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疲れるコミュニケーション −同時処理と継次処理−

「どうしてあの人はこう行動してくれないんだろう」
「普通に考えたらこうするべきなのに」
「もしかして私に嫌がらせしたくてあんなことしているのか」
「私があの人に期待したのが悪いのか」

こう考えて悩んでいる方はいませんか。
相性的に合わない人はいるものですが、たとえ相性の問題でなくても、こういった悩みは生まれます。

あなたが「相性の問題」「相手への期待の問題」「とにかく合わなくてイライラする」と疲れているコミュニケーションは、もしかしたら脳タイプの違いからくる問題かもしれません。
脳の回路には大きく分けると2つの経路があり、人によってどちらの経路を使うかに偏りがあるのです。

菅原洋平先生の著書『思いつきで行動してしまう脳と考えすぎて行動できない脳』を紹介しながら、この2つの経路 –同時処理と継次処理− について説明します。

同時処理とは

脳に入ってきた情報を全体的に、総合的に処理する経路を同時処理といいます。
外部から取り入れられた情報が視覚を司る後頭葉に送られ、その後、空間把握や触覚を司る頭頂葉を経由して物事を理解するルートです。

同時処理のルートには言語処理が介在しないため、アイディアが突然ひらめいたり、急に降って湧いたように答えが浮かんだりします。
同時処理で考えているときには、あたかも自分がその場にいるかのように感じながら考えたり、比喩や置き換えを使ってもらうとスッと理解できたりします。

同時処理を多く使用する人を同時系同時型といいます。

継次処理とは

脳に入ってきた情報を一つひとつ順番に処理する経路を継次処理といいます。
外部から入ってきた情報が側頭葉に送られ、そこで音として処理されたり(側頭回)、言語として理解されたり(言語野)、過去の記憶を参照したり(海馬)して、理解に至るルートです。

継次処理のルートでは順序が重要視されるため、時系列を整理しながら理解したり、話の筋道を通してまとめたりすることが得意です。
これまでの経緯や自分の体験したことと照らし合わせながら情報を処理するため、物事の共通点を見つけたり法則性に気づいたりすることにも長けています。

継次処理を多く使用する人を継次系継次型といいます。

同時系のイライラすること

うなずきが遅い

同時系は物事の全体像をつかむことに長けており、相手にも全体像が分かるよう話すことを求めます。
細部のことから話されても大まかな話の流れや目的が分からないため、とりあえずうなずきを行い、全体のことが分かるところまで話がスムーズに進むように促します。

同時系にとって、うなずきとは相手に気分良く話してもらうための非言語のメッセージであり、うなずけばうなずくほど話の要点まで到達する可能性が高まり、所要時間も短く済ませられると考えています。

一方、継次系にとってうなずきとは「分かった」「理解した」ということを話し相手に伝えたいときに行う動作であり、話が分からなかったり納得できなかったりしたらうなずいてはならない、とさえ考えています。
相手が自分に対して話を理解させてくれることを望み、納得させてくれることを期待しているため、軽々しくうなずくことはしないのです。

なかなかうなずいてくれない継次系に対して、同時系は話しながら不安を募らせます。
「真顔で聞いてるみたいだけど、何かまずかっただろうか」「反応がないということは、否定的な意見が来るんじゃないか」「分かりづらかったかな。自分でもだんだん不安になってきた」と、話しているうちに自信がなくなっていき、結論やオチに達さないまま話を終えてしまうこともしばしばあります。

同時系は、継次系の納得しないとうなずかない傾向を理解し、頻繁なうなずきを期待しないこと、一方の継次系は、同時系のうなずいてもらえないと不安になる傾向を理解し、なるべく早めに一回うなずきを入れることが、良好な関係作りにつながります。

結論から言わない

終着点の分からない話を延々と聞かされると、同時系の人はれたり飽きたりしてしまいます。
映画や小説といった作品なら自分で選り好みできるため過程も楽しめるのですが、仕事や日常生活の中で別に好みでもないことに取り組むときは、特に結論を先に言ってもらえないとイライラしたり退屈したりします。

一方、継次系はその結論に至ったいきさつを知りたいと思い、また相手にもそれを求めるため、経緯や過程を一から話したがります。
歴史の教科書のように「ものの起こり」から話し始め、原因と結果が分かる形で提示されないと、納得できないのです。

同時系にせよ継次系にせよ、話すときには結論から話す方が良いでしょう。
同時系なら、最終的な着地点が分かっているので安心できますし、継次系なら、「なぜその結論に至ったの?」と興味を持ってその後の話を聞くようになるため、どちらにせよ結論を先に持ってきた方が、円滑なコミュニケーションになります。

作っては壊しでなかなか出来上がらない

同時系は、完成形から逆算して物事に着手するため、完成予想図や出来上がった状態を見られないとイライラします。
一方、継次系は、マニュアルや取扱説明書を最初から見てじっくり取り組むため、完成予想図がなくても取りかかることができたり、完了させることができたりします。

