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マインドフルネス

マインドフルネス(mindfulness)は、評価や判断をはさまず、今という瞬間に対する気づきの状態のことです。
考え続けて心ここにあらずの状態をマインドレス(mindless)というのに対し、マインドフルネスはあるがままを受け入れ、脳内からストレスを消してストレスフリーな状態に導きます。

マインドフルネスの効果ややり方、デメリットについて、臨床現場での経験を踏まえながら、わかりやすく説明します。

マインドフルネスとは

マインドフルネスは精神状態の一つであり、一切の評価・判断をはさまず、今という瞬間々々への気づきの状態(awareness)のことです。
私たちは生活している中で色々なことを考え、察し、決めていますが、そういった頭の中での声を一旦止め、今、ここでのことに意識を向けている状態のことをマインドフルネスといいます。

マインドフルネス(mindfulness)の語源は、バーク語のサティ(sati)やサンスクリット語のスムリティ(smṛti)とされています。
どちらも、心に留めておくこと、気づきという意味になります。

マインドフルネスは瞑想とよく似ていますが、両者は微妙に異なります。
瞑想は心をカラにして自然や宇宙との繋がりを感じる行為ですが、マインドフルネスはその導入部にあたる精神状態であり、マインドフルネス瞑想はそういった精神状態を養うための修練の一つです。

マインドフルネスが社会的に注目されるようになったのは、マサチューセッツ大学医学校名誉教授のジョン・カバットジン博士による1979年のマインドフルネス瞑想についての臨床研究によるところが大きいです。
カバットジン博士は8週間にわたるマインドフルネスプログラムを設定し、その前後で脳の構造的差異が認められることを発表しました。

カバットジン博士のプログラムはマインドフルネスストレス低減法(MBSR:Mindfulness-based stress reduction)として構造化され、体験的にストレスが低下したと報告されただけではなく、MRIによって脳部位の大きさが変化したことが科学的に実証されました。

上のグラフは、マインドフルネスストレス低減法の効果を示したものです。
グラフの上半分に付置されているのは、MRI検査によって扁桃体の体積が減少した人であり、右半分に付置されているのは、マインドフルネスプログラム後「ストレスが減った」と回答した人です。
マインドフルネスによって、客観的に脳内に変化があったか、主観的なストレスが低下したか、どちらかの変化が生じたということになります。

マインドフルネスはあるがままを受け入れ、過去を手放し、未来への不安から解放されることで脳疲労を軽減する、科学的なアプローチです。

マインドフルネスを継続した結果

マインドフルネス瞑想の効果として、感じていたストレスが小さくなるほか、ネガティブな感情が生じる扁桃体という脳部位が小さくなることが確認されています。
扁桃体以外にも、記憶を司る海馬や体の動きや姿勢を司る小脳は体積が増加することが報告されており、記憶力が高まったり、体の反応が良くなったりする可能性が示唆されます。

身体的健康

血圧が正常化し、血糖値や血中コレステロール値が低下するといわれています。
また、ウイルスや細菌から体を守る免疫系の働きが活性化し、病気にかかりにくくなることが期待できます。

オハイオ大学の研究では、抗炎症作用が高まることが報告されているため、炎症由来の痛みや倦怠感が改善すると考えられます※1

精神的・心理的健康

不安感や緊張感が和らぎ、精神的に安定します。
感じていたストレスから解放され、落ち込みや憂うつな気分になりにくくなります。

今ここでの感覚に意識が向けられるようになると、ストレス耐性が高まり、新たなストレスが生じるような状況でも動じることなく落ち着いて対応できるようになります。

ビジネスシーン

目の前のことに集中できるようになり、複数の作業に取り組まなければならない状況でも、そのときそのときの目の前にある課題に専念できるようになります。
ハーバード大学の研究では作業スピードの向上が確認されており、素早く正確に物事を処理できるようになります※2

脳機能の変化と精神状態の安定性から、記憶力が向上する場合もあります。

マインドフルネスのやり方

マインドフルネスになる方法を2つご紹介します。
ここに挙げる方法は、初心者や精神状態が不安定な方にオススメしていますが、それでも実施することが難しい場合には、専門家にガイドしてもらいながら1 on 1で行い、習慣化することをオススメします。

