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半グレ向きの人 −反社会性パーソナリティ−

半グレとは、暴力団に所属せずに犯罪行為を集団で行う人や組織のことです。
名称は「グレる」や「グレーゾーン」から来ているとされており、脅したり唆したりすることに抵抗感の少ない人を指します。

半グレの行為が社会的に違法であることは間違いありませんが、そういった行為をとれる人ととれない人がいること、またその行為で売上が上がったり契約を取りつけたりできるのなら、むしろ半グレは「デキる人」として組織で評価されうることから、半グレに向いている人を知ることは、社会的にも有益なことだと思います。

半グレに向いている人の心理と思考、傾向と対策について説明します。

半グレ向きの人の特徴

魅力的、カリスマ性がある

魅力的な立ち居振る舞いや言動をし、人を惹きつけます。
問題解決にも積極的に取り組み、能動的で押しが強い人でもあります。

求心力を持ち、その性質を活かして起業家や実業家になる人も多くいます。
人前に立つことにも抵抗がなく、また見る人が期待しているような言動をとるため、政治家や映画俳優、ミュージシャンとして成功する人もいます。

人を出し抜いて優位に立ちたがる

誰よりも先に課題に着手したりマウントをとったりして、相手より優位に立とうとします。
笑いをとった方が得と見れば真っ先に笑いをとりに行きますし、ブルーオーシャンの市場があればそこを席巻しようとします。

人を出し抜くことが好きな人は新発売のガジェットに目がありません
購入したことを自慢できればそれだけで注目を集めることができますし、機能について話したり手に入れるまでの苦労を話したりできれば、話題の中心にも立てます。

そういった目的で、男性であればブランドものの腕時計や高級車、女性であればブランド物のバッグや貴金属を強く欲することも多いです。

刺激を求めて驚かせたり罠にかけたりする

退屈を嫌い、刺激を求めて他人を驚かせたりドッキリにひっかけたりします。
自分も一緒になって同じ感情を共有するよりも、一歩下がって状況を面白がったり、人から罠にかけられないよう警戒したりします。

同じような理由から、メンツを非常に重視します。
人から見られたり注目されたりするときは必ず好感をもってされなければならないと考えており、非難や落胆をもって注目されることを「耐えがたい仕打ち」と捉えます。

本来なら自己を高揚させるべき刺激と興奮が逆に自己を落ち込ませてしまうため、そのような事態に仕向けた人を恨んだり、体面を保とうと反撃に打って出たりします。
意に沿ったウケや笑いは歓迎しますが、意に沿わない笑いは「嘲笑された」「下に見られた」と感じ、次は他の人がそうなるよう、画策したり陥れたりしようとします。

口がうまく、達者

言語能力に長けていることが多く、商品を魅力的に紹介したり、プランをプレゼンテーションすることが得意だったりします。
作り話がうまく、それによって資金を集めたり新規事業を立ち上げたりすることにも秀でています。

「変わってる」が褒め言葉

周囲と同じことをすることを嫌い、同じ見た目で同じ行動をとっていると、それを乱して注目と刺激を獲得しようとします。
そのため、「他とは違う」「変わってる」「○○なのにそんな人珍しいね」「××みたいな人見たことない」などと言われると、狙いがうまくいったと喜びます。

小さな規則違反が多い

注目を集めることを刺激と捉えること、刺激と興奮を求めることから、遅刻や忘れ物、割り込みなどでマナーを破ったり、交通ルールを違反したりといった小さな規則違反をよくします。
幼少期から小さな違反行為をしているため、そういった行為をすることへの心理的ハードルが下がって大きな違反を行うようになり、特に誰からの注目を得られなくても、習慣的に違反行為をすることもあります。

同じように違反行為をする人と集団を形成するため、それ以外の人から見ると独特の仲間意識を持っていることがあります。
同じ違法行為をする/させることで集団の凝集性を高めることもありますし、その集団を維持するために外部の人に対して違法行為も辞さない態度を示し、情で結束している「かのように」見せることもあります。

髪型への強いこだわり

注目を得たがる傾向から、他者に衝撃を与えたり、印象づけたりすることを好みます。
服装やアクセサリーによってそれを達成しようとする人もいますが、子ども時代には服やアクセサリー着用の自由がないことから、髪型や髪色を変えることによって集団に埋没しないよう試みる人が多くいます。

