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構造上のいじめ

いじめとは基本的に児童間で生じるものであり、文部科学省の定義でも「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」とされています※1
それに対し、構造上のいじめとは大学生やビジネスパーソン、組織に所属している人なら誰の身にも降りかかりうる出来事です。

構造上のいじめとは何でしょうか。
一般に知られているいじめとの共通点と相違点を明らかにしながら、構造上のいじめを説明していきます。

一般的ないじめ

一般的ないじめは行動ベースなので発見しやすい

いじめとは、「一定の人間関係のある者から心理的・物理的な攻撃を受けたことによって精神的な苦痛を感じている状態」とされます。
小突いたり突き飛ばしたりするような物理的なものもありますが、殴りかかるかのようなジェスチャーをして威嚇するのもいじめに含まれますし、無視をしたり陰口を叩いたりして相手に精神的苦痛を与えるものもいじめに該当します。

生理心理学の観点から言えば、いじめの特徴は「一方的である」ということに尽きます

例えば叩いたり小突いたりするのも「AからBに」だけでなく「BからAに」していることもあるなら、これはいじめには当たりません。
スポーツチャンバラやボクシングをいじめと言わないのと同じ理屈です。

これは、叩いたり小突いたりしているときは交感神経優位の状態であると同時に「致命的に傷つけてはこない」という認識から、オキシトシン(幸せホルモン)も産生されているからだといいます。

お互い安全・安心を感じながら攻撃したり戦ったりしているため、適度な覚醒状態になっているのです。
これが一方的になると、やる側もやられる側も交感神経優位でありながらオキシトシンは出ていないため、双方とも過剰な覚醒状態になっていると考えられます。

構造上のいじめ

組織構造によって生じるいじめは発見しづらい

構造上のいじめとは、「組織の成員の誰も攻撃する意図はないにもかかわらず、組織内で活動すると自動的に苦痛を与えることになる構造」のことです。
一般的ないじめ同様、一方的に行われることから”いじめ”という単語を用いています。

ある組織の同期二人を例にとってみましょう。

二人はそれぞれ異なる専門性を有しています。
Aに専門業務と、それほど専門性の高くない業務が割り振られました。
Aは専門業務に取り組まなければならないため、Bに専門性の高くない業務を託します。
BはBの専門業務が来るのを待ちますが来ないため、Aに託された業務に取り組みます。
Bは専門外の業務を誰かに託したいのですが、Aは専門業務に手を塞がれており、Aに業務を返すことはできません。

こうやって専門性の高くない業務に忙殺されていく状況が、構造上のいじめです。
この問題点は、Bがいかなる行動を選択しても状況が変わらないという点です。

Bが期待以上の完成度を達成したとしても、それはBの専門業務とは無関係のため、Bに専門業務が割り振られることには繋がりません。
下手をすれば、完成度を高くしてしまったがために、専門性の高くない業務を更に追加されることになります。
完成度は高くせず短時間で仕上げた場合も同様で、「効率的だ」と見なされて専門性の低い業務の量が増やされるだけです。

反対に完成度を低くしても、Bの評価が下がるだけでやはり専門業務が割り振られることには繋がりません。
環境によっては、いざBの専門業務が発生したときに「アイツはダメなやつだから」と割り振ってもらえなくなることすらあり得るため、全くの逆効果でしょう。
全く手をつけずにAに戻す、別の者に委託するといった行動でも結果は同じです。

構造上のいじめの例

構造上のいじめの発生した状況をいくつか挙げてみます。

学校

クラスで人気もあり、文化祭実行委員も務めているAは色々なところから仕事を引き受けてきますが、Aはやりたい仕事のやりたい部分だけやって残りはBに任せます。
Bはクラスメイトから参加意欲がないと思われるのも嫌なので仕事をこなしますが、感謝や評価はAに注がれ、Bには何の評価もされません。

デザイナー系企業

Aはウェブ系のデザイナー、Bは紙媒体のデザイナーです。
Aはウェブ業務の中でも他の人のできる業務をBに委託してきますが、Bには雑務をやらされているようにしか感じられません。
意を決して上司に業務を回してもらえるよう直談判しますが、「そんなにやることがないなら」と誤解されてしまい、更に雑務を回されてしまったため、退職を決意します。

ネイルサロン店

他店での経験もあるAは以前の店から引き抜いてきた顧客対応で毎日業務があるのに対し、同時期に入職したBはこの職場が初入職だったため固定客がおらず、店内の掃除や他の先輩達の手伝いだけで一日過ごすことも少なくありませんでした。
ご新規さんを回してもらうよう店長に掛け合いましたが「技術が足りないのだから客がつかないんだ。技術を高めろ」と言われるだけです。
練習のかいあって技術は高まりましたがそれを発揮する場は与えられず、掃除やアシスト業務の忙しさから飛び込み客にも対応できず、しばらくした後Bは店を去りました。

一般的ないじめとの違い

助けるばかりで助けてもらえない組織では苦痛と孤独感が生じる

「精神的に苦痛を与える」という目的のため、一般的ないじめは暴力や無視などの手段が用いられます。
対して、構造上のいじめはそのような分かりやすい行動が見られることはありません。
誰も触ったり言ったりもしていないし、無視したり嘲笑したりもしていないのに苦痛を感じている人がいる点が、一般的ないじめと異なります。

