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自己関連づけ・個人化 -認知の歪みと対策03-

「何でも自分のせいな気がしてつらい」
「自分が悪くないときでも悪いと言わないといけない気がする」
「自分のせいにならないよう気を配り続けるのに疲れた」
こんな衝動と切迫感でつらい人は、自己関連づけをしてしまっているかもしれません。

自己関連づけをするようになったきっかけには、養育者からの対応や幼少期のトラウマが関係していることも。
自己関連づけとは何か、どうして自己関連づけするのか、治していくにはどうしたらいいかについて、説明します。

認知の歪みとは

認知とは、物事の見方や捉え方のことであり、認知の歪み(Cognitive distortion)とは、非論理的で非合理なものの見方のパターンのことです。
認知の歪みには、①ネガティブ感情の原因と、②ネガティブ感情に拍車をかけるものの2種類があり、自己関連づけは①に該当します。

認知の偏り
二分化思考(全か無か)私は何をしてもうまくいかない・私は完全な落伍者だ
非現実的な期待一番でなければ意味がない・間違いは許されない
破局的思考失敗を犯したので、私は貧しく孤独になるだろう
過度の一般化面接に失敗したから、絶対に職には就けないだろう
心のフィルター試験科目のうち、一つの点数が低かった。私は何一つ上手にやれない
マイナス化思考これは大した成果ではない。みんなもっとうまくやっている
過大視と縮小視あの取引ではなんてへまをしたのだろう。上司の望んでいた条件を提示されたのに
結論への飛躍あの人は友達面をしながら裏では笑っている。私には分かる
感情的な推論自分に魅力がないと感じているから、事実そうに違いない
▶物事を個人的に受け取る
(自己関連づけ)
私の話が終わる前に二人退出していった。私の話がつまらなかったに違いない
自責または自己批判仕事についていけない。私が愚かでなまけ者だからに違いない
自己罵倒私は本当に愚かだ
認知の歪み一覧

自己関連づけ・個人化とは

自己関連づけ(personalization)とは、問題が生じたとき、特に根拠がなくても「自分の責任だ」「自分のせいだ」と考えてしまう、認知の歪みです。
物事を個人的に受け取る誤り、個人化とも呼ばれます。

自己関連づけの例

自分の子どもが注意されたり、事故に遭ったりしたとき、「自分の注意が足りなかったせいだ。親失格だ」と考え、落ち込んだり傷ついたりするのは、自己関連づけによるものです。
自分の手から離れたものは自分に10割の責任があるわけではありませんし、事故に至っては「第三者の要因」が加わります。
現実的な見方から離れ、客観性に乏しい捉え方をするのが、自己関連づけです。

同様に、仕事で提出した成果物を「なんだこれは!間違いだらけじゃないか!」と言われて自分が傷ついたり、手塩にかけて育てた後輩のミスを聞いて「俺がちゃんと教えなかったせいで……」と落ち込んだりするのも、自己関連づけの例です。
多少の関与は職場の誰にでもありますから、悪いことを見聞きするたびに自己関連づけしていては、心因ストレス性の疾患にかかりやすくなってしまいます。

自己関連づけはなぜ起こる? 自己関連づけの原因

幼児期には、まだ社会や世界のことについて知らないものが多いため、自己関連づけを用いて不明な点を補おうとすることがあります。
例えば、幼稚園で喧嘩をし、帰宅したら祖母が亡くなっていたら、「私が良い子にしていなかったから、おばあちゃんは亡くなったんだ」と結びつけて考えるような場合です。
幼少期における自己関連づけを、呪術的思考といいます。

成長過程でも、自己関連づけが強まるタイミングがあります。
学童期や思春期に学校で喧嘩したり、教師から叱られたりしたとき、「なぜそんなことをしたんだ」との問いに「相手が……」や「先生が……」と応えると、「人のせいにするんじゃない!」と更に叱責されることがあります。
これがトラウマ記憶となったり、何度も繰り返されたりすれば、人は「とりあえずまずは自分のせいにしておくべきなのだろう」と学習します。

夫婦仲や家族仲の悪い家庭で暮らすと、「自分が楽しい出来事の話をしなかったり、面白おかしく話せなかったりしたから、家族の雰囲気が悪いんだ」と誤解することもあります。
成長するに従い、「子どものときの認識は早合点だった。現実には自分のせいのことも他人のせいのことも、運のせいのこともある」と認識を補正できればいいのですが、「とりあえず自分のせい」で生活上何も困ることがないと、子どもの頃の認識が保持されたままになります。

