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幼少期にストレス体験を経験すると成人後の認知機能も低下しやすくなる

小さいころ過酷な家庭環境に置かれていると、後年その影響が心身に出てくることが知られています。
その影響は思春期や青年期に留まらず、成人後や中年以降にも見られることが判明してきました。

小児期逆境体験の後遺症について、臨床心理士が解説します。

小児期逆境体験(ACEs)とは

脳は幼少期から青年期にかけて最も発達し、その時期に経験したストレスは成長してからの心身にも悪影響を及ぼすことがあります。
幼い頃に経験したストレス体験には身体的心理的虐待から家庭内暴力の目撃などが含まれ、それらは小児期逆境体験(Adverse Childhood Experiences:ACEs)と呼ばれます。

  1. 心理的虐待:罵る、非難する、嫌がらせを言われる
  2. 身体的虐待:押す、掴む、突き飛ばす、ひっぱたくなどをされる
  3. 性的虐待:性的な仕方で触れる、触る
  4. 家族の薬物中毒:アルコール/薬物中毒の人がいる
  5. 家族の精神疾患:うつ、または精神疾患の人がいる
  6. 母や義母の暴力被害:母親か義母が、押す、掴む、ひっぱたく、物を投げつけるなどをされる
  7. 家庭内での犯罪行動:刑務所に行った人がいる
  8. ネグレクト(育児放棄):食べ物が充分にない、汚れた服を着ている
  9. 支持的養育者の不在:誰も愛してくれない、大切と考えてくれないと感じる
  10. 両親の離婚や両親からの離別:両親が離婚したり自分を捨てたりする

ACEスコアが高い人ほど、生活習慣病や心疾患など健康上のリスクが高いことが報告されています。

過度のアルコール摂取

幼少期のストレス体験は成人後の脳にも影響を与え、うまく頭が働かなくなったり、抑えが利きづらくなったりするといいます。
その一つが依存症への脆弱性リスクを高め、依存症になりやすくさせるというものです。

ある研究では、幼少期にストレス体験を多く経験したことと飲酒量には関連があるのかどうかが調査されました※1
結果、幼少期のストレス体験と飲酒量には相関があり、ACEスコアが高いほど飲酒量は多くなることが確認されました。

虐待やネグレクトなどが脳の抑制機能発達を遅らせ、アルコールで発散させたくなるようなストレス体験を増やしたり、飲酒量に歯止めを利かなくさせたりするものと考えられます。

無力感・効力感のなさ

幼少期のストレス体験は、成人後の気分や感情もネガティブなものに変質させる可能性も指摘されています※2
幼少期に虐待やネグレクト、深刻な家庭不和を経験した人は、ネガティブなものの捉え方をするようになり、無力感を感じやすくなります

例えば、駅構内でぶつかられるなどしたとき、「これから先の人生でもこういったことが降りかかってくるのだろう」と一般化し、絶望感を感じやすくなるといった場合です。
また、そういったネガティブな出来事を「自分はコントロールできない」とし、無力感を生じさせることもしやすくなります。

脳画像研究では、こうした傾向は身体的虐待よりもむしろ情緒的ネグレクト(泣いたり怒ったりといった感情表現を無視されること)を経験した人に、より関連が強いといわれます。

認知機能の低下

中年期以降、認知機能は徐々に衰えていくことは一般によく知られていますが、幼少期のストレス体験はその機能低下も大きくする可能性が指摘されています。

アメリカで行われた調査では、幼少期にストレス体験を経験したことと認知機能の低下の間に関連があることが確認されました※3
認知機能のうち、暗記や想起といった記憶力に関するものはあまり関連がなく、問題解決やマルチタスクといった実行機能系の方がより低下していることが確認されました。

認知機能は生活の質(Quality of Life:QOL)にも関わっており、意思決定が遅かったりできなかったりすればそれだけ楽しみや喜びに浸る時間が減ってしまうこともあるでしょう。
問題を解決したり先を推測したりすることを人やAIに頼りすぎてしまっては「自分は一人でも何とかやっていける」と思えなくなっていき、自立しているという感覚も薄れていってしまうかもしれません。

幼少期のストレス体験は、成人後にもこういった体験を増やしてしまうリスクが高いと考えられます。

幼少期のストレス体験はどうしたらいい? 幼少期のストレス体験の原因と対処

小さいころ常にストレスに晒され、そのストレスが時間経過と共に蓄積したことで心身の調整機能が正常に働かなくなったことが、こうした脳機能低下の一因のようです。

心身を健康に保つ行動がこういった調整機能を正常化させ、悪影響を最小限に留めることができ得るとされています。
健康的な行動とは、健康的な食事や運動、リラクゼーション法や社会参加などです。

脳や身体に残った幼少期のストレスを緩和するには、トラウマ治療やソマティック療法なども有効です。
幼い頃にトラウマ体験を経験した方、両親のDVを目撃したり両親どちらかと離ればなれにならなければならなかったりした方は、ぜひ一度当オフィスにご相談ください。

※1 大学生における飲酒量と幼少期の逆境体験との関連性 https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2022.1004651/full

※2 気分障害における小児期逆境体験と否定的認知様式の関連を自発的神経活動が媒介する:多変量解析アプローチ https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0925492725000939?via%3Dihub

※3 小児期逆境体験と成人期を通じた認知機能との関係におけるアロスタティック負荷の媒介的役割 https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0306453022001020?via%3Dihub

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