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疲れるコミュニケーション ー 受動攻撃 ー

皆さんには、「あの人といるとなぜか疲れる」「嫌味も悪口も言われてないのに何か会いたくなくなってしまう」と感じる相手はいませんか。
悪い人でもないのに話しているうちにうんざり・げんなりしてしまう人は、特定のコミュニケーションの癖(傾向)がある人かもしれません。

年末年始に帰省して両親や知人と会ったり正月明けに同僚と話したりしたとき、改めて「この人、疲れるな」と感じた方もいるかと思います。
ここでは何回かに分けて、「疲れるコミュニケーション」を解説していきます。

受動的行動とは

例えば、荷物を持っている人に「重いんだけど」と言われたことはないでしょうか。
もしくは通路で立ち話をしているとき、横から来た人に「邪魔なんだけど」と言われたことはないでしょうか。

「荷物を持ってほしい」「どいてほしい」と言えばいい状況でこのような言い回しをされたとき、あなたは受動的行動をされています。
こういったコミュニケーションをされた場合、された側は相手の言わんとすることを察さなければならず、「コントロールされている」と感じ、疲れてしまいます

受動的行動の定義

あなたが友人とカフェに行ったとしましょう。
しばらく話して軽食も摂って、友人はコップに入った水を飲み干しました。

その後、何度かコップを手に持ちますが、コップは空なので水を飲むことはできません。
友人はウェイターを何度か見ますが、ウェイターを呼ぶことはしないでまたあなたとの会話を続けます。

そのうち、友人はため息をついたり何を頼むでもなくメニューを見たりするので、あなたは居心地が悪くなり、自分のコップが空になったタイミングでウェイターを呼んで友人の分も一緒に水を注いでもらいました。

 友人のしていた行動は「受動的行動」もしくは「受動攻撃 passive aggressive」と呼ばれるものです。
受動的行動とは、問題解決に能動的に取り組めるときにそうした行動は取らず、誰かが、もしくは何かが問題を解決してくれることを期待する行動のことです。

「受動的行動」と「受動攻撃」の違いは、背後に怒りがあるかどうかです。
ただ他者をコントロールしたいがためにおこなっているものは「受動的行動」、実は怒りを感じており、しかしそれを直接的に表明しないものを「受動攻撃」と言います。

受動的行動は4種類あるとされています※1
共通するのは、他者をコントロールする/される行動だという点です。

受動的行動の種類

4つの受動的行動
何もしないこと

誰かが「何もしないこと」をすると(変な日本語ですが)、周りは「自分が何かしないといけないんじゃないか?」といった気分になります。
友人や同僚が話しかけられているのにその人が反応しないとき、あなたが代わりに回答したり、愛嬌2割増しで対応したりしたことはありませんか。

このようなとき、友人や同僚は「何もしない」という受動的行動をしています。

最も一般的な「何もしないこと」は、サボりです。
仕事をサボれば誰かがやってくれる、授業中さされても黙っていれば次の人が答えてくれる、母親が理不尽なことを言ってきても嵐が過ぎ去るまでは何も言わない――これらをする人は大人になって問題解決能力が身についてもその能力を発揮せず、何もしないことにエネルギーを注ぎます。

過剰適応

食卓で、父親が手を伸ばせば取れるところにある調味料を母親が察して取ってあげる――こういった過剰適応も、受動的行動の一つです。
過剰適応すればするほど相手は「自分で何とかする力」を失っていき、また適応している側も「相手が自分のことを自分でできるようにする機会」を奪っています

子どもの宿題を代わりにやってあげる親、上司の不出来を指摘せず代わりに済ませてしまう部下、母親の文句を聞きたくないがために先回りして色々手配する子どもなど、過剰適応している側は問題解決を先延ばしし、相手の力を削いでコントロールしている側面があります。

いらいら

いらいらしている人に「コントロールされている」と感じる人は多いことでしょう。
交際相手がいらいらしていると何か自分がやらなきゃと感じたり、親がいらいらしているとおどけて場の空気を和ませたことのある人もいると思います。

いらいらの背後には怒りがあると思われがちですが、受動的行動として考えると必ずしもそうではないことが分かります。

いらいらしているときに貧乏ゆすりする人もいますが、怒りを全く感じていなくても貧乏ゆすりする人はいます。
しかし見ている側としては「何かいらいらさせてる?」と居心地が悪くなり、何かしなければならないような切迫感を感じるでしょう。

似たような受動的行動として、ため息をつく、煙草を吸う、爪を噛むなども周りをコントロールする受動的行動として機能します。

暴力または無能

受動的行動と暴力はイメージが結びつかない人も多いかもしれませんが、ほとんどの暴力は問題解決的には機能しません
むしゃくしゃして物を壊してもむしゃくしゃの原因には何の影響を及ぼさないでしょうし、わが子を殴ってもわが子の問題はそのまま変わらず、感情調整の利かない自分がエネルギーを発散させただけに終わることがほとんどです。