髪型は、特に前面(正面の人から見える部分)へのこだわりが強く、ヘアワックスで固定したり前髪をこまめに揃えたりすることで偏執的に見え方について意識します。
前面へのこだわりがエスカレートしてくると、髪型に関しては全方位的に目立つものに変化し、次いで髪色を奇抜なものにしたり、服装、アクセサリー、タトゥーなどによって集団の中に溶け込まないようにします。

注目による刺激と興奮を欲することから、発言によって人を驚かせたり注意を集めたりしたがるところもあります。
仰天発言くらいで留まればいいですが、失言になってしまったり、内容によっては無神経とのそしりを受けてしまったりしやすいのもこういった人の特徴といえるでしょう。

半グレ向きの人の困りごと

犯罪行為、触法行為

行動によって注目されたり興奮を覚えたりしたことから、それがエスカレートし、犯罪を犯してしまうことがよくあります。
犯罪によって逮捕されてしまえば人生の選択肢は大きくせばまりますし、犯行が習慣化してしまうことで他の人に多大な損害と迷惑をかけることにもなりかねません。

特に、集団から逸脱した人は他の逸脱した人を発見する、仲間に引き入れようとする傾向が強く、暴走族や暴力団などの組織に引き込まれたり、逆にそういった人たちに利用されて金銭や生命を失うことになったりしやすくなります。

親密になれない

他者を出し抜いたり、他の人から一歩下がって状況を伺ったりするため、何かを達成したときの一体感を得られなかったり、そういった経験を通して親しくなったりする機会を逃していたりします。
また、刺激と興奮を求めるために飽きも早く、長い時間をかけて一緒に過ごす経験をする前に別の刺激と興奮を求めて関係を解消してしまうことも少なくありません。

現代は情報化社会のため世界中の人と知り合えたり、際限なく新たな情報を得られたりするため、次々と新しいことに手を出していけば、刺激と興奮には一生事欠かないかもしれません。
一方で、配偶者を得たり定職に就いたりした場合には、そういったものを取っかえ引っかえ換えるというわけにはいかないことから、相談に来られる方もいます。

メンタル治療が長続きしない

カウンセリングはカウンセラーと親密になりに来るところではありませんが、かといって全く親しくならないというのも人間関係である以上難しいものです。
すると、半グレ向きの人が心療内科やカウンセリングルームに相談に訪れた場合、相手との対話に飽きてしまったり、来ることへの負担がまさって通院をやめてしまったりすることがよく起こります。

外科手術であれば手術したところまででなく抜歯や予後の確認まで必要なように、メンタル治療もメンタル機能の確認や再発予防まで行う必要があるもの。
特に半グレ向きの人に合わせたメンタル改善法は、世間に出回っていないのが実情です。

せっかくメンタル治療に取り組むという最も高いハードルを越えたのですから、治療は定期的に、最後まで取り組んだ方が良いでしょう。

ここで挙げたような特徴を備えた性格を反社会性パーソナリティといいます※1

反社会性パーソナリティの認知

他人を喜ばせなければならない be pleasured

養育者から「みんなに刺激と興奮を」と期待された子は、次第に周囲の人が楽しんだかどうかを価値基準の中心に置きます。
「他人が喜んでくれた自分の行動は良いものだから増やそう。喜んでくれなかった行動は減らそう」と学習し、それに合わせた行動や態度を選択していくのです。

認知が形成されたときには世間の良識や社会のルールなど知る由もありませんから、とにかく反応してもらえ、かまってもらえる行動ーー悪口やいたずらでも、お構いなくおこなってしまうことになります。
また、周囲からの反応があるかどうか、喜ぶかどうかが規準になるため、喜んでもらった後でどのようなツケを払わなければならないかにまで、考えが及んでいないことがあります。

強くなければならない be strong

感情を表に出す人は子ども扱いされやすく、それにうんざりした養育者が離れていってしまうリスクをはらんでいます。
強くあれの認知を持った人は、他者が離れていかないよう、本心を顔や言葉に出さないよう、我慢するようになります。

