九段下駅から徒歩1分
月〜土実施

ご予約・ご変更はこちら

動機づけ面接法

動機づけ面接法とは?

動機づけ面接(motivation interview:MI)相談者の中から自分自身を変える力を呼び出し、促進する面接技法(スキル)の一つです。
相談者の中には変わりたい思いと変わりたくない思いの葛藤があり、それを明らかにしながら解消していく方向に話題を進めていくところが特徴的です。

どんな人に動機づけ面接法はオススメか

相談者のモチベーション(やる気)を高め、行動変容させたり決めたことを遵守したりしたいけれどできていない人に効果的です。
臨床研究・調査では、アルコール依存、薬物依存、ギャンブル、飲酒、喫煙、ダイエット、高血圧などの改善に有効性が示されています。

症状セルフチェックリスト

  • 意欲が低下していてやる気が起きない
  • やらなければならない気持ちがあるのに、行動できない
  • 変わりたい気持ちと変わらない現状との間で葛藤し、悩んでいる
  • ただ指示されたり、命令口調で言われたりするとかえってモチベーションが下がる方だ
  • 意思が弱いことを自覚しており、誰かと一緒なら物事を達成できることが多い

動機づけ面接法の効果

動機づけ面接を使用せずに相談者の行動を変えようとすると、相談者と口論になったり(対決的)、上から命令するように言ったり(指示的)、行動することを強いたり(強制的)する場合が多くありました。
動機づけ面接はあくまで相談者の中にある「変わりたい」「変わらなきゃ」という気持ちを支援していくため、関係が険悪になったり依存的になったりすることなく、行動変容していくことができます。

クライエント中心療法

動機づけ面接法はクライエント中心療法(来談者中心療法)をベースにしてまとめられた技法のため、基本的な治療哲学は共通しています。
しかし、日本のクライエント中心療法は相談者に共感を示すこと、肯定的に対応すること、指示しないことなどが過度に強調されることが多く、結果、相談者のあるがままの状態が維持されてしまい、行動変容も葛藤の解消も達成しないケースが多く見られます。

動機づけ面接法は、相談者とカウンセラーが協働して取り組む点や相談者の自主性を重視する点は尊重しつつ、相談者の中に眠っている力や相談者を取り巻く人たちの力を引き出して最大限活用するところに特徴があります。
また、動機づけ面接は数セッションで変化を引き出せるため、何十セッションと回数を重ねることで癒されていくクライエント中心療法よりもリーズナブルで相談者の時間的経済的負担も軽く済ませることができます。

動機づけ面接法のやり方

動機づけ面接は相談者の葛藤を明らかにして変化する方に働きかけるため、様々な話法・話術・話運びをツール(道具)のように適宜用います。
ここでは、そのうちのいくつかを紹介します。

変化トーク

「変わりたいけれど変わりたくない」といった葛藤を抱えている人は、ずっと変わりたくないという立場から発言するわけではありません。
多くの場合、「やりたくないんだけどやらなきゃなんだよね」といったように、変わりたい・変わるべきという気持ちの方も一緒に打ち明けるものです。

動機づけ面接では、この変わりたい・変わるべきという発言を「変化トーク」、変わりたくない・変われないという発言を「抵抗トーク」と区別し、変化トークの方を復唱したり話題の中心にしたりして葛藤を明確化します。
相談者は変化したい気持ちを否認していることがあるため、その気持ちを持っていることを受容し、相談者本人も受け入れられるように話を進めていきます。

このとき、変化トークを揚げ足取りのように取り上げたり、オーバーリアクションで反応したりしてはいけません。
葛藤を抱いている人は、一方の立場ばかり支持するともう一方の立場(抵抗トーク)に肩入れをしたくなり、結果、現状維持を選択してしまいやすくなるからです。
あくまで変化トークをとっかかりにし、葛藤や矛盾を自覚する程度に明確化することが大切です。

利益と経費の対照表

変わりたいけれど変われないときには、変化と現状維持の両方にメリットとデメリットが存在しています。
相談者の考えているメリットとデメリットを把握し、その葛藤や欲求不満を少しでも理解するために、メリット・デメリットシートが役立ちます。

利益と経費の対照表の例

変化を決断するときには、変化のメリットだけではなく現状維持のデメリットを確認することが重要です。
復職か転職か(現状維持か変化か)の場合も、まだ見ぬ転職先への希望より現職への失望の方が変化を促進することはよくあります。

メリット・デメリットシートを使うときの1つ目の注意は、いずれの欄が大量に埋められているからといって、それと変化とは関係がないということです。
人は理性的な損得だけで行動するわけではありませんし、それが項目の数や種類で表現されているとも限らないからです。

もう1つの注意は、メリット・デメリットシートの結果を絶対的なものだと過信しないことです。
損得は時間と共に移ろうものでもあるため、あくまでも今の相談者の考えを理解するためのツールと割り切って使うことが肝要です。

