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日本とアメリカの精神科の違い -心の病気を取り巻く制度や慣習の相違点-

「心療内科を受診してみたけれど、何か違う」と思ったことはありませんか?
その違和感の理由は、日本の精神科医療制度にあるかもしれません。

国内の制度を知るには、国外のものと比較してみるのが一番。
というわけで、ここではまず、日本とアメリカの精神科医療の違いを説明していきます。

日本とアメリカの相違点とその理由

診察時間が長い

最も誤解されやすいのは、診察時間の違いです。
アメリカの精神科における診察時間は1時間ほどであり、日本の5分診療とは全く異なります。

これは、日本のように精神科にすぐにアクセスできるわけではなく、他からの紹介を受けて受診することに起因します。
プライマリケアといって、何らかの疾患の可能性があるかを診る役割があるのですが、日本の心療内科はその役割を担っている場合が多く、そのために短時間・高回転の5分診療にならざるを得ないのです。

専門医の前に主治医にかかる習慣がある

アメリカでは、各診療科を受診する前に主治医のところにかかる仕組みになっています。
この主治医をファミリードクターと呼びます。

既に主治医がおり、主治医からの情報提供と所見を踏まえた上で精神科に受診するため、情報収集に多くの時間を割かず、じっくりと治療的な診察に時間を充てることができるのです。

診察の中で心理療法を行える

アメリカで精神科専門医資格を取得する際、心理療法の研修も必須科目となっています。
研修中は心理療法を指導する者からの指導スーパーバイズを受けながら、成人の他、思春期・青年期の相談者、家族についての相談者などの対応に当たります。

そのため、診察は問診に終始するのではなく、心理療法も行われます

一方、日本はどの診療科を標榜するかは医師が自由に決めていいことになっており、それは精神科・心療内科も例外ではありません。
昨日まで耳鼻科であっても心療内科を開業していいですし、整形外科であっても心療内科を開業していいのです。

それに加え、アメリカのような研修制度ではないため、どんなに診察時間がとれたとしても、心理療法を行える精神科医・心療内科医はほとんどいません。
日本では心理療法を見学したこともない、カウンセリングを受けたこともない医師の方が圧倒的に多いのです。

白衣を着ない

アメリカの精神科医は白衣を着ないというのも、日本との違いかもしれません。
白衣は心理的に威圧感を与え、患者を萎縮させたり、話しづらくさせたりする可能性があるためです。

もっとも、日本でも白衣着用が義務づけられているわけではありませんし、病院やクリニックのルールとして施設側から着用を要請されている場合もありますので、一概に医師の意向と見なすことはできないでしょう。

医療保険加入が義務づけられていない

日本の医療保険は国民皆保険制度のため、国民全員が3割負担か、それ以下の負担で保険診療を受けることができます。
一方、アメリカにはそういった制度はなく、民間の医療保険を利用する必要があります。

ペットを飼ったことのある方なら、ペットの任意保険のようなものと考えると、想像しやすいかもしれません。

民間医療保険は、大きくHMOプランPPOプランに分けられます。
最も多く利用されているのは、保険料の安いHMO(Health Medical Organization:保険医療機関)プランです。

これはまず主治医に診てもらい、その後必要であれば専門医を紹介してもらうプランです。
ただ、プラン内のリストにある医療機関しか紹介されないため、どんな医療機関でも紹介してもらえるというわけではありません。

PPO(Preferred Provider Organization)プランは、主治医を通さなくても自由に保険診療を受けられますが、ネットワーク内の医療機関とそれ以外の医療機関で自己負担が異なり、ネットワーク外のところにかかると負担額が高くなるのが特徴です。
このように、受診できるところの自由度が制限されている点も、診察時間を長く確保できる要因の一つです。

自己負担額が高い

アメリカの精神科医が長く診察できる大きな要因が、治療費の高さでしょう。
アメリカでは1回の受診で約300~500ドル、日本円で40,000~67,000円ほどかかります。

これは全額自己負担の場合で、保険適用ではもう少し安くなりますが、自己負担でも1回約7,000円、3割負担で約2,000円の日本の治療費とは、手軽さが違うのは分かるかと思います。

治療費が高く、受診するまでのハードルも高いアメリカの精神科は、相談の絶対数を減らすことで1人当たりの診察時間を長くすることができています。
日本とアメリカの違いを理解した上で、精神科・心療内科への適切な期待を抱いて受診していただければ、幸いです。

まとめ

日本アメリカ
診察時間短い
(5分程度)
長い
(1時間程度)
最初の相談先各専門科ファミリードクター
心理療法ほぼ実施しない研修しており実施可能
白衣着る着ない
医療保険皆加入任意
自己負担安価
(5,000円前後)
高額
(10,000円以上)
日本とアメリカの精神科医療の違い(一部)

心理療法も正式な医行為と認められているアメリカでは、精神科専門医も心理療法を学び、その上で化学的治療法(薬物療法電気けいれん療法に特化した、専門家としての地位を確立しています。
「心理療法を行うこともできる医師」であれば、診察時間を充分にとっても問診に終始することはないでしょうし、患者にとっても有意義な時間となって気持ちにゆとりも生まれることでしょう。

日本で同様のことをしようとした場合、まず専門医(精神保健指定医や心療内科専門医)の研修に心理療法を組み込まねばならず、心理療法の社会的地位が向上した後、そういった研修を受けた医師の診察には診療報酬を高めに設定する、という工程を経ねばなりません。
心理療法への無理解も根強く、医師の研修に心理療法をという声も聞こえてきませんので、日本で「医師が診察でじっくり話を聴く」という状況になるのは、まだずっと先のことになりそうです。

最近では、海外のネット記事をそのまま和訳したものが見られたり、検索エンジンの翻訳機能で簡単に海外の記事を読めたりしますが、メンタルのこととなると結語には必ずといっていいほど「精神科医に相談を」と書かれています。
和訳されたものをそのまま信じて受診すると、期待外れでがっかりしてしまうかもしれません。

自分の求めているものが話に耳を傾けてもらうことなのか、それとも薬物療法なのかをはっきりさせておかないと、受診前よりも気持ちが落ち込んでしまうかもしれません。
まず心境を吐露し、置かれている状況を整理したいということであれば、カウンセリングルームという手もあります。お悩みの際には、是非一度当オフィスにご相談ください。

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