
集団やグループに受け入れられ、すんなり仲間入りできる人もいれば、そうでない人もいます。
どこにも仲間に入れない人は疎外感を感じ、孤独を強く感じることになるでしょう。
ナルシシストはそういったストレスを感じやすく、そういった場面にも遭遇しやすい可能性があることが最近の研究から指摘されています。
ナルシシズムの強い人とはどういう人なのか、強いナルシシズムが集団にどのような影響を及ぼすのか、臨床心理士が解説します。
自己愛性パーソナリティ障害と自己愛性パーソナリティ
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自己愛性パーソナリティ障害(Narcissistic Personality Disorder:NPD)とは、他からの賞賛を過度に求める人格障害の一つです。
「自分は賞賛を受け得る存在である」という前提に立ち、周囲にもそう接するよう求めます。
自らを特別な存在と信じ、自分中心に物事が決まったり、自分の都合の良いように周りが動くのが当然と思ったりします。
権利意識ばかりが高く、自分の権利が蔑ろにされそうになったり、無視されそうになったりすると敏感に察知し、強く反発します。
生活にさしたる支障がなく、人格障害にまでは至らないものは、自己愛性パーソナリティと呼ばれます。
自己愛性パーソナリティは、注目を集める役割や言動をしたがったり、指示命令を下す立場に立ちたがったりと、周囲に必要とされる場合もあります。
利己的なため周囲から嫌われることもありますが、これまでにない独特で斬新な創造物を産み出せることもあります。
自己愛性パーソナリティには、誇大ナルシシストと脆弱ナルシシストの2つの型があります。
誇大ナルシシストと脆弱ナルシシスト
誇大ナルシシストは、自己主張が強く、自己アピールに熱心な自己愛性パーソナリティのいち類型です。
外向的でエネルギッシュですが、人との関わりは支配的で威圧的です。
「自分は偉い」「自分は重要人物だ」といった意識が強く(過剰な自己重要感)、自信やプライドが高く、軽視や無視に強い拒絶反応を示します。
一方、脆弱ナルシシストは、繊細さや過敏さを特徴とし、見るからに防衛的で思い悩みやすい自己愛性パーソナリティの類型です。
特に批判や否定に弱く過敏で、表情や言葉を内によく抑え込んでいます。
それでいて、人からの肯定や称賛は常に求めており、いつでも安心感を得たいと思っています。
誇大ナルシシストと脆弱ナルシシストはどちらも自己愛性(narcissism)の表れ方の一つですが、その傾向は進路や職業選択にも表れます※1。
誇大ナルシシストの学生は、理系に進路選択し、成人後は商業や経営などのビジネス分野での成功を目指すことが多いです。
一方の脆弱ナルシシストの学生は、文系に進み、社会学方面や応用分野でのキャリア形成を目指す傾向にあるようです。
誇大ナルシシストは自撮り投稿が多い
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誇大ナルシシストは他者を軽視し自己を重視しすぎるため、自己主張や自己アピールも過剰になりがちです。
例えば、誇大ナルシシズムと自撮り投稿の件数は相関するといわれています※2。
自己顕示欲の高さから自分の長所を強調し、承認欲求を満たそうとする誇大ナルシシストには、周囲もうんざりしてしまうことでしょう。
反面、誇大ナルシシズムを持つ人はそのおかげでうつ症状を軽減させ、自殺に対する抑止になり得るという報告もあります。
脆弱ナルシシストはうつ病になりやすい
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一方、脆弱ナルシシストはうつ病になりやすく、自殺リスクが高いといわれています※3。
脆弱ナルシシストは自分中心に物事を考えたり利己的だったりする反面、周囲からの指摘や批判を過敏に捉え、そこから妄想にも似た想像を一気に膨らませることから、強い精神的苦痛を感じやすいようです。
そうした苦痛が続くと抑うつ状態になったり、希死念慮が生じたりするところまで達してしまうものと考えられます。
ナルシシストと疎外
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では、誇大ナルシシストは精神的苦痛と無関係かというと、そうでもありません。
誇大ナルシシストと関連が深いのが、孤独感です。
誇大ナルシシストは孤独感を感じやすく、実際に孤独にも陥りやすいことが指摘されています※4。
誇大ナルシシストのうち、他と競いたがったり敵対心を抱きやすかったりする人は、摩擦への懸念からか仲間グループに入れてもらえず、排除されてしまいやすいようです。
また、排除がそこまであからさまでなかった場合にも、誇大ナルシシストには強い精神的苦痛になる可能性があります。
誇大ナルシシストは、手がかりが微妙だったり解釈の余地のありそうだったりする場合でも、それらを過度に警戒する傾向が強いのです。
例えば、LINEのようなテキストメッセージがなかなか既読にならなかったり、返事が遅延していたりするような場合、それを排除や拒絶と捉えやすい、ということです。
まとめ
ナルシシストは脆い内面を自分の裡に持ち、それを自己顕示欲にすり替えて誇大に見せたり、過敏さをオーバーに示すことで内面を防御したりしています。
人間社会が人との支え合いで成立している以上、自分のメンタルをどんなに健全に保っていたとしても、こうしたナルシシストとの関わりをゼロにするということは難しいでしょう。
ナルシシストをチームやグループから排除したい気持ちに駆られることもあるかもしれませんが、そうした苦痛を人一倍感じやすいナルシシストは、排除の気配がしただけで抵抗してきたり、過剰防衛で周囲に攻撃的になったりしてくるかもしれません。
ナルシシストへの対応に困っていたり、関わりの中で苦しんだりしている方は、ぜひ一度当オフィスにご相談ください。
※1 ナルシシズムに基づく職業選択は存在するのか?自己愛特性の職業的関心への影響に関する調査 https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0191886922005761
※2 自撮り大好き!3つの地域における自撮り投稿を理解するための顕在的・潜在的ナルシシズムの調査 https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S074756321930370X?via%3Dihub
※3 ナルシシズムの暗部:危険群における病理的特性、抑うつ症状、希死念慮の検討 https://link.springer.com/article/10.1007/s41811-023-00185-x
※4 ナルシシストの排斥体験 https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fpspp0000547
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