また、個人の努力では解決しないところも、一般的ないじめとの違いです。
雑務や雑用を任せなくなったからといってその人に専門業務が割り振られたり無から生じたりするわけではなく、ただの手の空いた人が一人できあがるだけですから、いずれ他の人がその人に雑務や雑用を割り振るでしょう。
それが「上からの指示」などに移行するだけで、精神的な苦痛を感じることには変わりありません。

いじめられる側が離職したり排除されたりしたからといって解決とはならないのも、一般的ないじめとは異なります。
よく「いじめはいじめられる側に問題はないのか。いじめる側だけの問題なのか」という命題が話題に上りますが、本当にいじめられる側に問題があったのならいじめられる側がいなくなることでいじめはなくなりますし、いじめる側だけの問題ならいじめていた人がいなくなればその後いじめは起こりません。
構造上のいじめは集団や組織構造の問題ですから、誰かがいなくなってもまた別の人がいじめられる側になりますし、いじめられる側がいる以上いじめる側もまた自然発生します。
構造上のいじめを解決するには、構造の変革が必要なのです。

いじめの問題点

いじめが存在するだけで集団全体に向けたあらゆる取り組みは失敗する

一般的ないじめの場合、身体的に損傷したり精神的にトラウマが残ったりと、いじめられた側の個人に甚大な被害が生じます。
構造上のいじめの場合はそういったものは生じにくいのですが、それでも職場や集団組織の中で起こってしまったときには大きなデメリットが生じます。

それは、いじめのある組織ではどのような施策も無意味化するということです。

昔、テレビの企画で30人31脚というものがありました。
学校のクラスメイトが一丸となり、ときに頭を使い、ときに励まし合いながら一つの物事に取り組むその企画は、とても良いもののように視聴者には見えたことでしょう。

しかしあの企画も、いじめのあるクラスでは功を奏さなかったと思うのです。
いじめられている側はいじめている側に反発して練習に応じないでしょうし、いじめている側も失敗をいじめられている側に押しつけて問題解決しない、教師が強制すれば更に両者の溝は深まりかねない――そんな状況がありありと想像できてしまったのです。

構造上のいじめも一般的ないじめ同様、この30人31脚のような、本来なら組織を良くする施策を無意味化すると考えられます。
売れ筋の書籍やネットでは「生き生き職場づくり」「ポジティブ組織づくり」「ワクワク感」といった言葉が並んでいますが、組織内にいじめがあり、苦痛で脳機能(大脳新皮質の働き)の低下した人が一人でもいた場合、どの書籍やネットの情報を自組織に適用してもうまくいかないと思われます。

解決策・対処法

構造上のいじめを解決できるのは、その組織構造を作っている上位存在です。
職場なら上司や組織長、学校ならクラス担任などです。

最善の対処法は、まずいじめられている側にも専門業務を割り振れるよう尽力することです。
いじめられている側に業務がないことが苦痛を生み出しているのですから、業務をとってくるよう働きかけたり、場合によっては苦痛を感じている人に聞き取りをして「どんな業務をやりたいか」を明確にするところから始めることも必要でしょう。

次善の策として、いじめられる側により多くの報酬を与えることで、苦痛を軽減する方法が挙げられます。
しかし、給料や報酬目当てで仕事をしていない価値観の人もいますし、そもそも学校など無報酬で作業している組織もありますので、この方法は限定的なものと考えた方がいいでしょう。

もう一つの策として、雑務や雑用と見なされる業務を専門で行う人に委託する方法もあります。
ビルや駐車場の清掃員などの例のように、その職場・その場所では雑務と見なされていても他にとっては雑務ではなくなるケースは多くありますので、業務委託が苦痛の緩和に効果的な場合もあります。

ちなみに、一般的ないじめを解決できるのは、いじめる側・いじめられる側両方の個人です。
上位存在として解決に乗り出す場合、双方の個人に心理的なケアが必要ですので、いじめられる側には安心感を取り戻すような慈愛に満ちたケアが、いじめる側には内面のエネルギーを適切に発散させる術を一緒に考えるカウンセリングやコーチングが、それぞれ必要となります。

まとめ

構造上のいじめとは、「組織成員の誰も攻撃する意図がないにもかかわらず、組織内で活動すると自動的に苦痛を与えることになる仕組み」のことです。
一方的に助けさせられたり、一方的に協力させられたりするような構造のことであり、「一方的である」という点と「苦痛を感じさせられる」という点が、一般的ないじめと共通しています。

一般的ないじめは個人をケアしたり指導したりすることで解決するのに対し、構造上のいじめは上が組織構造を変えないと解決しません。
どちらのいじめにせよ、解消しないまま会社規模の施策をしたり生き生き働けるような取り組みをしても全て無意味なものになってしまうため、集団を組織する者は解消に全力を注ぐ必要があると言えるでしょう。

構造上のいじめを受けている方、職場を良くしようとしているのになかなかうまくいかない方は、一度当オフィスへご相談ください。

※1 いじめの問題に対する施策, 文部科学省 https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/06/26/1400030_003.pdf

コメント

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