ナルシシストは自己顕示欲から、あらゆる人に多くの贈り物をします。
しかし一方、人に全く贈り物をしないナルシシストもいます。
この二者の違いはどこにあるのでしょうか。
贈り物をしてもらえない場合、受け取る側に落ち度があったり、下心を見透かされていたりするのでしょうか。
贈り物に対するナルシシストの認識を紐解きます。
自己愛性パーソナリティとは
自己愛性パーソナリティ障害は、他人からの賞賛を過度に求める人格障害の一つです。
「自分は当然、賞賛を受けるに値する」という前提を持ち、人にもそう接するよう求めます。
自らを特別な存在と思い、自分を中心に物事が決まったり、自分の都合の良いように周りが動くのが当然と思ったりします。
権力の有無に敏感で、権力を持つ人を持て囃す反面、権力のない人を見下したり無視したりします。
社会生活に大きな支障がなく、人格障害にまでは至らない自己愛性パーソナリティという状態も存在します。
自己愛性パーソナリティはリーダーシップを執りたがったり注目を集める立場や活動を率先して獲得したがったりし、周囲にポジティブな影響を与える場合もあります。
独自性を追求し、独創的で革新的なことを成し遂げることもあります。
ただ、利己主義に陥り、周りからの援助を受けられずに孤立することもあります。
自己愛性パーソナリティには、誇大ナルシシストと脆弱ナルシシストという2つの型があると言われます。
誇大ナルシシストと脆弱ナルシシスト
誇大ナルシシストは、外向的で自信や誇り高い印象を周りに抱かせやすく、あからさまな傲慢さと権利意識を持つ自己愛性パーソナリティの一つです。
自己中心的な言動や行動、高い権利意識を持ち、優越感を貪欲に求めます。
可能な限り多くの時間、優越感を感じ続けていたいがために、他人を利用したり支配したりします。
一方、脆弱ナルシストは内向的で感じやすく、批判に対して過敏です。
将来への不安や愛着不安が強く、それ故に過度に防衛的であったり、寡黙であったりします。
承認欲求は強く賞賛を求めはしますが、自分のことを「欠けている」「劣っている」という感覚や恥の感覚も抱きやすい型です。
特に人への贈り物を操作的に利用するのは、誇大ナルシシストです。
しかし、その利用の仕方にもまた2タイプあることが調査から明らかになっています※1。
賞賛欲の強いナルシシストと競争心の強いナルシシスト
賞賛されたい、承認欲求の強いナルシシストは、沢山のプレゼントをする傾向にあります。
それは、自分を優れている人間だと示したい欲求に駆られ、社会的な絆をより深めようとしてプレゼントを贈るものと考えられます。
所属している共同体の中での影響力を強めるため、また自己宣伝のまたとない機会と認識するため、プレゼントによって評判を良くしようと企図します。
過剰な量のプレゼントを贈るラブボミングを行うのも、このナルシシストのタイプと見られます。
一方、人と張り合うのが好きな、競争心の強いナルシシストは、特に親しい間柄の人にはむしろプレゼントを贈らない傾向があります。
1つには、他者の存在を脅威に感じ、物を贈るより地位を下げたり、影響力を低めたりする方により関心があるためです。
もう1つは、社会的な親密さを育むことに関心がないため、特に親しい人にはプレゼントを贈らないとも考えられます。
一方的なプレゼントを多量に贈ってくる人は、誇大ナルシシストの可能性を疑い、あまり親密な関係にはならないよう一定の距離を保ちましょう。
宣伝や周囲へのアピールに利用されていると感じられる場合には、あまりその期待に応え過ぎないように気を配ると、利用価値が薄いと感じた誇大ナルシシストの方から関係を薄くしていってくれることになるでしょう。
反対に、全くプレゼントを贈ってこない誇大ナルシシストに相対するときには、プレゼントを贈ってこない可能性も念頭に置き、贈られなかったとしても過度に消沈したり落胆したりしないようにしましょう。
彼らは内なる葛藤への対処に手一杯なだけであり、あなたに落ち度があったり、好かれていなかったりするわけではない、と考えるのが適切でしょう。
まとめ
プレゼントは人間関係において重要な位置づけを占め、親密さや信頼、相手との繋がりを育みます。
もらったり贈ったりを繰り返すことで関係は深まる反面、それを別の目的に利用されたり、相手との関係に囚われたり支配されたりするリスクも孕んでいます。
ナルシシストがそういった目的からプレゼントを贈ったり贈らなかったりすることも踏まえ、プレゼントに関する出来事に一喜一憂しないようにしましょう。
また、ナルシシストとの関係の中で大きな傷つきを体験したり、トラウマとなるような経験に遭遇したりした際には、ぜひ当オフィスにご相談ください。
※1 ナルシシストはいつ、なぜ、どのように他者に贈り物をするのか? https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jopy.12983
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