自己関連づけにはメリットもあります。
自己関連づけ効果といって、自分と関係する物事の方が、よく記憶されることが知られています。

自分の名前の漢字はすぐに覚えられたり、自分と同じ誕生日の偉人や有名人は覚えやすかったりします。
「自分のせいだ」と考える自己関連づけも、「ネガティブなことも忘れず、今後同じ失敗をしないようにしよう」という心理が働き、関連づけている可能性があります。

自己関連づけとうつ

うつ状態の人はそうでない人に比べ、うつに関連する語を「自分のことだ」と関連づけやすいと報告されています※1
ネガティブ感情を有している人は、ネガティブな自分の過去を思い出しやすく、更にネガティブ感情を増大させたり、連鎖的に想起したりしているものと考えられます。

自己関連づけの治し方・対処法

自己関連づけをしやすい対象として、自分が関与したものに特に関連づけしやすい傾向があります。
まず、自分が関与したものへの関連づけをやめる考え方をご紹介します。

自分の領分と他人の領分を区別する

私たちが作業するとき、必ず作業開始(取りかかり)と作業終了(完了)があります。
指示された仕事をするときもそうですし、掃除や炊事をするときもそれは変わりません。
取りかかりと完了の順番は決して入れ替わりません。

完了後、自分以外の人からの評価が入ります。
好ましいと評価されることもあれば、今ひとつと評価されることもあるでしょう。
完了と評価の順もまた、入れ替わることはありません。
ポイントは、完了させるまでは自己の領分、評価からは他者の領分という点です。

自己関連づけしやすい人は、「完了し、手を離れるまでは自分の領分」「完了後、手を離れてからの評価は自分以外の領分」という区別がついていないことが多いです。
自分の提出した成果物や企画が批判されると、あたかも自分自身が批判されたように感じるのが、このパターンです。

そこで、普段から「完了して手を離れるまでは自分の領分」「手を離れてからは自分以外の領分」といった区別を意識的につけるようにしましょう。
ネガティブな評価を受けたり、ネガティブな出来事が起こったりしてから区別するのではなく、ポジティブな評価のときにも「手を離れてからは自分ごとではない」としておくことで、自然と自己関連づけを修正していくことができます。

影響と操作を区別する

認知の歪みを提唱した一人でもあるデイビッド・D・バーンズは、自己関連づけを「影響」と「操作」の未分化と説明しました※2

私たちは普段から、何かの影響を受け、また何かに影響しながら生活しています。
オフィスで業務していてもきぬれの音から人の気配を感じますし、運転していても歩道に歩行者がいるときだと微妙に体も脳も緊張するでしょう。
吐く息すら水分を含み、いずれ雲となり雨を降らせるように、存在している以上、人は世界に影響しています。

一方、結果を操作しようという意図をもって物事を行うこともあります。
「操作」には責任を感じるところがあるかもしれませんが、「影響」に責任を感じていては際限きりがありません。
自分の関与していないものにまで自己関連づけをしてしまう場合は、「影響」と「操作」を区別してみると良いかもしれません。

まとめ

自己関連づけはおよそ関係のなさそうなことでも自分の関与を疑い、不安や落ち込みを引き起こす認知の歪みです。
自分の領分と他人の領分を区別する、「何にでも影響はするものだ」と考え、必要以上に責任を感じない等の区別を普段から行うことで、問題が起こったときにも関連づけないよう備えておくことが大切でしょう。

認知の歪みの中には、ネガティブ感情の原因となるものと、ネガティブ感情に拍車をかけるものの2種類が存在します。
ネガティブ感情が起こったときの認知は起こったときに修正する他ありませんが、そもそもネガティブ感情が起こる前の認知であれば、普段の生活の中でトレーニングすることが有効です。

成長するにつれて、自己関連づけをする傾向は弱まっていきます。
ただ、強い衝撃によって出来事がトラウマ化したり、家庭や学校で日々繰り返し自己関連づけを強いられていたりする場合もあります。
トラウマや愛着トラウマによる認知の歪みを修正したい方は、一度ご相談ください。

※1 認知の歪みと主観的不健康感の関係, 三川俊樹 https://www.i-repository.net/contents/outemon/ir/401/401040105.pdf

※2 いやな気分よ、さようなら, デイビッド・D・バーンズ

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