
風呂キャンセル界隈とは?
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風呂キャンセル界隈とは、入浴の面倒さが先に立ち、入浴そのものを止めてしまう人々のことです。
入浴とは湯船に浸かるだけでなく、シャワーを浴びたり体を洗ったりすることも含まれます。
また、その面倒さは入浴中だけに留まらず、入浴前の準備や、入浴後のドライヤーやスキンケアも含まれます。
風呂キャンセル界隈になる理由としては、日々の忙しさや疲れから入浴をキャンセルすることが最も多いようです※1。
他にも、入浴前や入浴直後が寒い、入浴以外に優先したいことがある、浴槽や洗面用具を洗うといった清掃が面倒、などの声もよく聞かれます。
なぜ風呂キャンする? 風呂キャンセル界隈の心理
工程数の多さ
入浴が面倒に感じる一因には、風呂に入ってから出るまでの工程数の多さが挙げられます。
風呂に入ると決めてから出るまでに限っても、ざっと以下のような工程が含まれます。
実際には脱いだ服をまとめたりスキンケアやヘアケアをしたりと、人によって差はあるでしょうが、それでも取りかかりにうんざりする程度の工程数ではあります。
肝心なのは、この工程をしている間、手を止めたり別のことをしたりといった小休止を挟むことができないという点です。
髪を洗うのに疲れたからといってそこで手は止められませんし、調べたいことが頭に浮かんでも一度風呂場から出て検索できたりもしません。
始めたら終えるまで別のことができないというこの感覚が、風呂と関わることを余計に面倒臭く感じさせています。
この「途中で離脱することのできないような感覚」は、パニック障害を持つ人の感覚にも似ています。
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向こう側の見えるのトンネルに入るのなら、パニック障害の人でも難なく入れます。
入ってから出るまでどれくらいかかるか分からないようなトンネルだと、その間不安と戦い続けなければならないことが容易に予想できるため、パニック障害の人はそういった閉鎖空間を回避するようになります(予期不安)。
風呂キャンセル界隈の人たちも、入浴に関わると離脱できないことが予想できてしまうからこそ、その感覚に圧倒され、うんざりし、結果として入浴そのものをキャンセルしてしまうのです。
心理的コンフリクトの多さ
入浴をキャンセルしたくなるのは、何も入浴に伴う工程数のせいだけではありません。
その工程のうち、心理的コンフリクトが多いのも、キャンセルしたくなる大きな要因です。
心理的コンフリクトとは、相反する2つの欲求がぶつかり合うことを言います。
コンフリクトは、衝突、対立、葛藤とも訳されます。
先に挙げた工程の中だけでも、11もの心理的コンフリクトが含まれています。
工程数の多いところに飛び込まねばならないだけでなく、欲求と欲求のぶつかり合うような、わざわざ葛藤を抱え込みに行かなければならないのも、入浴をキャンセルしてしまいたくなる一因と言えるでしょう。
心と体のコンフリクト
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先に挙げた心理的コンフリクトだけでなく、意識上と意識下の間でもコンフリクトは生じます。
言語化できない意識下にあるのが、自律神経系の働きです。
自律神経とは、交感神経と副交感神経の切り替えによる身体安定化のメカニズムのことです。
私たちの体は安静時、副交感神経優位になっています。
副交感神経が優位な状態では、身体は筋肉や関節を休め、食べた物の消化や吸収を優先しています。
これが入浴となると、体は交感神経優位に転じ、心臓は血圧を高め、血流は手足に送られ、体を動かしたり洗ったりするのに適した状態になります。
自宅は安全基地なので、落ち着いて安静にしながら休みたいと意識上では思っています。
一方、入浴は活動であり、手足に力を入れたり動かしたりしなければならなくなります。
こうして、意識上は副交感神経優位でいたがり、意識下では交感神経優位にならなければならない状態が生まれます。
これが、意識上と意識下のコンフリクトです。