特に反社会性パーソナリティの場合、そういった認知が頼りがいのあるように他者の目には映ることが多いです。
兄貴分の人、姉御肌の人は、年少の人が頼りやすいよう自分の悲しみやおびえを出さず、ネガティブな感情や事情であればあるほど、外からは分からないように振る舞うため、なお一層頼られたり、カリスマ性を帯びたりします。

この認知を持っている人は、足を組んだり腕組みをしたりと、いわゆる閉じた姿勢を好みます。
見る人に堅牢さと一貫性の印象を与え、自分と相手との間に物理的な距離を置くことで、心理的にも目の前のことから一歩下がって状況を把握できる効果があるものと考えられます。

近づいてはならない(信頼してはならない)

あまり人と親しくなろうとしなかったり、そもそも友好な関係を築きたがらなかったりします。
陰にこもる時期には社交的な場に出ていきたがらず、一人か少人数かでいることを好みます。

一方、陽の時期にはむしろ積極的に人と交流しに行ったり関わったりするため、そういう二面性が「どこか闇を抱えている」と人を惹きつけることもあります。

感じてはならない

「感じてはならない」「感じるべきではない」の認知を持った人は、自分の思ったことや感じたこと、特におびえと悲しみをそもそも抱いていないかのように知覚します。
これは、おびえや悲しみを表出しては周りの人が離れていくリスクが高まること、怖がったり悲しんだりすると、そこにつけ込まれたりからかわれたりすると思っていることなどに由来します。

この認知を持った人は、自分の身体感覚に注意を向けたり、今どのような感情を抱いているかを言葉にすることがとても苦手です。
カウンセリングでは、感じていることに注意を向けられるようになることを目指したり、感じたことをいつ誰に伝えるかを一緒に計画したりしていきます。

反社会性パーソナリティの原因

後述の反社会性パーソナリティ障害は、6:1で男性の方が多いため、反社会性パーソナリティも遺伝的要因が関与しているとされています。

分子科学的には、セロトニン受容体の異常が認められるといわれています。
セロトニンは脳内神経物質の一つで不安を和らげ精神を安定させる作用を持っていることから、反社会性パーソナリティの人は不安になりづらく、外部から多少の刺激があってもあまり動じたり緊張したりしないため、より多くの刺激を求めてスリルがあり危険度の高い行動をとるとされています。

他のパーソナリティ同様、出生後の生育環境にその原因があるという説も有力です。

養育者が乳幼児に対し、かまってあげられるときには目一杯可愛がる反面、関わりに飽きたり手のかかること(おむつを替えたりあやしたりすること)が発生したりしたときにはその場から離れる、無視するなどすると、乳幼児は「見捨てられた」と感じるようになります。

自分の行動によって「見捨てられ」が発生するときとしないときがあることを学習した子どもは、最大限かまってもらうためにあらゆる行動を試します
そうすることで次第に「悪口を言ったり喧嘩したりするとかまってもらえるようだ」「泣いたり怖がったりしても大人から引き離されることは避けようがないし、むしろそういうことをすると大人は厄介だと思って離れるようだ」などを学習していきます。

人に見捨てられること、人が周囲から離れていくことへのおびえと悲しみを隠しながら、周囲からの注目と刺激を求めるようになった結果、反社会性パーソナリティは形成されます。
こうした経験と決断を幼少期、遅くとも1歳半までにしたことで、反社会性パーソナリティが確立するといわれています。

反社会性パーソナリティ障害

反社会性パーソナリティのネガティブな側面が強調され、特に他者と社会を著しく毀損する場合、反社会性パーソナリティ障害という診断になります。

反社会性パーソナリティ障害
  • 逮捕の対象となる行為を反復的に行うことにより示される法律の軽視
  • 反復的な嘘,偽名の使用,または個人的利益もしくは快楽のために他者を言いくるめることにより示される欺瞞的態度
  • 衝動的に行動したり,事前に計画を立てなかったりする
  • 絶えず身体的喧嘩を始めたり,他者を攻撃したりすることにより示される怒りやすさまたは攻撃性
  • 自分または他者の安全性の向こう見ずな軽視
  • 別の仕事のあてもなく仕事を辞めたり,請求書の支払いをしなかったりすることにより示される一貫した無責任な行動
  • 他者を傷つけたり虐待したりすることに対する無関心またはそのような行為の合理化により示される後悔の念の欠如