しかし、継次系にとっては工程や手順が重要であり、事前にあれをやっていなかったから結局その時点まで戻さなければならないという事態が、特に嫌いです。
そのため、順調に来ていても少し納得がいかないとまた一からやり直すこともしばしばありますが、これが同時系から見ると「手際が悪い」「スピード感がない」と感じ、イライラしてしまうのです。

同時系にとっては「完成形に至ってからが本番」なのに対し、継次系にとっては「完成させるまでが大事」なので、感情的になるポイントが異なるのは当然と言えます。
継次系に対しては時間を区切った上で制限時間までは手出しも口出しもしないこと、一方、同時系に対してはスクラップアンドビルドのサイクルを速くすることで、完成までの速度を高めるのが良いでしょう。

アイディアを出さない

同時系は脳内の色々な情報を引き出したり関連づけたりしやすいため、ひらめいたりアイディア出しをしたりが得意です。
一方、継次系は間違ったり否定されたりすることへの抵抗が先に出るため、否定されると決めつけてアイディアを出さなかったり、正しくないことは思いつかなかったりします。

同時系には、こうした「正しいことしか言わない」「決まりきったことしか言わない」態度が不満に感じます。
アイディアを出さない人は人のアイディアには口を出すことが多く、それが「ケチしかつけていない」と見えることがあるからです。
アイディアは出してこないのに口出しばかりされるため、やる気をなくしてしまうこともあります。

特に仕事のときには、「アイディア出しをする時間」と「アイディアを精査する時間」を区別するのが良いでしょう。
アイディア出しをするときは否定せずどんどん出す、どのアイディアを採用するか決めるときは新しいアイディアは出さない、とルールを設定すれば、口出しされて嫌な気分になったり、アイディアばかりでちっとも決まらなかったりする事態を防ぐことができます。

憶測でものを言われる

継次系は過去の事例や経験を脳内で参照し、どういった場合はうまくいくとか、どういう準備をしておかないと失敗するとかいうことを気にします。
ただ、未来は不定であり、必ず過去と同じように事が進むわけではありません。
特に、過去に似たようなケースがなかった場合、継次系は自身の不安や懸念を「あたかもそれが必ず起こるかのように」話します。

同時系は、継次系の憶測癖にイライラしやすいです。
「まだやってもいないのに否定するのか」「それじゃ前例のないことはできないじゃないか」「こうしてるうちに競合他社に出し抜かれてしまう」と、互いが互いを非難し合うようになってしまうのです。

継次系は自身の憶測癖や心配性を把握しておくこと、同時系は感情的にならず、むしろ相手の不安を受け止めた上で、時間をおいてから提案したり準備を整えたりするのが良いでしょう。

継次系のイライラすること

思いつきを話す

継次系は、特に仕事のときは常に実現可能性を考え、絵空事や机上の空論にならないかをチェックしながら働いています。
「空想や夢想は誰でもできる。できることややれることを積み重ねていくのが大人の仕事というものだ」と考え、努力が徒労に終わったり、実現できず落胆したりすることを嫌います

そのため、同時系の話す思いつきやひらめきにイライラしてしまうことがよくあります。
盛り上がるだけ盛り上がって実行しなかったり、いざ着手するとなったら自分に丸投げしてきたりという状況も嫌いです。

同じ同時系なら、そういった状況になっても、「自分もそうやって仕事を振ることもあるからな」と思ったり、「話が出た時点でみんなでやることになると分かっていたし」と考えたりするのであまりイライラしないのですが、そういった業務の振り方をしない継次系は、自分がしない分、人からもされたくないと考えます。

同時系として、こういった思いつきを避けるために、「これまでは、」と過去を引き合いに出すようにすることで、非現実的なアイディアに飛躍することを防げます。
一方継次系は、上に述べたように、「自分も仕事を振ることがある。お互い様」と考えるように心がけておくと、ストレスになりにくくなります。

訊いたことに答えが返ってこない

質問しても無視されると誰でも不満に思うものですが、特に継次系の場合、質問前に訊き方を考え、話の前後関係を考え、訊くタイミングを考えと、多くの工程と熟慮を重ねた上で質問します
一方、同時系はというと、疑問が浮かんだときに質問し、疑問が解消されてもされなくても「疑問が頭の中にある状態」が解消されればスッキリするため、質問することにそれほど多くの労力を費やしません。

同時系が質問を受けると、質問には答えず、その問いから得たアイディアや別の話題を話し始めてしまうことがしばしばあります。
質問した側の継次系は、質問するまでの工程が全て無駄になったように感じ、そうならないよう更に入念に時間と労力をかけて訊きに行くか、諦めてもうその人には質問しなくなることでしょう。

同時系は訊かれたことだけに答えること、訊かれたことを忘れてしまうようなら、手元にメモ帳かメモできるものを置いておき、話題が拡散しないよう注意することが必要です。

黙れない

継次系は、過去や知識を参照して、より間違いのないことを発言・行動したがる傾向にあります。
一方の同時系は、「そんな、テストじゃあるまいし」の精神で、発言に正解/不正解の思想を持ち込まず、話したいときに話したいことを話す場合が多いです。

