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コルチゾール -副腎から分泌されるストレスホルモン-

コルチゾールとは

コルチゾールは、ステロイドホルモンの一種です。
腎臓のそばにある副腎というところから分泌され、体内の状態を安定させるよう働きかけます。

ストレスに反応して産生されることから、ストレスホルモンとも呼ばれます。
主に血液中に含まれますが、唾液や頭髪にも含まれ、その量を測定することでストレス評価や副腎機能のバイオマーカーとして使用されます。

コルチゾールはどんな役割? コルチゾールの働き

コルチゾールは生体防御機構の一端を担っています。
外部からの脅威を知覚すると、脳はHPA軸によってそのことを副腎に伝えます。
副腎から分泌されたコルチゾールは、脅威に対抗すべく、体内にエネルギーを生み出し、それを体中に届けられるよう、様々な働きを行います。

作用説明
タンパク質分解筋肉中のたんぱく質をアミノ酸に分解し、グルコースの原料を作る
糖新生肝臓に働きかけ、グルコース(ブドウ糖)を新たに合成する
血糖値上昇肝臓で新生されたグルコースを血液に乗せて全身に送り出す
血圧上昇心拍を増大させ、血液内の圧力を高める
免疫抑制白血球の働きを一時的に抑え、ストレスへの対応にエネルギーを集中させる
抗炎症熱や腫れなどの炎症でエネルギーが発散しないよう、炎症を抑える
脂肪分解脂肪として溜め込んでいた脂質を分解し、エネルギーにする
胃酸分泌胃酸の分泌を活性化させ、食物の消化を早める
覚醒度上昇糖新生によってエネルギーを生成し、脳の覚醒度を上げる
海馬委縮想起できる記憶を単純化し、状況判断の効率を高める
コルチゾールによる身体機能への作用

コルチゾールは起床時に最も高値になり、就寝時に最も低くなります(生理的日内変動)
寝ている間に少しずつコルチゾール値が高まり、それが一定水準に達すると覚醒します。
日中はおよそ5~20μg/dLで推移し、それより高い状態が続いたり、低い状態になったりすると、副腎に異常が起きている可能性があります。

コルチゾールが増えるとどうなる?

インスリンは、血糖値を下げるホルモンとして有名です。
コルチゾールは、筋肉や脂肪などに働きかけ、このインスリンと拮抗するため、血中のコルチゾールが増えると血糖値が上がります。

顔がふっくらと丸みを帯びる、下腹部が膨らむ、手足の筋肉が衰えるなどが起こります。
ストレスによって太ってしまうのも、コルチゾール過剰が一因です。

コルチゾールが低いとどうなる?

反対に、血液中のコルチゾールが減少すると、血糖値が下がり、血圧も低下します。
エネルギーの高まらない状態になり、元気がなくなります。

四肢に力が入らず脱力したような感覚に陥り、脳にも血液が行き渡らないため集中しづらくなります。
慢性化すると、体重減少、食欲不振、血行不良などが起こります。

コルチゾールの体への影響は? 過剰なコルチゾールによる身体症状

パワハラ、ストーキング、いじめ、虐待などの長期的なストレスにさらされ続けると、コルチゾール過多となり、身体疾患に至ります。
糖尿病、高血圧、脂質異常、白内障、緑内障、骨粗しょう症などは、過剰なコルチゾールが一因と考えられます。
また、筋肉量の低下、免疫力低下による感染症のかかりやすさ、脂肪沈着なども、コルチゾール分泌過多によって起こります。

この症状は小児期逆境体験ACEsの症状とも一部重複するため、小さい頃につらい体験をした人は成人後もコルチゾール分泌過多になるリスクが高いと考えられます。

コルチゾールの脳への影響は? 過剰なコルチゾールによる精神症状

長期的なストレスへの曝露は、体だけでなく、精神的な変調も引き起こします。

コルチゾールが分泌されると覚醒度が高まることから、特に目覚めと深い関連があります。
ストレス状況に置かれると朝早く目覚めてしまうのは、血液中のコルチゾール濃度が高まり、覚醒を促進させているからです。
同じく、寝つきが悪くなるのも、夜になってもコルチゾール値が下がりきらず、体が警戒状態を維持してしまっていることに因ります。

