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うつとは

うつ(大うつ病性障害:major depressive disorder)は、①一日中続く気分の落ち込み(抑うつ気分)と、②あらゆることへの興味が消失し、何も楽しいと思えなくなること(興味・喜びの喪失)の二大症状をはじめとして、5つの症状が2週間以上続く病気です。
「うつ」という単語から、こころや気持ちの症状に目が向きがちですが、身体症状も同時に出現するのがうつの特徴です。

うつの症状

うつ患者は増加の一途を辿っている※1
精神症状

うつになると、先の二大症状以外にも、焦ったりそわそわしたりしやすくなる(精神運動性焦燥)、周囲の刺激に対して反応しなくなる(精神運動性沈滞)、疲れやすくなる(易疲労感)、見るからにやる気が低下する、自分には価値がないと感じたり罪悪感を強く抱いたりする、物事に集中できなくなる、物事をはっきり決められなくなる、死にたくなる(希死念慮)といった精神症状が現れます。

身体症状

うつと診断されるときの身体症状としては、寝つきが悪くなったり全く眠れなくなったりする(不眠)、逆に眠りすぎてしまったり日中も寝たくなったりする(睡眠過多)、極端に食欲が落ちる、逆に際限なく食べ過ぎるようになったり食べていないと落ち着かなくなったりする(食欲の減退または増加)、体重が急激に落ちたり逆に急増したりする、といったものがあります。
体の症状も出現するところから、うつは医療の中では心身医学の専門領域とも言われています。

ストレス性の身体症状としては、他に以下のようなものもあります。

症状説明
胃痛ストレスによって胃酸の分泌が過剰になると胃に炎症ができ、胃痛が起こります
腹痛・下痢・便秘自律神経系のうち腹部の調整を行う神経が過剰に働くと、腹痛が起こったり下痢や便秘を引き起こしたりします(=背側迷走神経優位)
めまい・ふらつき自律神経系のうち脈拍と血圧の調整を行う神経の活動が低下すると、起立したときにめまいがしたり歩行中にふらついたりします(=背側迷走神経優位)
頭痛・耳鳴り同じく脈拍と血圧の調整を行う神経の活動が低下することで、頭痛や耳鳴りが引き起こされます
また、筋緊張の調整にも乱れが出た場合、緊張性頭痛が起こりやすくなります(=背側迷走神経優位)
動悸・頻脈自律神経系のうち脈拍と血圧の調整を行う神経の活動が過剰になると、生体は「戦うか逃げるか」の状態になり、動悸や頻脈が起きます(=交感神経優位)
過呼吸自律神経系のうち呼吸を規則正しく整える神経が乱れた場合、呼気と吸気が少なくなったり逆に過呼吸になったりします(=背側迷走神経優位)
吐き気・喉のつかえ自律神経系のうち他者との交流を司る神経が乱れた場合、発声や笑顔を作ることが難しくなります(=背側迷走神経優位)。結果、ヒステリー球と呼ばれる喉のつかえや吐き気が生じます
かゆみストレスによって神経過敏となり、かゆみを感じるようになります
抜け毛ストレスによって血流悪化・皮脂分泌の増大・栄養の偏りなどが生じた結果、頭髪などが抜けやすくなります
落涙・流涙(感情失禁)ストレスによってネガティブな感情を司る扁桃体という脳部位が大きくなった結果、悲しみや絶望感から涙が出やすくなります。また、背側迷走神経優位の状態でも無力感を感じやすくなります
ストレスが体に引き起こす変調(一部)

診断基準

下記症状がほとんど1日中、ほとんど毎日あり2週間にわたっている症状のために著しい苦痛または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能障害を引き起こしている。
これらの症状は一般身体疾患や物質依存(薬物またはアルコールなど)では説明できない。

  1. 以下の症状のうち、少なくとも1つある。
    1. 抑うつ気分
    2. 興味または喜びの消失
  2. 更に、以下を併せて、合計で5つ以上の症状が認められる。
    1. 食欲の減退あるいは増加、体重の減少あるいは増加
    2. 不眠あるいは睡眠過多
    3. 精神運動性の焦燥または制止(沈滞)
    4. 易疲労感または気力の減退
    5. 無価値感または過剰(不適切)な罪責感
    6. 思考力や集中力の減退または決断困難
    7. 死についての反復思考、自殺念慮、自殺企図