呼吸法

  • STEP1
    姿勢
    楽な姿勢で椅子に腰かけてください。
    背筋をまっすぐに伸ばし、肩を落として、肩の力を抜いてください。
    目線は1.5m〜2m先の床に向け、半眼か伏し目にしてください。
    座るものがなければ、あおむけに寝てください。
  • STEP2
    腹式呼吸
    息を吸い込んだときにはお腹が膨らみ、息を吐いたときには引っ込むのを感じながら、お腹に意識を集中させてください。
  • STEP3
    注意がそれたとき
    自分の心が呼吸から離れたことに気づいたら、そのたびに呼吸から注意をそらせたものを確認し、それから静かに腹部に注意を戻してください。
    呼吸に注意を戻すのがあなたの仕事です。
  • STEP4
    習慣化
    STEP1〜3を毎日15分間おこなってください。
    気乗りしない日も行い、日常の中に呼吸法を取り入れることで、どんなふうに感じるかを観察してみてください。

ボディ・スキャン

  • STEP1
    姿勢
    あおむけになって、目を閉じます。
    体の部位に注意を向けていきますが、その部位で生じている感覚を観察し、その場所で数回呼吸してから、次の部位に注意を移動させていきます。
  • STEP2
    下半身
    左足先に注意を向け、その意識をゆっくりと足の付け根の方に移動させます。
    交感神経優位ですと足先から付け根まで点と点をつなぐように意識を移動させてしまうため、移動はゆっくり行うことを意識します。
    骨盤まで移動したら、右足先に注意を向け、同じように足の付け根の方に意識を移動させます。
  • STEP3
    胴体部
    骨盤から腰、腹部、背中と胸、肩へと順に注意を向けます。
  • STEP4
    上半身
    両手の指先に注意を向け、左右同時に指先から腕、腕から肩へと意識を移動していきます。
    肩から首、のど、顔の各部位、後頭部、頭頂部へと注意を移動させます。
  • STEP5
    全身
    頭頂部にくじらの噴水孔のような穴が空いており、そこから呼吸しているようにイメージしてみてください。
    頭のてっぺんから入ってきた空気が、全身にくまなく巡り、足先から出ていっているように想像します。
    足先から入った空気は頭のてっぺんから出ていき、体全体で呼吸しているつもりで呼吸できたら、終了です。

マインドフルネスを導入している人・企業

スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、マイケル・ジョーダン、松下幸之助、イチロー、本田圭佑、琴奨菊
企業Apple、Yahoo!、メルカリ、Sansan、楽天、ゴールドマンサックス、インテル、Facebook、トヨタ、フォード
マインドフルネスを取り入れている著名人や企業(一部)

著名人や企業がマインドフルネスを導入しているケースも増えています。
その実績は個人の生産性向上をはじめ、昇進や昇給などの社会的地位向上、業務効率化、ストレス低減、幸福感の増加など、多岐に渡ります。

その中でもマインドフルネスをいち早く取り入れ、生産性の向上とストレスの低下を達成した企業がgoogle社です。

初期にプログラマとして入社したチャディー・メン・タン氏は、自身のモチベーション向上に効果のあったマインドフルネスを周囲のメンバーを対象に実施し始めました。
すると、その効果が社内に広まり、Seach inside yourself(SIY)として社内研修となるまでに至ったのです。

SIYの参加者は「何のために働くのか」「自分にとっての幸福とは何か」に向き合うことができるようになり、そのモチベーション確立効果は他社の耳にも入るようになったことから、一躍マインドフルネスがビジネスの世界に広まるきっかけとなりました。

マインドフルネスをやってはいけない人

マインドフルネスや瞑想が、有害な事象を引き起こしてしまうこともあります。
「やり方が正しいのか分からない」「やっていると退屈に感じたり眠くなったりする」「やっているときはいいが普段のパフォーマンスが落ちた気がする」といった方は、当オフィスのような1on1でリードされながら実施した方がいい場合がありますので、一度ご相談ください。

ストレスによって創造性を発揮させる人

ストレスがかかると自律神経は交感神経優位となり、一時的に行動的になったり頭の回転が高まったように感じたりします。
身体的には血行が良くなって免疫力が高まり、過酷な状況でもくじけにくくなります。
ストレスは慢性化するとネガティブな作用をもたらしますが、一時的にはポジティブな効果も確認されているのです。

