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誤解されやすい人 −演技性パーソナリティ−

「どうして私のことを分かった気になって接してくる人が後を絶たないのだろう」
「なぜ私は同性から誤解されやすいのだろう」そう悩んでいる方はいらっしゃいませんか。

人が人と関わる以上、誤解はつきものですが、誰しも誤解はしたくないし、されたくもないもの。
ここで挙げたような誤解を招きやすい方は、演技性パーソナリティかもしれません。

周囲に「理解した」と誤解されやすい、演技性パーソナリティの心理について説明します。

誤解されやすい人の特徴

誰からも好かれやすいが誤解も多い演技性パーソナリティ
八方美人で、誰に対しても親密かのように接する

誰に対しても分け隔てなく接している分には問題ありませんが、Aの立場の人にはAにとって都合の良いことを、Bの立場の人にはBに調子の良いことを言うような八方美人な行動は、誤解を生みがちです。
そのやり方も関係性を超えて親密であるように馴れ馴れしい行うと、相手にも周囲にも誤解が生じやすくなります。

特に女性から男性に対し、同性よりも愛想が良かったり男性相手というだけで愛嬌を振りまいたりしていると、同性である女性陣から無視されたり妬まれたりします。
女性陣からだけでなく、男性陣からはそれぞれから「気がある」と思われたり、性的な誘いを受けやすくなったりすることもあります。

感情表現がオーバー

大げさに喜んだり驚いたりすることで、それほど感動しているわけでもなくても、「大いに喜んでくれた!」「すごく驚かせてしまった……」と、相手の心を揺れ動かしてしまいがちです。
動きがオーバーだったり顔色を伺うときに上目遣いだったりすると、相手だけでなく近くで見ている人にもうんざりされたり、呆れられてしまったりすることもあるでしょう。

修飾語や形容語による誇張をよくする

あまり中身のない話や報告にも「重大」「重要」「本質」などの形容語を使って強調したり、自分の感情や思ったことに「すごく」「とても」「大変」などの修飾語をつけたりして話します。
聞いている方は「何か重大なことが?!」と身構えるも「なんだ、そんなことか」と緩和することを繰り返さねばならず、誤解と修正に気疲れしてしまいます。

ネームドロッピングで聞き手の関心を引く

会話の中で有名人や芸能人の名前を出し、自分の考えや行動に説得力を出そうとすることもあります。
自分がそういった人名の広告に弱いことの裏返しなのですが、名前を出して相手が納得したり、称賛したりしてくることを期待するようです。

「〜と思う」が多い

「〜です」と断定することに不安があり、「〜で、〜で、」と文を次々とつなげたり、「〜と思う」とあくまで自分の感想であるかのように話したりしやすいです。
深く考えることが苦手だったり、感じたことを考えにまで掘り下げて言語化できなかったりすることの表れであるようです。

本当は自分なりに考えたことでも「〜と思う」と話してしまうため、意見を軽く扱われたり「あまり考えていないんだな」と誤解されたりしやすくなります。

後回しや逃避をよくする

「困りごとは後で取り組もう」や「難しいことは後で何とかしよう」など、問題解決に取り組むときに「〜の後で」をよく用いります。
課題に対してじっくり腰を据えて考えながら取り組むことが苦手で、考えなくても脊髄反射的に取りかかって解決できたり、感情的に反応するだけで好転したりするような、都合の良い展開を好みます。

多忙で疲れたり休職したりした際には、バカンスに行ったり実家に帰ったりすることで気分や体調が良くなる場合があります。
日ごろ生活している範囲から離れることでメンタルの状態が回復することを地理的治癒といいますが、普段からこの地理的治癒を頻繁に行う傾向があります。

「いいね」を希求する

FaceBookやInstagram、TikTokといったSNSによって人とつながることを好み、自分の交友関係を広げたり友人や知人との仲を深めたりすることに活用します。
投稿したものを見られることや「いいね」をもらうことに喜びを感じ、より良い投稿をするために没頭したり全精力を注いだりします。

女性の場合、派手で露出の多い服や人目を引くメイクをする

注目を好むことから、露出の多い服などの刺激的な服装になることへの抵抗があまりありません。
メイクに関しては時代や文化によって好みが変化しますが、上手なメイクをすることには人並み以上の意欲があり、反面、ほとんどのケースでノーメイクになったり素顔をさらしたりすることへの強い抵抗感があるようです。

主な不調

感情が高じやすいこととどう折り合いをつけるか
パニック

ストレスがかかったとき、まず感情的に反応してからでないと判断や行動に移せないところがあります。
過大なストレスの場合には動揺したり混乱をきたしたりし、その反応が更に感情をあおって、ますますパニックに陥ってしまうことがあります。

パニックになりやすい人とパニック障害のなりやすさは基本的に無関係ですが、パニック障害をはじめとする不安障害を発症し、「またああなるのではないか」という不安感がエスカレートして、社会生活に支障をきたす場合もあります。