うつ病の診断基準を要約すると、次のようになります。

  • 身体症状と精神症状が合計5つ以上ある
  • 症状のうち、1つは「うつ気分」か「興味・喜びの消失」である
  • 症状が2週間以上続いている

この条件を満たせば、うつ病(大うつ病性障害)と診断されるのが、現在の世界的な診断基準です。
ポイントは、うつ病になったきっかけや原因を問わなくても、うつと診断できるという点です。

この診断基準が適用されるまでは、○○うつ病といった原因によって病名がつけられており、医者の間でも病名が異なるために、うつ病の人がどれくらいいるか統計を取ることが困難でした。
ある医者からは「降格となったためにうつになった」と診断された人に、別の医者からは「うつになりやすい遺伝子がストレスを契機に発症した」と診断された場合、別の病気にかかったものとしてカウントされていたのです。

分かりやすい診断基準になったことで専門家の間でのズレは格段に改善されましたが、抗うつ薬の処方数増加と、抗うつ薬をやめられない人たちの増加も引き起こされました。
また、患者さん側は一生懸命経緯を話しているのに医者は症状だけチェックすれば診断できるため、「医者はこちらがこんなに説明しているのにちっとも話を聞いてくれない」といった医療不信も多数生まれることとなりました。

うつの兆候(サイン)

うつ病になる前に現れやすい症状として、睡眠の乱れが挙げられます。
寝つきが悪くなった、早朝に目が覚めるようになったなどの不調が見られるようになったときには、一度睡眠習慣を見直すようにするとよいでしょう。

一方で、睡眠障害はうつ病とは全く関係なく出現する疾患でもあるため、睡眠の乱れ=うつと決めつけるのは早計です。
睡眠薬や抗うつ薬を使わなくても睡眠の乱れを治し、日中のパフォーマンスを改善することも充分可能ですので、まずは専門家に相談してみるのも有効な選択肢と言えます。

うつと性格

一言にうつ病と言っても症状は全く異なることもある

かつてのうつ病になりやすい人のイメージとして、「几帳面で人に気をつかい、生真面目で頑張り屋」というような性格傾向の人がストレスを契機にうつ病にかかる、といったものがありました。
今日の診断基準ではそのようなうつ病はメランコリー型と区分され、うつ病にかかった場合には自責の念や自罰が増加すること、不眠や食欲不振などの身体症状が見られること、SSRIよりも三環系抗うつ薬の方が効果的であることなどが分かっています。

一方、そういった特徴を持たず、うつ病になっても自責感が強まらなかったり、過眠や食欲増加が見られたり、職場から離れたり休日になったりすると症状が消失したりするうつ病のことは非定型うつ病と区分されます。
非定型うつ病の人は典型的なメランコリー型と異なり、対人関係上の過敏さから周囲と摩擦を引き起こしたり、自責と他責を行き来するような不安定さを見せたりする傾向がありますが、SSRIやSNRIといった抗うつ薬に反応を示すことから、うつ病の亜型の一つと考えられています。

このような世間一般のイメージする典型的なうつ病と、それとは異なる性格傾向や症状を示す非定型うつ病があるために、他者から「うつにならなそう」と言われたり、診断後に「うつ病だ」と言っても信じてもらえなかったりするケースが後を絶ちません。
特に典型的なうつ病のイメージから派生して、そうでないうつ病の人には新型うつ病といった呼称も用いられ、それがセンセーショナルに取り上げられたりメディアによって拡散されたりしたことによって二次被害を恐れて専門機関に相談できないケースもあるようです。

メランコリー型うつ病と同じように、非定型うつ病になりやすい性格傾向や不適切養育の経験者が多いことが調査から分かってきています。
今後は性格や生育歴まで含めた診断基準を整理すること、そして「うつ病だからどの心療内科・精神科に行っても治療は同じ」と安易に考えず、診断に合致した専門機関を受診できるような社会システムを構築することが必要と考えられます。

うつの原因

うつ病の原因はいまだに特定されていません。

しかし、1980年にDSM-Ⅲという症状による診断基準が導入されて以降は研究が進み、うつ病発症の原因に関するいくつかの仮説が提唱されています。
いまだに医者の直感による診断と治療をおこなっている病院やクリニックもありますが、現在は「ほぼ間違いなく治せるうつ病」と「あまり治療成績の良くないうつ病」の人が同じ病院に通ってしまっているため、治った人は高評価、治っていない人は低評価を下しているのが実情なのだと思います。