マインドフルネスを行うとそういったストレスから解放され、脳機能や神経系の働きが正常化しますが、そんなストレスを原動力にアイディアを出したりスピーディに物事を処理したりする方がマインドフルネスを行うと、創造力や処理速度が落ちたように感じるようです。
疲労があったからこそ美味しく感じた食事や飲み物もあれば、ストレスを抱えていたからこそ面白く感じた話題や番組というものもあり、一概にストレスフリー=幸福とも言い切れません。

持続可能サステナブルな人生にマインドフルネスは効果的ですが、現在の働き方や自分のワークスタイルに合わない方は実施しない方がよいでしょう。

実施中に次から次へと考えが湧いてくる人

マインドフルネスをしていると考えごとが浮かばず無心でいられるということはほとんどなく、むしろ注意がそれたり、雑念が湧いたりしている時間がほとんどです。
その雑念からいかに注意を戻すか、考えごとにとらわれた自分にどれだけ素早く気づけるようになるかがマインドフルネスの目的でもありますので、無心になれないからといってマインドフルネスをやってはいけないわけではありません。

頭の中でのおしゃべりが止まらない、始めてもすぐに悩みごとや「こんなことをしていて何になるんだ」とマインドフルネスについての評価が浮かんでくるという方は、適切なガイドをつけて実施した方が良い人です。
無音よりBGMがあった方が集中できる人がいるように(私です)、マインドフルネスを行うときも音声ガイドのあるアプリを使ったり、指導員のいるマインドフルネス体験会に参加したりすることをオススメします。

特に注意をした方がいいのは、うつや適応障害の方です。

うつの場合は「反すう思考(ぐるぐる思考)」、適応障害の場合は「ストレスへのとらわれ」が症状として出現するため、マインドフルネスの実施を妨げるケースがたいへん多いです。
ストレス関連障害の方やメンタル疾患の疑いがある方は、ストレスの低下より前に取り除くべき症状があるため、心理カウンセラーや専門家にご相談ください。

フラッシュバックや離人感のある人

トラウマを体験した方は、当時のことを急に思い出してしまう侵入思考、あたかもその場にいたかのように汗が噴き出したり血の気がひいたりするフラッシュバック、自分の体が自分のものでないように感じ現実感を失う離人感など、マインドフルネス実施を妨げるような症状が多く現れます。

ASDやPTSDなどのストレス関連障害の方が体験したストレスは、一般的なストレスとはケタが違うため、マインドフルネスをするとかえって予期せぬ反応が引き起こされてしまうことが多いです。
トラウマ体験をしたことがある方は、まずトラウマ治療をおこなってからストレス低減を目指すことをオススメします。

一方、トラウマ治療にマインドフルネスを取り入れたものにブレインスポッティングという治療法があります。
これは、トラウマティックストレスを最小限に留めつつ、マインドフルネスを用いながら体と心の反応を正常化させていく、新しいトラウマ治療です。

ブレインスポッティングやストレス関連障害の治療をご希望の方は、ぜひ一度当オフィスにご相談ください。

まとめ

マインドフルネスは精神状態の一つであり、今ここでの様子に気づきを得ている状態です。
マインドフルネス瞑想を継続すると、脳がストレスから解放され、身体的には安定性を取り戻し、精神的には不安や緊張が低減します。

マインドフルネス瞑想を取り入れた企業や著名人は多くおり、中でもgoogle社で実施されたSeach inside yourself(SIY)は、働く意義や人生の幸福について考える契機になった人が多くいたため、マインドフルネスが世間に知られるきっかけとなりました。
精神を安定化させるマインドフルネス瞑想ですが、うつや適応障害のため注意を集中させることが難しい方、トラウマティックストレスを抱えている方などは適切なガイドをつけておこなったほうがいい場合があります。

適度なストレスによって創造性を発揮したり活動の原動力としたりしていた方も、マインドフルネス瞑想が不適当な場合があります。
特に、メンタル疾患があってスムーズにマインドフルネス瞑想が行えていない可能性のある方は、ブレインスポッティングなどのガイドを受けながらマインドフルネス状態に入る方法もありますので、ぜひ一度当オフィスにご相談ください。

※1 Workplace based mindfulness practice and inflammation: A randomized trial, 2013, William B.Malarkey, DavidJarjoura, MaryannaKlatt https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0889159112004710

※2 Mindfulness practice leads to increases in regional brain gray matter density, 2010, Britta K. Hölzel, James Carmody, Mark Vangel, Christina Congleton, Sita M. Yerramsetti, Tim Gard, Sara W. Lazar https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3004979/

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