ゲームは気晴らしにもなり、また通常体験できないような出来事やエピソードを体験させてもくれます。
そんなテレビゲームやソーシャルゲームが、侵入思考を減らしたり、影響を低下させたりしてくれる可能性が示唆されています。
つらい記憶を不意に追体験させてくるような侵入思考とテレビゲームの関連について調べた研究をご紹介します。
侵入思考とは? 頭の中に割り込んでくるような異質な考えやイメージ
侵入思考(intrusive thought)とは、頭の中に突然現れる考えやイメージです。
内容はしばしば奇妙なものであったり、不快なものであったりします。
侵入思考自体は病的なものではなく、ほとんど全ての人に時たま起こります。
侵入思考が起きる代表的な精神疾患は、強迫性障害(強迫神経症)です。
強迫観念もしくは優勢観念とも呼ばれるそれらは、次のようなものになります。
PTSDでも侵入思考が起こりますが、その内容は実際に自分の身に起こったストレスフルな出来事に関するものである点において、強迫性障害のそれとは異なります。
フラッシュバックとは?
侵入思考のうち、急性ストレス反応(ASR)やトラウマ後ストレス障害(PTSD)の症状として現れたものをフラッシュバックといいます。
自身の身に起こったトラウマ体験の記憶から、暴力的・冒涜的・性的なものが不意に瞬間的に想起されます。フラッシュバックの多くは回避を目的としており、再び同じ目に遭ったり、困難な状況に陥ったりするのを避けるために役立ちます。
ただし、そういった役目の何倍も多くの苦痛や機会損失がもたらされます。
簡単な認知タスクはトラウマ記憶の侵入思考を減らす
スウェーデンの研究では、侵入思考に対して簡単なタスクをこなすことが、トラウマ的な出来事の影響を減少させると報告されています※1。
ここでいう簡単なタスクとは、テトリスのようなコンピュータゲームのことです。
研究は、コロナ禍においてトラウマ的な体験をした病院スタッフを対象に行われました。
10分ほどテトリスを行うよう指示されたグループは、そうでなかったグループよりトラウマ記憶の侵入思考を報告した回数が少なかったそうです。
テトリスに限らず、頭の中にブロックを思い浮かべ(心像)、それをイメージの中で動かしたり回転させたりすることが脳への適度な負荷になり、トラウマ記憶からの影響を低下させていると考えられます。また、侵入思考を減らすものとしてはクイズゲームでも有効でした※2。
こういった簡単なタスクがトラウマ記憶の侵入を軽減し、記憶のポジティブな再統合に貢献することが期待されています。
まとめ
PTSDのような重度の症状に苛まれる確率は少ないですが、トラウマティックストレスを感じる出来事に巻き込まれたり、その出来事をフラッシュバックしたりする可能性は誰にでもあります。
そんなとき、精神的苦痛を感じたり、現実のパフォーマンスが低下したりすることを望む人は少ないでしょう。
普段から簡単で没頭できるタスクを発見しておくこと、それを気晴らしや気分転換として活用しておくことは、皆さんの生活の質を高めることに役立つかもしれません。
また、いま現在侵入思考やフラッシュバックにお悩みの方は、ぜひ一度当オフィスにご相談ください。
※1 病院スタッフにおけるCOVID-19中の簡単な認知介入によるトラウマ後の侵入的記憶の軽減 https://clinicaltrials.gov/study/NCT04460014
※2 トラウマとなった映画から3日後に記憶を呼び覚ました後、視空間コンピュータゲームをプレイすると、トラウマ記憶の侵入回数が減少する https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31036259/
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