このようなシートは認知行動療法や問題解決療法でも用いられますし、ビジネスの世界ではプロコン分析として課題を概観するときにも使われます。
動機づけ面接がこれらの使用法と異なるのは、葛藤を理解した上でどう変化に結びつけるかという、その後の話運びにあります。

振り返りの傾聴

動機づけ面接を行う中で特徴的なのは、他のカウンセリングよりも治療抵抗が生じやすい点です。
極力抵抗が起きにくいように話すとはいえ、変化や行動変容をしたくない気持ちも人のいち側面としてあるわけですから、当然のように抵抗の生じる場面は訪れます。

傾聴と共感することがカウンセリングだと妄信する他のカウンセリングは、抵抗を避けるが故に同調や擁護を繰り返し、堂々巡りのセッションに時間を費やします。
動機づけ面接はそれらとは異なり、抵抗が生じたときにどのように応答したら良いか、どのような対応をすれば望ましい方向に進められるかに特化した面接法でもあります。

一つひとつの話法はここでは紹介できませんが、相談者と喧嘩になって不快な思いをさせないこと、おうむ返しのような言い換えを繰り返さないこと、それでも相談者の本当に望んだ方向に変化を引き起こせることが、動機づけ面接の特長と言えるでしょう。

動機づけ面接法と理論

心理療法の統合的モデルの一つに、多理論統合モデル(transtheoretical model)というものがあります。
このモデルの中に、行動変容までの過程を示した「変化の5段階」というものがあり、動機づけ面接はこの5段階に沿って変化を引き起こしていくのに最適なカウンセリング様式であると言われています。

前熟考期

行動の変化について考えていない時期。
変化の準備ができていないので説教されることを好まないし、実行手段も与えられたくない。

熟考期

変化の良し悪しを考慮して真剣な評価をする時期。
変化を起こすよう促す伝統的な導入法には、準備が不足しているので抵抗する。

準備期

責任を持って変化する決意をし、実行の計画を立てる時期。
相談者が受け入れ可能で、実行しやすく、効果的な変化の計画に発展させるような支援が必要。

実行期

具体的な変化のために行動を起こす時期。
「正しい行動を取っている」と相談者は認められ、肯定されることを求めている。

維持期

変化を維持し長期的に継続する時期。
変化の維持を責任を持って継続する強い決意と、しっかりとした態度がなければ、再燃は必ず起きる。

動機づけ面接は、前期の2段階を通り過ぎようとしている人にはその段階特有の感情的反応に取り組むことに特に適しています
一方、後期の3段階では、相談者のコーチ的役割――実現可能な変化の計画について熟考し、変化の障害物を予想し、援助を提供する可能性がある人や機関を見分けるように直接助言し、指示を与える役割――を共感的に進める動機づけ面接法に柔軟に変化します。

動機づけ面接の作用

モチベーションに関わる脳部位は、大脳辺縁系にある側坐核という部分です。
側坐核はいわゆる報酬系を司っており、おいしそうな物や価値ある物を目にするとドーパミンを産生し、手に入れるための行動を続けさせたり、より多くの快感を得られるように行動の精度を高めたりする働きがあります。

動機づけ面接法は側坐核に働きかけ、行動を始めたりその行動を継続したりすることを助けます。
とはいっても、カネやモノでモチベーションを高めるわけではありません。

その人が何を大切に思い、何のために生きたいと願っているのかを対話の中から探り出します
全ての人が自分の価値観についてはっきり自覚しているわけではありませんので、それに気づくよう対話を進めていくところが「カウンセリングは自分の中の答えに気づく過程である」と言われる所以です。

ひとたび側坐核が刺激され、ドーパミンによって意欲が出るようになれば、基本的には相談者一人で目的に向かって行動することが可能です。
カウンセリングは補助的な関わりとなり、問題が生じたときには一緒に解決を目指したり、日常生活に戻ったことで忘れてしまった価値観を再度確認したりすることで、モチベーションを維持できるよう一緒に取り組みます。

現状の自分を変えたいのなら動機づけ面接法

動機づけ面接法は、クライエント中心療法から派生した面接技法です。
相談者の中にある葛藤を明らかにし、変わりたい気持ちや思いをエンパワーメント(助力し支持)することで物事に着手できるよう弾みをつけます。

変わりたい気持ちの兆候を見つける変化トーク、現状維持の不利益と変化の利益に気づくメリット・デメリットシート、自分の口から発した言葉を改めて確認する振り返りの傾聴など、数々の話法を用いて相談者の前向きな変化を促進します。
脳科学的には、対話を通して相談者にとって何が価値ある行動か、どうなることが相談者にとって本当にしたいことかを明らかにし、報酬系を司る脳の側坐核に働きかけます。

また、前提を飛ばして行動選択を促すエリクソニアン・ダブルバインドといった心理術を応用しながら、行動に移すためのモチベーションを高めていきます。
物事に取り組みたいけれど取り組めない方、うつは治ってきたけれど今ひとつ意欲が戻ってこない方などは、一度当オフィスにご相談ください。

タイトルとURLをコピーしました