
人間関係リセット症候群とは、主にネット上で連絡を取り合っていた人に対して、あるとき急に連絡を取りたくなくなったり、SNSのアカウントを削除したりしたくなる衝動のことです。
現代では、実際に相手からの連絡がつかない状態にしたり、そういった関係の断ち方を何度も繰り返したりしている人も少なくありません。
人間関係リセット症候群はなぜ起きてしまうのでしょうか。
人間関係リセット症候群の人の心理と、関係のリセットが内外に及ぼす影響について解説します。
人間関係リセット症候群とは?
.png)
人間関係リセット症候群とは、関わりのあった人との繋がりを突然断ってしまいたくなったり、実際に断ってしまったりする現象です。
一般的に関係を終えるときに行うような説明や警告をせず、コミュニケーションをいきなり途絶えさせるような行動のことを指します。
人間関係リセット症候群は、携帯端末やゲームデータをリセットするように関係を消失させてしまうことから、そう呼称されるようになりました。
人間関係リセット症候群は心理学的にはゴースティング(ghosting)と呼ばれ、受け手に「見捨てられた」と感じさせ、混乱を引き起こすことが分かっています※1。
ゴースティング
ゴースティングとは、人との繋がりを、その修復や改善を試みることなく終わらせることです。
その名称は、あたかも幽霊が消えてしまうように、一切の連絡もコミュニケーションも取れなくなってしまうことに由来します。
ゴースティングされた方は傷つき、拒絶されたよう感じ、何が起こったのか分からず混乱します。
主には恋愛関係の中で起こりやすいゴースティングですが、友人や家族、雇用主と従業員、企業間でも起こるといわれています。
ゴースティングによって感情的に踏ん切りがつかない場合、関係の終わった理由を解き明かそうと努力してしまい、思考が反芻してしまったり、自信喪失してしまったりすることがあります。
関係をリセットされるとどうなる? 人間関係リセット症候群の影響
.png)
人間関係をリセットされた(ゴースティングされた)人は、軽んじられたような気持ちになり、強く拒絶されたように感じます。
分かり合えていたような感覚から一転、裏切られたような気がし、孤独感が強くなり、結果、自尊心が低下します※2。
これは、兆候がないまま関係が終わったことが原因です。
私たちは普段、関係が続きそうかそうでないか、近づきそうか遠ざかりそうかの兆候を、周囲の情報から察しています。
人間関係のリセットはそういった兆候なく途絶えるため、どう反応したらいいかが分からなくなってしまうのです。
今まさに申し訳なく思いながら連絡しようとしているのか、自分のことなど忘れて笑っているのか、それとも事故や事件に巻き込まれてベッドに横たわっているのか、そういった何もかもが分からないため、された側は感情の整理がつかなくなります。
強い精神的負荷はトラウマ症状を引き起こし、強い絶望感や悪夢を見るようになります。
なぜ人間関係をリセットする? 人間関係リセット症候群の原因と対策
.png)
人間関係をリセットするのは、感情的な不快感を避けるためというのが主な理由です。
きっかけとなるのは退屈な会話だったり、気分を害するような発言だったり、オープンで正直なコミュニケーションが難しいと感じたりと様々ですが、今後関係を続ける苦痛と直接伝えることの不快感を回避するためにリセットするということは共通しています。
人間関係リセット症候群の人は、リセットされた側のことにあまり興味を持てなかったと報告されています。
ある調査では、人間関係をリセットした人の81%は、された相手がどう思うか、どう感じるかに「興味がなかった」と回答しています※3。
自分の苦痛と不快感が相手への興味関心を上回ったため、人間関係をリセットすると言えるでしょう。
人間関係リセット症候群の発達的要因
人間関係をリセットするのは、女性に多いとされています。
女性の方が情緒面で発達課題を抱えており、苦痛や不快感を強く感じやすいのかもしれません。
一方、社会的な課題として、女性の方が断りづらかったり、自分のニーズを率直に打ち明けさせてもらえなかったり、主張することが大事だと教えられていなかったりするのかもしれません。
人間関係リセット症候群の心理社会的要因
性別の他にも、人間関係リセット症候群を生むような社会的背景も指摘されています。
SNSや出会い系アプリによって一時的な関係を持ちやすくなり、匿名性が増したことで、相対的に人と人とが孤立する社会になりました。
それにより、社会的な影響をほぼ受けずに人間関係をリセットできるようになったのも、人間関係リセット症候群の一因とされています。
ご近所や職場といった物理的な距離の近い人とは容易には関係を断ちづらいですが、そうでない人との関わりが増え、同時に人間関係リセット症候群も増加したと考えられます。
人間関係リセット症候群の心理的要因
しかし、配慮と思いやりから人間関係リセット症候群をしているという報告もあります。
ある実験では、人間関係リセット症候群の人は相手への悪意はなく、むしろ自分が金銭を支払ったり、相手の苦痛を緩和したりするために関係のリセットを行うことが確認されました※1。
直接会って関係を終わらせる方が、言葉が行き過ぎてしまったり、闇雲に感情をぶつけるだけになってしまったりする確率は高いでしょう。
そういったダイレクトな苦痛を与えまいとし、人間関係リセット症候群のような行動に出ている可能性はあります。
ただ、配慮と思いやりから出た行動だとしても、結果的に相手の自尊心の低下や孤独感を生じさせているのだとしたら、それは人を傷つけまいとする誤った努力です。
人間関係リセット症候群の人は、過去に「嫌われたくない」や「傷つけてはいけない」と強く思い、しかしその感情が未消化のトラウマになっており、それに触れると過度に防衛的になっているのかもしれません。
反対に、関係をリセットされた経験のある人もまた、その経験がトラウマとなり、今後防衛的なメカニズムが起動し、過度に不信感や警戒心を抱いてしまうことが起こるかもしれません。
人間関係リセット症候群にまつわるトラウマやお困りごとがあれば、ぜひ一度当院にご相談ください。
※1 ゴースティング:説明なく、しかし気遣いもなく、社会的に拒絶されること https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fxge0001590
※2 超視認時代における消失:ソーシャルメディアのゴースティングの定義、背景、心理的影響 https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fppm0000343
※3 なぜ私たちは頻繁にゴースティングしてしまうのか?そしてその止め方は? https://www.buzzfeednews.com/article/lamvo/ghosting-dating-tinder-bumble-emotional-debt
-1024x396.png)
コメント