです。

「辞めちまえ!」と言われたら『わざわざ声かけをしてくれた行動』に着目して辞めない方を選択した方が良く、また、ため息まじりに「良かったね」と言われたらため息の方を受け取って謙遜したり謝るなりした方が良いでしょう。
少なくとも、言語メッセージに従って更なる不興を買うよりは穏便に済みます。

その場で確認する
矛盾に気づいたら悩みになる前に確認する

即座にダブルバインドに気づけたときには「それはこういうことですか」と訊きましょう。
後々まで「どうすればよいか」と悩み続けることを防ぎ、正解しても間違っても精神的な負荷のかかる時間を最短で終えることができます。

同じ立場の人に訊く
同僚・同級生・兄弟姉妹といった人に相談してみる

ポジション・パワーを用いる人からのダブルバインドの場合、似たようなメッセージを受けた人が他にもいることが多いです。
自分と同じ目に遭っている人がいなくても、同じポジション(立場や役職)の人ならどういうふうに行動したら良いか、どうすればダブルバインドに陥らずに済むかを教えてくれるかもしれません。

専門家に相談する

ダブルバインドは統合失調症の原因ではないとは言われていますが、それでも大変ストレスのかかるコミュニケーションであることには違いありません。
どのようにすればダブルバインドを回避できるか、そもそもダブルバインドをしてくる人とはどう関わるかについては専門家でも一筋縄ではいかないケースが多いです。

ダブルバインドにおかれている方、ダブルバインドだと思われるけれどパフォーマンスが落ちていて状況を冷静に考えられない方などは、専門家に相談されるのが良いでしょう。

まとめ

ダブルバインドとは、「あるメッセージ」と「それと矛盾するメッセージ」を発することで相手を混乱・悩み・自責に追い込むコミュニケーションの一つです。
後から矛盾したメッセージを発するものの他、「言っていること」と「言っている様子(口調・態度・行動など)」が矛盾しているものも、ダブルバインド状態に陥らせることが分かっています。

ダブルバインドをしてしまう原因は、役職や権威によるポジション・パワーを持っていることや、幼少期にダブルバインドを使用された体験をそのまま再演していることなどが考えられます。
ダブルバインドを受けたときには、①紙に書き出す、②非言語メッセージの方に従う、③その場でメッセージ内容を確認する、④同じ役職や立場の人に確認する、⑤専門家に相談するといった対処することが望ましいでしょう。

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