当オフィスは前者の方を「ほぼ間違いなく治せる医療機関」に案内(紹介)することも役割の一つと考えていますので、治療が長期化している方はご相談いただきたいと思います。

ここでは、いくつかあるうつ病発症の原因を分かりやすく説明していきます。

モノアミン仮説(セロトニンなど)

1950年代にうつ気分を緩和する酵素が発見されたことから、抗うつ薬研究は飛躍的に進歩しました。
この発見から、うつ病にはモノアミン系の神経伝達物質(セロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミン)が関係していることが明らかになったため、「モノアミンの不足が脳内で起こるとうつ病が発症する」といった考え方をモノアミン仮説と呼びます。

モノアミン仮説に基づいて開発された有名な抗うつ薬が選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor:SSRI)です。
現在ではSSRIはうつ病の中でも不安感・攻撃性・希死念慮に特に効果的であることが実証されつつありますが、日本では「とりあえずSSRI」で治療開始しているところが多いのも事実です。

しかし、以前の抗うつ薬に比べて格段に減ったものの吐き気などの副作用が生じること、服薬し始めてから効果が出るまでに何日もかかることの説明がつかないことなどから、モノアミン不足がうつ病の原因とまでは言えないようです。

ストレスホルモン仮説(コルチゾール)

うつ病の発症にはストレッサーが関わっていることはほぼ明らかになっています。
ただ、同じストレッサーの負荷がかかっても発症する人としない人がいることから、「ストレス」と「ストレスに対する感受性」の両方が関係してうつ病していることもまた定説となっています。

ストレッサーの負荷がかかった脳は腎臓付近にある副腎に指示を出し、コルチゾールというストレスホルモンを放出させます。
コルチゾールは身体中の様々なところで作用して人体の適応能力を向上させるのですが、同時に脳の神経細胞に対しては細胞死を命じる働きもします。

最近の研究では、記憶を司る海馬の神経細胞の突起を萎縮させたり新たに神経細胞が作られるのを減らしたりすることも確認されています。
このことから、長期的にストレス状況下にさらされた人は脳がダメージを受けてうつになりやすくなること、そしてこのコルチゾールとコルチゾール抑制に関わる遺伝子がうつ病の原因であるという説が提唱されるようになりました。

複数の要因によって発症するという相互作用の考え方

ちなみに、この「ストレス」と「ストレスに対する感受性」の両方によって発症する、という相互作用の考え方が、西洋医学はとても苦手です。
西洋医学には「まず原因あり、その原因を取り除くことこそ治療なり」という発想が根底にあり、それによって今日の進歩を達成してきたというプライドがあるからです。
病院やクリニックでのうつ病治療が進歩しづらく、東洋医学やカウンセリングの方が治療成績や再発予防に強いのには、こういった背景もあるかもしれません。

神経可塑性説

ストレスが加わることで脳に起きる変化として、脳由来神経栄養因子(Brain-Derived Neurotrophic Factor:BDNF)が減少するというものがあります。
BDNFは神経細胞が新しく作られたり成長したりする際に必要となるたんぱく質のことであり、これが減少することでうつ症状、特に不安症状が起きやすくなると言われています。

うつ病の治療で用いられる抗うつ薬がBDNFの減少を食い止めたり、同じくうつ病の治療法である電気けいれん療法でもBDNF減少が抑制されたりすることが確認されているため、神経新生を促すBDNFの減少がうつ病の原因とも考えられています。
また、抗うつ薬を飲み始めた直後にはBDNFは増加しないことも確認されているため、「なぜ抗うつ薬を飲んでも数日経たないと効果が出ないのか」という疑問にもBDNFによって説明がつくようになります。

エピジェネティクス仮説

私たちは細胞の中に遺伝子が組み込まれていますが、その遺伝子は最初から全て発現しているわけではありません。
エピジェネティクスとは、epi=後から、genetics=遺伝子が働くといった意味であり、うつ病の発症もこの「遺伝子が後天的な環境によって発現するかどうか」によって決まると考えられています。