依存

不安や驚きへの劇的な反応を抑えるため、過度に依存的になることがあります。
不安を抑える目的で抗不安薬を飲み始めたところやめられなくなったり、アルコールに頼って気を紛らわせたりするようになります。

特にアルコールは他者との交流の機会を増やしてくれたり、逃避として機能して問題を先送りにしてくれたりもするため、このタイプの性格傾向の人と相性が良く、それだけ依存も形成しやすくなります。
人に甘えたり頼ったりすることも得意なことが多く、親や友人、交際相手などに依存するケースもあります。

怒りの抑圧

社会的に認められた方法で怒りを表明することは難しいものです。
社会経験を重ねていくと、相手の立場も理解した上で怒ったことを伝えていったり、怒っていることを遠回しに伝わるよう周囲の力を借りたりしますが、そういった手段を考えたり他がどうやっているか注目してこなかったりすると、怒りのエネルギーは発散することなく脳と体に累積していきます。

高い社交性を持ち、人からの注目と好意を求める人は、怒りを怒りとして表すことが不得意であり、しばしば怒りの感情を抱いたことを自分の中で「なかったこと」にしがちです。
脳と体に蓄積された怒りのエネルギーは体中に痛みとして出現し、また怒りの感情そのものもより立場が弱かったり若かったりする者に八つ当たりという形でぶつけられることがあります。

ここで挙げたような特徴を備えた性格を演技性パーソナリティといいます※1

演技性パーソナリティの認知

演技性パーソナリティの人の特徴的な認知(思考)を紹介します。
身近な人であれば、どのような考え方をしているか知ることで関わりやすくなリますし、自分が演技性パーソナリティかもと思われる方であれば、心理療法で取り扱うべき課題もはっきりしてくるかと思います。

他人を喜ばせなければならない  be pleasured

養育者から「みんなを喜ばせるように。楽しませるように」ということを期待された子は、次第に周囲の人が喜んでくれたかそうでないかを価値基準の中心に置きます。
「他人が喜んでくれた自分の行動は良いものだから増やそう。喜んでくれなかった行動は減らそう」と意識下で考え、それに合わせた行動や態度を選択し身につけていくのです。

周囲からの反応があるかどうか、喜ぶかどうかが規準になるため、喜んでもらった後でどのようなツケを払わなければならないかにまで考えが及んでいないことがあります。
また、周囲からの期待に応えんとして無理をしすぎたり、自分や親しい人の時間や労力を消耗させてしまったりもします。

考えてはならない

「少し考えれば分かりそうなのに」と周囲が思うようなことでも、後先考えずやったり、引き受けたりしやすい傾向があります。
あれこれ考えると眠くなったり、別のことに気が逸れたりしやすくなるのは「考えてはならない。考えるべきではない」の認知が働いていると考えられます。

この認知は、幼少期に考えに考えたことを子ども扱いされ、「そんなことはしなくていいから、あなたは明るく楽しくしていて」というメッセージを養育者から受け取り続けたことによって獲得されます。
成人してからもこの傾向がある場合には、ブレーンを採用したり、カウンセリングなどで一緒に考えたりすることで、認知変容を目指すことができます。

成長してはならない

どんな哺乳類も幼い頃は可愛らしい見た目と等身をしており、成長するに従ってそのような容姿ではなくなっていきます。
人間の場合も同様ですが、養育者から「小さく可愛らしいままのあなたでいてほしい。成長しないでほしい」というメッセージを受け取ったことで、身体的にも精神的にも成長を止めてしまうことがあります。

成長してはいけないので、食事を摂らなくなれば摂食障害、愛される容姿のままでいようとすれば醜形恐怖など、メンタル疾患を発症してしまうことも少なくありません。
このような場合にも、カウンセリングによる心理的アプローチと、点滴などによる生物的アプローチを並行して実施されることが有効です。

演技性パーソナリティの原因

幼少期に注目を最大化する手立てを身につけた

演技性パーソナリティは、遺伝的要因までは特定されていません。
出生後の生育歴にその原因があるという説が有力です。

演技性パーソナリティの人は、幼少期に養育者、特に異性の親からの注目を一身に受け、異性の親を喜ばせ、楽しませることを推奨されたといいます。
女性は父親から「小さなプリンセス」、男性は母親から「小さな王子様」扱いされ、また同性の親からは「親友・仲間」のような友達親子のような接し方をされ続けると、演技性パーソナリティが形成されると考えられます。

行動分析学では、人が行動回数を増やすのは3つのパターンがあるとしています。
それは、①物や活動を得る(食事や遊びなど)、②感覚を得る(布団や風呂に入るなど)、③注目を得る、の3つです。
演技性パーソナリティは、この③注目を得ることを他2つよりも重視し、他者から注意を払ってもらったり、声かけしてもらったりするような発言や行動を習慣的に身につけているものと考えられます。