いわば心と体の間に起こるコンフリクトもまた、入浴を遠ざけ、葛藤状態を回避したくなる一因と言えるでしょう。
どうしたら風呂キャンしない? 風呂キャンセル界隈への対策
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ルーティンから外れたことを取り入れる
工程数にうんざりして入浴を断念してしまう人には、ルーティンを変えることがおすすめです。
ルーティンとは、日常の中で習慣化している決まった手順や動作のことです。
入浴するという一連の動作も、ルーティンでおこなっているからこそ先が読めてしまい、余計に面倒臭さやうんざり感が高まってしまっている可能性があります。
例えば、髪から洗っているところを顔から洗ってみたり、先に湯船に浸かるところを体から洗ってみたりしてみましょう。
いつもは夜に入浴するところを、朝一番に入浴してみることも効果的です。
習慣で行うことは効率的かもしれませんが、それでは「流れ作業感」「タスク感」が際立ち、面倒臭さが強く感じられてしまいます。
洗う順番を変えてみたら自分の身に何が起こるのか、寝起きに入浴してみたら普段と違った感覚になるのかどうか、実験のつもりで試しにやってみることが大切です。
入浴の工程に楽しいことを入れ込む
入浴をキャンセルしなくなるには、浴室に楽しいことを持ちこむのも効果的です。
心理的コンフリクトは、釣り合いが取れてしまっていること、欲求と欲求が拮抗していることが問題であり、その均衡を崩すことが肝要です。
半身浴をしながら動画を観たり、入浴中だけ歌を歌ったりするのは、心理的コンフリクトの解消という観点からすれば、たいへん理にかなった方法と言えるでしょう。
入浴後に冷えたビールを飲んだり、クーラーで涼しくした部屋を用意しておいたりするのも、同じく効果的です。
私も一時期、浴室にNintendo 3DSを持ち込み、入浴中だけポケモンをするようにしたところ、入浴するまでのハードルも下がり、ポケモンタワーも上階まで行けるようになり、ゲームをやりすぎることなく止めることもできるようにもなるという、一石三鳥の体験をしたことがあります。
他の活動の直後にそのまま入浴する
心と体の間に起こるコンフリクトに対しては、別の活動に連動して入浴をおこなってしまうというのも効果的です。
ひとたび安静に、のんびりしてしまうと、意識としても「休んでいる・休みたい」と思ってしまい、活動を再び始めることが難しくなります。
帰宅という活動の直後にすぐ入浴してしまえば、意識と意識下の間にコンフリクトは起こらず、入浴を達成できます。
自宅で行う活動としては、リビングに行く、食卓に行く、トイレに行く、ポストを見に行くなどがあります。
ベッドに行くと見せかけて風呂場に行ったり、散歩がてらに銭湯に行ったりすることもできるかもしれません。
要はついでに、勢いで、流れで入浴してしまおうということです。
神経系にも優しい方法ですので、入浴のためだけに動き始めるのが億劫な方は、ぜひトライしてみてください。
まとめ
風呂キャンセル界隈になると、清潔さが失われ、見た目にも汚くなったり、体臭がきつくなったりすることもあります。
衛生観念の低さを疑われ、人から避けられるようになったり、嫌われたりしてしまう確率も高まるでしょう。
1日に何度も入る必要はありませんが、夏には高温多湿にもなる最近の日本では、1日1回くらいは抵抗なくスムーズに入浴したいものです。
また、うつ状態やストレス関連障害など、入浴の工程数に億劫感を強く感じてしまうような精神疾患が背後に潜んでいることもあります。
風呂キャンセル界隈の方、精神疾患ではないかと疑っている方などは、ぜひ一度当オフィスにご相談ください。
※1 【”風呂キャンセル界隈”の実態調査】20~50代女性の22.1%が「週1回以上お風呂に入らない」! https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000062.000072434.html
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