自分に否定的な見方になりがちな愛着スタイルとらわれ型。
彼らは見捨てられ不安にとらわれており、不安と心配から衝動的な行動に飛びつきます。
期待にそぐわない養育体験からくるとされるとらわれ型は、どうすれば生きやすくなれるのでしょうか。
愛着スタイルとらわれ型の成立について、臨床心理士が解説します。
愛着スタイルとは?
幼少期、乳幼児は養育者と初めての対人関係を結びます。
最初はただ刺激に反応し、快を感じれば喜び、不快を感じれば泣くといった単純な反応を返しますが、6ヵ月頃からは次第に人を区別するようになり、見慣れた養育者との関係を徐々に対人関係の鋳型として形成していきます。
これが愛着スタイルです。
- 養育者の反応が良ければ「他者は自分の期待に応えてくれる」と思う
反応が悪ければ「他者は自分の期待にはあまり応えない」と思う - 養育者の反応が速ければ「他者は自分を気にかけてくれる」と思う
反応が鈍ければ「他者は自分のことなど気にも留めていない」と思う - 養育者があやしたりオムツを替えたりすれば「他者は期待通りのことをしてくれる」と思う
放置されたり無視されたりすれば「他者から期待通りのことを引き出すのは困難だ」と思う
乳幼児は愛着スタイルという関係の枠組みを持ちながら、養育者以外との関係も築いていき、より自己と他者に関する理解の精度を高めていきます。
乳幼児期から形成された愛着スタイルは、その後思春期や青年期にも発達を続け、成人後にまで発達と修正を繰り返しながら一貫性を保ち続けるとされています。
愛着スタイルとらわれ型とは?
愛着スタイルとらわれ型の人は、自己に対して否定的な見方をします。
自己評価が低く、自分の行動や決定に不安を感じやすい性質を持っています。
一方、他者に対しては肯定的な見方をし、自分の行動は間違っていなかったか、自分の決定は正しかったかと他人に確認したり、「大丈夫」と言ってもらいたがったりする傾向にあります。
他にも、次のような認識を持つとされています。
とらわれ型の人は、高いレベルでの親密さを他者に求めます。
四六時中一緒にいたがったり、密着したがったりします。
離れているときも連絡を取りたがり、連絡が来ることを喜びます。
褒めてもらうことを強く望み、人から手厚く、高頻度に承認されることを望みます。
応答は素早く的確にしてもらいたがり、その期待に限りなく近い水準で対応してもらうことを期待します。
愛着スタイルとらわれ型は別名、「不安-心配型」「両価型」とも呼ばれます。
愛着スタイルとらわれ型の特徴
愛着スタイルとらわれ型の生活は不安で彩られています。
不安から湧き上がる考えが頭を占め、不安からくる行動に生活の多くを費やします。
とらわれ型の人の持つ感情や行動には、次のような特徴もあります。
見捨てられ不安
人が離れていくことを心配しやすく、人から離れることに不安を抱きやすいです。
よく頼りたい、助けてほしいと思い、それを叶えてくれる人を失うときに感情的になったり、強く抵抗したりします。
「人から見捨てられるのではないか」といった考えがよく脳裏をよぎり、そういった不安から情緒不安定になったり、その不安を強く抑え込んだりします。
ひとたび親密になった相手には親密さを求めすぎ、しばしば依存的になります。
自分と離れているときにどういう状況に置かれているのか、誰と関わっているのかを相手に頻繁に情報共有するよう求めることもあります。
相手と親密になろうと距離を近づけますが、その接近を拒まれることにも怯えています。
相手から嫌われるのではないか、仲間外れにされないか、ウザがられてはいないかということも、絶えず怖れます。
高い衝動性
相手が自分から積極的に離れていかないよう、感情的になります。
離れそうになると見るや泣き出したり、戸惑ってみせたりします。
一つのことに集中できない様子を示したり、承認を欲しがったりもします。
相手に「この人から離れるのは心配」と思わせることが、相手を長く留め、相手が離れていかないために最も効果的であることを知っての行動です。
誰かといるときが最も不安が和らぎ安らかでいられるため、反対に一人でいるときには不安定な心持ちになりやすくなります。
ストレスを感じてイライラしたり、急に気分が沈んで落ち込んだりもします。
衝動的な行動を採ることも多く、不安定さを静めるために自傷行為に走ったり、不安定さから気を逸らすためにアルコールやギャンブルなどに没頭したりします※1。
そうした状態になるよう仕向けた他者を逆恨みするような心境になり、八つ当たりしたり攻撃的な発言をしたりもします。
一貫しない養育体験
愛着スタイルとらわれ型は、一貫していない養育環境から形成されると言われます。
幼い頃、自分が養育者から離れている間に養育者にいなくなられると、児童は心細さや寂しさ、不安感や孤独感を経験します。
そういった経験に繰り返しさらされると、事前に養育者との関係をコントロールしようと考え、養育者と一緒にいるときには必要以上に密着しようとしたり、離れそうなときには不安定な状態を強く表出したりするようになります。
また、仮に養育者がその場にいても、離れる前と後で様子が大きく違っていると、児童は「あの優しかった親はどこへ行ってしまったのだろう」と混乱し、同様に心細くなったり、取り残された感を感じたりし、とらわれ型の愛着スタイルを持つと考えられます。
そういった一貫していない養育環境の最たる例が虐待です。
虐待を受けた児童はそうでない児童に比べ、成人後まで不安定な愛着スタイルになるリスクが高いことが知られています※2。
まとめ
愛着スタイルとらわれ型は、自己否定的・他者肯定的な見方をする対人関係のタイプです。
人との関係において不安に駆られやすく、人から引き離されそうになると感情的になって引き留めたり、一人になると衝動的な行動に出たりします。
自己否定的・他者肯定的な性格タイプとしては、演技性パーソナリティや強迫性パーソナリティ、受動攻撃性パーソナリティなどが挙げられます。
また、自傷他害を行うほど衝動性が高くなった場合には、境界性パーソナリティ障害の診断が下ることもあります。
一時的な感情や気分を落ち着かせるだけでは、とらわれ型の苦しみは真には解消しません。
対人関係に関する誤解や錯覚を脱却し、安定した愛着スタイルを獲得することが根本的な解決に繋がります。
自分の対人関係上のスタイルを理解し、それを修正するには、対話によるカウンセリングが有効です。
カウンセリングによる苦しみからの解放をご希望の際には、ぜひ一度当オフィスにご相談ください。
※1 成人期の愛着と親との絆:知覚された人間関係の特質と自己報告された不安との相関 https://tpcjournal.nbcc.org/wp-content/uploads/2016/03/Pages_33-49-Armbruster.pdf
※2 愛着スタイルと成人の恋愛関係・友人関係:人間関係が困難になるリスクのある女性グループの研究 https://bpspsychub.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1348/000711299160022
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