脳の神経新生を促進させるBDNFですが、BDNFに関わる遺伝子がメチル化という化学変化を起こすと、BDNF遺伝子の発現が抑えられてしまい、神経新生が起きにくくなることが近年分かってきました。
例えば、虐待を受けたマウスだとDNAメチル化が起きやすくなることから、養育環境によってうつになりやすい人となりにくい人がいることの説明として、DNAメチル化は一定の説得力を持つと考えられます。

うつの割合

毎年275万人がうつ病に罹患している

日本では年間2.2%の人がうつ病にかかっていると言われています※2
100人に2人と聞くと少ないと感じるかもしれませんが、日本人の人口から算出すると、毎年275万人がうつに罹患している計算になります。
京都府民の人口が256万人ですから、1年間に京都府民より多い人たちがうつ病にかかっているということになるのです。

また、一生のうち1回はうつ病にかかる割合は6.5%と言われており、うつ病にかかっている、もしくはかかったことがある日本人は813万人にも上るということになります。
うつ病を治すこと、そして予防することはもはや他人事ではないのです。

自殺率

日本では年間2万人以上が自殺している

2020年に自殺した人はおよそ2万人に上り※3、その半数の1万人は、うつ病を含む健康問題を苦に亡くなっています
他の身体疾患にかかった場合にはその闘病の苦しさを訴えたり書き残したりすることもできますが、うつ病の場合はその症状ゆえに苦しさを表現することができず、声を上げることもできないまま命を絶ってしまうことが多いと考えられます。

数の上では自殺者は減っているように見えますが、日本では自殺の定義がよく変更されるため、一概に減少しているとは言えないのが現状です※4
本当の意味で自殺者を減らすにはウツぬけした人が声を上げていくこと、そうするためにもまず治せるうつを治すことが、自殺大国である現代の日本には必要なのです。

男女差

男性より女性の方が1.6~2倍ほどうつ病にかかりやすいことが分かっています※2
神経伝達物質であるセロトニン(不安を緩和する働きがある)は女性の方が少ないことも分かっていますので、女性はよりうつ病のリスクが高いことを考慮し、予防に努める必要があると思われます。

一方、自殺者数は女性より男性の方が2倍ほど多い傾向があります3
男性の方がうつ病にかかりにくいのではなく、むしろ自殺を考えるまで思い詰めてしまう心性があると考えられるため、男性も悩んだら早めに相談することが大切だと言えるでしょう。

うつの治療法

うつ病治療の基本は休養とされています。
骨折や盲腸炎のときに入院するように、うつを治すためにはストレッサー(ストレスの元)から離れ、脳という臓器を極力使わないように環境調整することが肝心です。

しかし、食べる・寝る・排泄するといった生物としての基本行動をしているだけではうつ病は治らないのも事実です。
自然治癒力に任せるだけでは、骨折や盲腸炎が治らないのと同じです。

ここでは、代表的なうつの治療法を紹介していきます。

薬物療法

中等度以上のうつ病に対しては抗うつ薬による治療が効果的な標準治療であることが示されています。
抗うつ薬を使用する場合は少量から開始し、効果や副作用に気をつけつつ医師の指示に従って徐々に増量していきます。

効果が見られたときには必要充分量・充分期間服用することで、典型的なうつ病であれば半年~1年で回復すると言われています。
日本で第一選択される抗うつ薬は、SSRIやSNRIといったモノアミン系(セロトニン・ノルアドレナリン・ドーパミン作用型)抗うつ薬であり、以前までの抗うつ薬に比べると格段に副作用が弱い、もしくは少ないことが特徴です。

先発医薬品名一般名
(ジェネリック医薬品名として用いられる)
特徴・種類など
ルボックス・デプロメールフルボキサミン日本で最初に承認されたSSRI
強迫性障害に使用されることが多い
統合失調症に伴ううつ症状にも
パキシルパロキセチン効果が表れるのが早い
副作用発現の少ないCR錠もある
離脱症状が出やすく、やめづらい
ジェイゾロフトセルトラリン少量から徐々に開始しやすい
そのため、副作用が出にくくできる
パニック障害やPTSDにも使用される
レクサプロエスシタロプラム日本で最も最近承認されたSSRI
他SSRIより副作用の出る確率が低い
主な副作用は飲み始めの吐き気
日本で承認を受けているセロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

カウンセリング(精神療法・心理療法)