継次系からすると、話したいことを口にされると「無思考」「無責任」「無頓着」と感じ、しかし相対的にそちらの方がどんどん発言は多くなるため、次第に「うるさい」と感じるようになっていきます。
同時系は、口を閉じることを自分の課題だと思って黙ること、継次系も、「自分もたまには違う脳回路を使おう」と、思いつきで発言してみるのが良いでしょう。

締切間近までやらない

継次系にとっては、順序良く着実に物事を進めることが大事なため、スケジュール管理したり工程表を作成したりして計画的に進めようとます
「最終的に完成すればよい」「やりたいことをやりたいときに取り組んで出来上がるのがベスト」と考える同時系とは、対照的といえます。

継次系には、同時系が期限直前まで課題に取りかからなかったり、締切が近づくまで着手しなかったりするところが「無計画」「行き当たりばったり」に見えて、イライラします。
お互いがお互いの認知傾向を理解し、継次系は計画を立てたり工程を確認する、同時系はここぞというときに一気に仕上げて間に合わせるといったように、役割分担を意識すると良いでしょう。

飽きっぽい

継次系は、コツコツ地道に物事を進めることができるため、作業に飽きにくかったり、無心でできる作業の方がむしろ好きだったりします。
一方、同時系は、繰り返しの作業に飽きやすく、退屈しやすいところがあります。

飽きてもそれを表出しなければいいのですが、そういう態度を示されたり「飽きた」と言われたりすると、継次系としても「好きでやってるわけじゃないのに」とイラッとしたり、「それでもやるのが大人でしょ?!」と反感を抱いたりします。
小学生の休み時間のように「15分やったらもう飽きた」では困りますが、そうでないのなら、継次系の人も疲れたり集中力が落ちていたりするかもしれないので、休憩したり別業務に切り替えたりするなどして、態度や言動に心を乱されないようにしましょう。

同時系/継次系どちらもいるチームが強い

同時系は思いつきで発言することを許容してくれる同じ同時系の人といることを望みますし、継次系は一緒に一から考えてくれる同じ継次系の人といることを好みます。
では、同じタイプの人でまとまったチームの方が摩擦も少なく、成果も出しやすいのでしょうか。

結果を出し、成果を生むのは、実はどちらのタイプもいるチームの方です。

あるときは、同時系がアイディアを出し、それを継次系が実現可能な形に落とし込んで完成させる。
またあるときには、継次系が綿密な事業計画を作成し、それを高いモチベーションに突き動かされた同時系が実現する。
仕事でもプライベートでも、大きな目標を達成するためには、両タイプの力が不可欠です。

同時系と継次系どちらもチームに同数ずついれば良いのですが、ほとんどの場合はどちらかに偏ります。
そんなとき、少数派になった人は、「自分はこのチームに合っていないかもしれない」「この職場に向いていないから、転職した方がいいのかもしれない」と考えてしまいがちです。

しかし、この少数派こそ、チームのキーマンです。

多数派に所属してしまうと、同時系は同時系らしく目的先行での企画や提案ばかりするようになり、案を実際に前進させたり、実現に向けての見積もりを出したりする人がいなくなります。
継次系は継次系らしく現実的な案ばかり出しますが、それだと競合他社と比べて魅力がなかったり、見かけの数字ばかり追って顧客のニーズとはかけ離れたものになったりしがちです。

訓練していけば、同時系が継次系に、継次系が同時系になることも可能ですが、一つの場所で一人の担えるタイプは1つまでです。
異なるタイプの人を排除するのではなく、いかに別タイプを理解し、別タイプと協調しながら物事を前に進めていくことができるかが、組織で成果を出していくためには重要だといえるでしょう。

同時系/継次系と内向的/外向的

内向的な人とは、興味が自己の内面の方に向きやすい人であり、外向的な人とは、興味が外部の刺激や他者に向きやすい人です。
内向的な人=内気というわけではなく、人前に立つことに抵抗の少ない人もいれば、注目を集めることが好きな人もいます。

内向的な人の中にも同時系の人と継次系の人がおり、一概にどちらのタイプとは判別できません。
同時系と継次系のどちらもグループやチームにいることが成果を出すためには必要ですが、内向的か外向的かはそういったことはないため、内向的な人は内向的な人だけで組織を形成すること、外向的な人は外向的な人だけで同時系と継次系を分担できることが理想的です。

まとめ

同時系は、ひらめきやアイディアを出すことの得意な脳タイプであり、物事を全体的に捉えて理解します。
一方、継次系は、やるべきことに着実に取り組める脳タイプであり、時系列で物事を整理しながら理解します。

同時系にとっては、反応がにぶかったり遅かったりする継次系の対応がストレスになります。
継次系にとっては、言いっぱなしだったり堅実に物事を進めておかなかったりする同時系の行動がストレスです。

同タイプでまとまった方がストレスは少なく済みますが、そうすると大きな成果を出すことができず、組織としてもチームとしても競争力の弱い集団になってしまいます。
別タイプのことを理解し、協調しながら課題を進めていける組織作りが大切です。

脳タイプは、精神科/心療内科やカウンセリングルームの知能検査で確認することができます。
脳タイプを踏まえたストレスケアや対人関係のお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度当オフィスにご相談ください。

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