暴力が外に向けたエネルギー発散とすれば、内に向けたエネルギー発散は無能と呼ばれます。
リストカットをはじめとした自傷行為、ストレスを溜め込んだことによる胃痛や起床困難は無能感を生じ、問題解決から遠ざかる受動的行動の典型例です。

受動的行動の原因

受動的行動を取るようになるような遺伝工学的および脳科学的な原因は、まだ分かっていません。
しかし、生まれてからの成育環境によって受動的行動を取るようになるという仮説が提唱されています。

受動的行動を行いやすい人は幼少期、支配的な環境にあったとされています※2
幼少期に受けた「愛されたければ自分を捨てろ、自分を捨てたくなければ愛されることを諦めろ」といった二者択一を大人になっても再演しているというのです。

愛か自立かの二択を迫られた子どもは、どちらも選べないために、能動的に行動することを放棄します。
すると、状況に対して受け身になり、しかし受け身でいることに納得はしていないために受動的行動によって反抗を示すのです。

親が受動的行動によって自分をコントロールしてきたことの模倣をしているとも言われます。
親がサボりやいらいらといった受動的行動によって自分をコントロールしてきたために、自分も大人になってからも能動的な問題解決のモデルがないがために親と同じ受動的行動を取るしかなくなります。

受動攻撃性パーソナリティ障害

成人してからも受動的行動ばかりする人は、受動攻撃性パーソナリティ障害かもしれません。
受動攻撃性パーソナリティ障害の人の行動傾向としては、以下のようなものになります。

  • 日常的な社会的および職業的課題を達成することに受動的に抵抗する
  • 他人から誤解されており、適切に評価されていない不満を述べる
  • 不機嫌で論争を吹っかける
  • 権威のある人物を不合理に批判し軽蔑する
  • 明らかに自分より幸運な人に対して、羨望と憤りを表現する
  • 個人的な不運に対する愚痴を誇張して口にし続ける
  • 敵意に満ちた反抗と悔恨の間を揺れ動く

このような行動傾向を持っている人が身近にいたら、対応は精神科の領域ですので、そっと距離を置いた方が無難でしょう。
また、あなたがこのような行動をしているのでしたら、精神科に相談することをお勧めします。

受動的行動への対処

受動的行動を取りやすい人への対処を3つ挙げます。
身近にいる場合には、参考にしてください。

直接的な表現に変換する
受動的行動されたらニュートラルな表現に変換する

受動的行動を取る人は、察しと配慮を求めてきます
それをそのまま受け取っているとあなたが疲れ切ってしまいますので、「それはこうしてほしいということ?」と表現を変換しましょう。

受動的行動に対して最もしてはいけない行動が「感情的になる(怒りで反応する)こと」です。
相手の言わんとすることに変換することで感情的に反応するまでの時間稼ぎができ、怒りの感情が生じにくくなります。

ユーモアをもって応対する

受動的行動をする人は幼少期の親とのコミュニケーションを再演しています。
幼少期のコミュニケーションを取っていることを逆手に取り、ふざけたような言動で返したりおどけたりすると、スムーズなコミュニケーションが成立する場合が多いです。

例えば、「邪魔なんだけど」と言われたら「コイツはどうもシツレイしやした」といったように、少しふざけた対応を取るのです。
すると、受動的行動を取りやすい人は笑って安心し、反抗したり対立したりすることをやめてくれます。

「嫌なら嫌だと言って」と伝える

少し高度な対処として、直接的な表現をするよう伝える方法があります。
「持ってほしいなら持ってと言って」「どいてほしいならどいてと言って」「やりたくないならため息ではなくやりたくないと言って」といった直接的な表現をしても良いと伝える方法があります。

受動的行動を取らなくてもいいとはっきり言ってもらえることでかえって相手は安心し、以後は直接的な表現を行うようになる場合があります。

まとめ

直接的な表現をせず、相手をコントロールしようとする言動を受動的行動と言います。
また、受動的行動のうち、怒りの感情を表現しているものを受動攻撃と言います。

受動的行動は、「何もしないこと」「過剰適応」「いらいら」「暴力もしくは無能」の4種類があります。
それぞれに共通するのは、問題解決に向けた行動ではないこと、相手をコントロールして問題を解決させようとしていることです。

受動的行動への対処としては、「直接的な表現に変換する」「おどけたりふざけたりして対応する」「嫌なら嫌だと言ってと伝える」があります。
もし受動的行動を取りやすい友人・同僚・親への対処でお困りでしたら、当オフィスにご相談いただければと思います。

※1 TA TODAY 最新・交流分析入門, Ian Stewart & Vann Joines, 1991

※2 8 Keys to Eliminating Passive-Aggressiveness, Andrea Brandt, 2013

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