うつ病は気分の落ち込みや喜びの減少といった感情面の変化が起きるだけでなく、物事を悪い方にとらえやすくなったり極端な考えが浮かびやすくなったりするような思考面にも変化が起きることが知られています。
休養や薬物療法だけおこなっても再発率が高いことがうつ病の特徴の一つであり、その要因としてこの思考面への治療がおこなわれていないことが指摘されています。

特に軽度のうつ病に対しては、病気に対する知識や症状の傾向を知るといった心理教育が回復を助けることが確認されています。
また、支持的な傾聴や声かけといった精神療法や、認知行動療法などの心理療法も自殺予防や思考(認知:物事のとらえ方)の改善、ひいては再発防止に効果的であると言われています。

高照度光療法

1日1~2時間程度、高照度の光(2500ルクス以上)を浴びることでうつ症状が改善することが認められています。
光療法に効果がある光の強さは晴れた日のオフィスの窓際程度かそれ以上とされていますので、晴れた日には外出し、休憩をはさみながら散歩などすることを習慣化できるとよいでしょう。

うつ病患者のうち85%の人には睡眠障害(不眠や早朝覚醒)が見られることから、睡眠の質改善のためにも光療法を併用することは有効と考えられます。
睡眠の質を改善する場合には高照度である必要はなく、起床後にカーテンを開けたときくらいの明るさ(500~600ルクス)の日光浴で睡眠のリズムが作れるとされています。

電気けいれん療法(ECT:Electro Convulsive Therapy)

全身麻酔と筋弛緩薬を使用し、頭部に電気刺激を与えることでうつ症状を改善する方法です。
実施する場合には施設に入院し、3週間~5週間かけて週3回行われます。

重度のうつ病に対しては80%前後の効果があることが確認されている一方、一部記憶がなくなったり覚醒レベルが低下したり(ぼんやりしたり)するといった副作用も見られます。

経頭蓋磁気刺激療法(TMS:Transcranial Magnetic Stimulation)

頭部にコイルを当て、磁気による刺激を脳に与えることによって神経活動を活性化させる方法です。
磁気による刺激のため脳への副作用はほとんどなく、頭の表面に痛みがある程度です。

持病にてんかんがある場合には発作を引き起こす可能性があるために実施できません。
また、2019年に保険適用された方法には施設基準や「2種類以上の抗うつ薬による治療が効かなかった場合」といった制限が厳しく設けられているため、薬物療法などに比べると手軽には受けられないのが現状です。

迷走神経刺激療法(VNS:Vegas Nerve Stimulation)

電気刺激発生装置を使い、頸部(首)の迷走神経に電気刺激を与えることでうつ症状や自律神経失調症状を改善する方法です。
2005年にアメリカではFDAの承認を受けましたが、日本ではまだ保険適用されていない治療法です。

以前は装置を埋め込むために手術を必要としましたが、最近では手術を行わなくても首に押し当てるだけで電気刺激を与えられるものも開発されています。
ECTやTMSと異なり装置を持ち運ぶことができるため、慢性化したうつ病患者の症状緩和に期待されています。

まとめ

うつ病と診断される人は年々増加しており、しかもその全てが医療機関を受診するわけではないため、適切な治療を受けられていない人もまだ多くいると推定されます。
うつ病の生物学的原因はまだ判明していませんが、基礎研究や実証研究からいくつかの仮説が示されており、適切な診断と治療が行われるようになることが期待されています。

うつ病の治療は、これまでは「休養」という基本行動をとるという消極的な治療が主流でしたが、昨今では磁気刺激治療(TMS)や迷走神経刺激治療(VNS)といった積極的な治療も開発され、進化しています。
副作用の発現を抑えることに成功している抗うつ薬による治療、再発予防に効果的とされるカウンセリングや心理療法を組み合わせることで治せるうつ病を治し、その人たちが自分たちの体験を公表することでより重度の症状に苦しむ人たちの希望になれれば、日本の自殺者数を減らすことにも繋がっていくことでしょう。

※1 患者調査, 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html

※2 地域におけるうつ対策検討会報告書, 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/01/s0126-5b2.html

※3 令和2年中における自殺の状況, 警察庁, 2021 https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R03/R02_jisatuno_joukyou.pdf

※4 自殺者は「遺書の遺されている者」と定義されたことで、見かけ上自殺者数は減りましたが、代わりに変死者数は増加しています。 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/lifex/198569

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