過剰な量のコルチゾールが脳内に至ると、海馬の神経細胞を萎縮させ、記憶障害を引き起こします
ストレス下に置かれた人の物覚えが悪くなったり、覚えていたはずのことが咄嗟に思い出せなくなったりするのは、コルチゾール過剰の可能性があります。

コルチゾールを低下させるには? コルチゾールの減らし方

うつ状態の人はHPA軸が機能障害を起こし、コルチゾールの分泌が止まらなくなっているといわれています。
ストレスによってコルチゾール過多になり、眠れないことで心身が回復しないと、生体はエネルギー確保のためあえて気分を落ち込ませてなるべく活動させないようにします(病気関連行動)
うつ状態のときの落ち込みや意欲低下は、コルチゾール過多に対する生体防御反応の一つかもしれません。

ストレスと最も関連の深いホルモンとされているコルチゾールは、血液だけでなく唾液にも含有されることもあり、様々なストレス研究で測定対象となっています。
最近では、ヤクルト1000によってコルチゾール値が低下したという報告も、世間を賑わせました※1

コルチゾールを減らすと言われているものをいくつかご紹介します。

運動

数多くの研究で、運動によるコルチゾール値低下が確認されています。
ジョギングなどの有酸素運動も、筋トレなどの無酸素運動も、いずれもコルチゾール分泌を抑え、体内環境を正常化させる働きがあるようです。
また、アスリートはコルチゾール分泌過多になりにくいともいわれています。

瞑想

呼吸や周囲の気配に注意を向け、気持ちを落ち着かせる瞑想も、過剰なコルチゾール分泌を抑えるとされています。
近年、最も注目されている瞑想としてマインドフルネス瞑想が挙げられますが、この効果測定にもコルチゾールが用いられており、実施前後でコルチゾール値が下がることが確認されています。

ビタミンC

コルチゾール産生にはビタミンCが必要です。
ストレス負荷がかかり、大量のコルチゾールが作られると、同時にビタミンCも体内から失われます。

ビタミンCを摂ることでコルチゾールを始めとする各種ホルモンが正常化する説や、ビタミンCによって生体に活力が戻り、結果的に外部からのストレスを減らす説などがありますが、ビタミンCが過剰なコルチゾール分泌を抑えるのは確かなようです。

感謝

感謝を示すことがメンタルの調子を整えることはいくつかの研究から分かっていますが、感謝がコルチゾールにも影響し、その分泌を穏やかにするという結果が出ています。
感謝されることはそれで気持ちが良いものですが、自分から感謝し、「ありがとう」と言うことでコルチゾールを下げられれば、今よりも落ち着いた時間が増やせるかもしれません。

禁酒

飲酒はコルチゾール値を高めます。
更に、アルコールは鎮静作用もありますが、時間差で覚醒作用もあります。

入眠前に飲酒すると途中で目が覚めやすくなり、副腎を始めとする体内の恒常性ホメオスタシスが乱れやすくなります。
アルコールを定期的に摂取する人は、その頻度を減らしてストレス耐性を高めるのが良いでしょう。

ペットを飼う

ペットを飼っている人は、そうでない人よりコルチゾール値が平均して低かったという報告もあります。
ペットを飼うことによる負担ももちろんあるでしょうが、それを上回る抗ストレス作用があるようです。

人類が動物を飼うようになったのは1万5000年以上前からと言われていますが、それは古代人のストレスケアとしての側面もあったのかもしれません。

まとめ

ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールは、体内のエネルギー増加に貢献している有用なホルモンです。
肝臓で糖の生成を促す他、最も特徴的なのは覚醒度を高める作用であり、コルチゾール値が高まることで寝ている状態から目覚め、起床後すぐに活動できるかにも関わっています。

一方で、コルチゾールの過剰な状態が続くと、覚醒度が高まり続け、睡眠が不安定になったり、脳の記憶中枢である海馬の萎縮を引き起こしたりもします。
ストレスがどの程度かかっているかの指標にも使われており、治療効果を確認したり、ストレスチェックの生化学的な裏付けにも活用されることが期待されます。

心理療法の中では、マインドフルネス瞑想によって過剰なコルチゾール分泌が抑えられることが確認されています。
ストレス過多な状況が続き、コルチゾール過剰から来ていると思われる症状でお困りの方は、一度当オフィスにご相談ください。

Bitly
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※1 プロバイオティクス・ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株はストレス関連症状を緩和する https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26896291/

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