
凍りつき
トラウマ(心的外傷)とは、災害、暴力、深刻な性被害、事故、虐待などに晒されたことで生じる一連の症候群のことです。
そのようなトラウマを引き起こす経験のことをトラウマ体験、そのような体験に関する記憶をトラウマ記憶といいます。
トラウマ体験の後、1ヵ月以上経っても反応が消失しない場合、PTSDと診断される可能性があります。
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トラウマを経験すると、強いネガティブ感情が引き起こされ、自律神経は背側迷走神経優位の状態になります。
背側迷走神経優位とは心身の防御状態であり、心拍は弱まり、感覚は鈍り、感情は湧き上がりにくくなり、全身は硬直するため、凍りつき状態(シャットダウン)とも呼ばれます。
災害や戦争体験が凍りつきを引き起こすのは、想像に難くありません。
被災時、想像を絶するような光景や揺れに見舞われると、自律神経は生命維持を優先し、末梢に血液を送らなくなります。
手足は冷え、脱力し、力が入らなくなります。
頭部にも血液が行き届かなくなり、思考ができなくなって頭が真っ白になったように感じられます。
絶望感と孤独感も心に押し寄せます。
一度トラウマを体験した人は、それに関わるきっかけによって再びこうした凍りつき状態に入りやすくなります。
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生命が危険に脅かされるような大きなストレスでなくても、自律神経は凍りつきを起こすことがあります。
幼少期の虐待やいじめ体験もまた、強いネガティブ感情と凍りつき反応を生じさせます。
養育者から暴力を受けたり、逆に全く相手にされず無視されたりすると、体は先と同様に生命維持を優先し、凍りつきの状態に入ります。
痛みや無力感を感じていては心が余計つらくなるため、脳は身体感覚を受け取らなくしたり、置かれている状況について深く考えないようにしたりします。
体はトラウマを覚えている
トラウマを体験した人が似たような状況に遭遇したとき、意識や思考よりまず体が反応します。
被災した人なら被災時の状況に、虐待を受けた人なら虐待時の状況に近いシチュエーションを前にすると、体が委縮したり身体感覚が麻痺したように感じたりします。
意識に上る前の反応のため、意識や思考ではどうしようもありません。
体が反応すると、その反応に合致した思考が呼び起こされます。
「私は助からない」「私は何の力もない」といった悲観的で否定的な思考と、そういった思考が形成された過去の記憶もセットになって甦ってきます。
思考は身体反応に更に拍車をかけ、反応はより激しく表出します。
身体反応はただの反応
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体に生じているトラウマ反応についてはあれこれ解釈せず、ただ体が反応しているだけと割り切り、観察することが肝要です。
人前で話すときなども「手汗をかいている」と観察だけしておけばよく、「緊張している」と解釈すると余計に反応が昂ってしまうのと同じ仕組みです。
もちろん、背側迷走神経優位状態の反応は筋緊張や流涙など劇的なものですが、それでもあれこれ解釈しても沈静化する確率は低いです。
ただ自分の状態を眺め「どうにかしよう」とせずにいられれば、身体反応は亢進したり増幅させたりすることもありません。
トラウマ反応は意図的に起こすものではなく、不意に起こってしまうものです。
一人でいるときにトラウマ反応を起こしても苦しい気持ちになるばかりで慣れるようなものでもないので、治療目的で反応を起こそうとすることは推奨されません。
過去と決別しトラウマ治療を行いたい方は、ぜひ一度当オフィスにご相談ください。
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