こういった養育環境に身を置くことで、遅くとも6歳までには演技性パーソナリティが確立するとされています。

演技性パーソナリティ障害

演技性パーソナリティ障害はクラスタBの人格障害

演技性パーソナリティのネガティブな側面が強調され、自分や他者の生活を著しく障害する場合、演技性パーソナリティ障害という診断になります。
周囲が思うよりも親密な関係であるかのような振る舞いが多く、親密さを示す必要のない教師や医師にも親密に接する、ハグやボディタッチを多用するなどの特徴があります。

演技性パーソナリティ障害の診断基準
  • 自分が注目の的になっていない状況では楽しくない
  • 他者との交流は、しばしば不適切なほど性的に誘惑的な、または挑発的な行動によって特徴づけられる
  • 浅薄ですばやく変化する感情表出を示す
  • 自分への関心をひくために絶えず身体的外見を用いる
  • 過度に印象的だが内容がない話し方をする
  • 自己演劇化、芝居がかった態度、誇張した情緒表現を示す
  • 非暗示的、つまり他人または環境の影響を受けやすい
  • 対人関係を実際以上に親密なものとする

パーソナリティ障害として治療が必要な場合でも、有効な心理療法や薬物療法は確認されていません。
他の併存疾患として、拒食症や大食症などの摂食障害、パニック障害、醜形恐怖などがあるとされます。

「女性の方が演技性パーソナリティ障害になりやすい」という報告もありますが、女性特有のパーソナリティ障害ではありません。
臨床経験を踏まえれば、女性の方が多く相談には訪れますが、これは演技性パーソナリティの男性があまりメンタル疾患にならず、受診や相談に訪れないからと考えられます。

演技性に対応するには

演技性パーソナリティの人は誤解を生じやすく、そのために周囲と摩擦を起こしやすいところがあります。
一方、感情的な反応性の高さや怒りの抑圧など、自分の心身に負荷をかけてしまいがちなパターンもあります。そんな演技性パーソナリティへの対応を3つご紹介します。

自分自身を楽しませる

自分の身を削って他者の機嫌を取りに行くことを止める

日本社会には、「自分を喜ばせ、楽しませる」ということを「自己満足」や「独りよがり」と呼んで貶める風潮があります。
しかし、演技性パーソナリティはこの傾向がいきすぎ、厳しい要求を突きつけてくる他者まで喜ばせたり、満足させたりしようと無理をしてしまいやすいです。

自立した大人は自分の機嫌を自分で取れること、自分を楽しませないで倒れてしまっては楽しませたい他者すら楽しませられなくなることを確認し、まず自分をケアするようにしましょう。
おひとりさま行動をする、スパやネイルなどしたい自分磨きをする、観劇するといった行動が有効です。

事実と真実は違うことを知る

感じたことがそのまま事実とは限らない

演技性パーソナリティは感性豊かであり、「実際のこと」と「自分が感じたこと」をしばしば混同します。
例えば「肩がぶつかったこと」を(嫌がらせをされたと感じたので)「嫌がらせをされている!」と感情をエスカレートさせてしまう、といったようにです。

「政府が裏で企みをしていたら怖い」と感じたことをエスカレートさせ、「政府は裏で良からぬことをしている!」と陰謀論を信じ込んでしまうのもその一つです。
不安だったり怒りを感じたりしたら素直にそう話すこと、その上で感じたことと実際のことを切り分けて考える時間が必要です。

他の人と一緒に現実的な対応を考える

面倒でも逃げずに戦略を立てると人間的にも成長

誰に対しても愛想良く、八方美人になりかねない演技性パーソナリティの人は、特に同性からの誤解や嫉妬を受けやすいところがあります。
そんなとき、「私は私だから」と行動を見直さなかったり「周りはねたんでいるだけ」と発言を修正しなかったりすると、更に周囲との摩擦が大きくなってしまいかねません。

同性に対してどのような戦略をもって臨むかは、親友やカウンセラーなどに相談してみると良いでしょう。
特に演技性パーソナリティの人はこの「戦略」というものが苦手で、中長期的に良い方向にいくよう考えるよりも短期的なメリット(喜んでもらえるとか自分が我慢しなくて済むとか)を重視しやすい傾向にあります。

客観的な視点を持った人と一緒に対応を考えることで、どう話したり振る舞ったりすれば良いか、見直すことができるでしょう。

まとめ

他者から「理解した」と誤解されやすい人は、演技性パーソナリティの可能性があります。
演技性パーソナリティは感情表現豊かで人から好かれやすい反面、長期的なことをあまり考えず、目先の好印象や場の空気を優先してしまうことがあります。

幼少期に養育者、特に異性の親からの注意を引いて好感を持たれるよう振る舞ったため、成人してからもその習慣のまま行動したり発言したりすることが一因と考えられています。
周囲のことよりも自分と未来のことを優先し、自分のために考えたり行動したりすることが状況を好転させるポイントです。

現状に対して冷静な視点を必要としている方、身近な人が演技性パーソナリティで困っているという方も、一度等オフィスにご相談ください。

※1 交流分析による人格適応論, ヴァン・ジョインズ, イアン・スチュアート, 2007

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