反社会性パーソナリティ障害に多く見られる併存症は、依存症です。
刺激と興奮を求めること、反社会的勢力から目をつけられたり弱みを握られたりすることから、アルコールやドラッグなど依存性のあるものを大量に摂取してしまい、それらの依存症になるケースが多いとされています。

反社会性に対応するには

反社会性パーソナリティの人は行動的で積極的な反面、対人関係ではおびえや悲しみを吐露できなかったり、反秩序・反倫理的な言動から社会生活が不安定だったりします。
臨床経験から反社会性パーソナリティへの対処を3つ挙げますが、これらは心理カウンセラーなどの専門家がカウンセリングの中で取り組む方が望ましいものもありますので、身近に反社会性パーソナリティの人がいらっしゃる方はご相談いただいた方がいいかと思います。

刺激と興奮を得る方法を検討する

発言によって周囲の人をギョッとさせたり、反応が良いと思って言ったことが失言になったりする場合には、他の表現によって本来求めていた反応が得られないか検討します。
反社会性パーソナリティの人のいたずらごころや悪だくみのうまさを前向きに利用するため、セッションはとても楽しく、また成功率も高いアプローチです。

発言に限らず、刺激と興奮を求めてやっている行為(ギャンブルや薬物乱用、スピード違反や万引きなど)がある場合にも有効な対処法です。
他方、こういった行為の裏に双極性障害や薬物依存があることもあるため、他の障害との除外診断を要する点には注意が必要です。

「大人は見捨てられない」と知る

言動の根底に見捨てられ不安があることの多い反社会性パーソナリティには、振り返りや内省によってその不安に気づくことが人生の質(QOL)を高めることにつながります。
自分の行動の裏におびえがあること、周囲から見捨てられるような事態には大人はそうそうならないこと、おびえを自覚しながらもそれを打ち明けることで関係が深まることなどを、対話の中からゆっくり自覚していきます。

長期的展望を一緒に考える

人を出し抜いたり場から一歩下がって状況判断したりする反社会性パーソナリティの人は、本来的には先のことを考えることが得意です。
問題は、その先のことというのが目先の損得のことになりやすく、もっと長期的に何が欲しいのか、何を得たいのかまで考えることを避けてしまうところにあります。

長期的展望にまで目を向けられないのは、「一人でそんなことは結局できやしない。他の人と協力しても結局裏切られたり見捨てられたりするに決まってる」という信念が根底にあるからです。
信じ合える人を得ることはできるということ、本当に欲しいものや得たいものは自分の決意によって手に入れられることを、実際の行動を通して新たな信念にできれば、長期目標について考えられるようになります。

人生の中で信じられる人と出会えれば、信念も自然と更新されていくのですが、そういった出会いのないまま成長してしまった場合には、まず安心感のある人間関係の構築から始めなければなりません。
自分も反社会性パーソナリティかもと思われる方、身近に反社会性パーソナリティの人がいて対応について相談したい方は、安心感のある関係構築から行える当オフィスに一度ご相談ください。

まとめ

半グレ行為に向いている人は、小さな規則違反に頓着がなくそれがエスカレートして犯罪行為も行いやすい反面、人を惹きつける行動や弁舌の巧みさから、カリスマ性があり魅力的なところもあります。
人と親密になれないことを悩んでいる場合もありますが、刺激と興奮を求め、人との長期的な関係作りを自分から放棄し、新しい関係へと移行していくことも多く見られます。

このような特徴を有している人を反社会性パーソナリティと呼びます。
過去に養育者からの見捨てられを経験し、見捨てられないようどんなことをしてでも注目を集める、しかしどんなに注目されてもその人たちはいつか自分を見捨てるだろうから、決して信用はしないといった信念を持つようになったものと考えられます。

反社会性を離れ、他者や社会とうまく折り合いをつけていく方法としては、刺激と興奮を得る他の手段を見つける、今は見捨てられないことに気づく、長期的な目標を確認する、といった方法があります。
これらは心理カウンセラーなどの専門家と一緒に取り組んだ方がスムーズなことが多いので、お困りの際は一度ご相談されると良いでしょう。

※1 交流分析による人格適応論, ヴァン・ジョインズ, イアン・スチュアート, 2007

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