
小さい頃から過酷な環境に身を置かれていると、後年その影響が心身に表れるようになっていきます。
その悪影響は行動レベルだけでなく、細胞レベルでも引き起こされることが分かってきました。
小児期逆境体験による細胞老化と視線回避について、臨床心理士が解説します。
小児期逆境体験(ACEs)とは
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脳は幼少期から青年期にかけて最も発達し、その時期に経験したストレスは成長してからの心身にも悪影響を及ぼすことがあります。
幼い頃に経験したストレス体験には身体的心理的虐待から家庭内暴力の目撃などが含まれ、それらは小児期逆境体験(Adverse Childhood Experiences:ACEs)と呼ばれます。
- 心理的虐待:罵る、非難する、嫌がらせを言われる
- 身体的虐待:押す、掴む、突き飛ばす、ひっぱたくなどをされる
- 性的虐待:性的な仕方で触れる、触る
- 家族の薬物中毒:アルコール/薬物中毒の人がいる
- 家族の精神疾患:うつ、または精神疾患の人がいる
- 母や義母の暴力被害:母親か義母が、押す、掴む、ひっぱたく、物を投げつけるなどをされる
- 家庭内での犯罪行動:刑務所に行った人がいる
- ネグレクト(育児放棄):食べ物が充分にない、汚れた服を着ている
- 支持的養育者の不在:誰も愛してくれない、大切と考えてくれないと感じる
- 両親の離婚や両親からの離別:両親が離婚したり自分を捨てたりする
ACEスコアが高い人ほど、生活習慣病や心疾患など健康上のリスクが高いことが報告されています。
トラウマがあると人の目を見ようとしなくなる
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幼少期のトラウマ体験は、将来的に病気になるリスクを高めるだけでなく、社会性の発達にも影響を及ぼします。
私たちは音や匂いなど、外部から様々な社会的合図を受け取っていますが、その中で最も重視しているものは視覚です。
見慣れないものを目にしたり感情の動かされるものを目にしたりしたとき、PTSDの人は瞳孔が小さくならず、標準より大きく拡がることが確認されています※1。
幼い頃にトラウマを経験した人はその後、社会不安や社会恐怖を強く感じるようになるケースがありますが、社会不安症の人は人からの視線を不快に感じやすく、視線接触の不快感を避けるために人と目を合わせなくなります。
幼い頃にトラウマを経験した人も、そういった理由から見つめ合うことを避け、表情から得られる手がかりを見逃がしたり、人と情緒的な絆を結べなかったりしてしまう可能性があります。
トラウマがあると人より早く老化する
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幼少期のトラウマ体験はまた、その子の老化を早めてしまう可能性も指摘されています※2。
例えば、私たちは大人になるにつれ心拍は強くなり、拍動は落ち着いてゆっくりになっていきますが、小さい頃に暴力被害を受けている児童は、そうでない児童より心拍数が少なくなりやすいです。
このことは見た目にも表れ、実年齢より大人びて見える児童は、暴力被害を2倍程度多く経験していたという報告もあります。
児童虐待やACEsは細胞レベルで成長が早く、老化が早まる可能性があるのです。
トラウマのある人は老化が早まり、視線も避ける
細胞レベルで老化しやすいことは身体的生物的特徴であり、一方で人と目を合わせたがらないことは行動的特徴であるため、この2つは一見無関係に見えます。
しかし、これらの反応には関連があり、トラウマのある人は細胞老化も早まり、視線もより避けることが指摘されています※3。
虐待を受けトラウマになっている子どもたちは、人の顔の目の部分を見つめる時間が短く、代わりに口や背景など目以外の部分を見る時間が長くなります。
この傾向は年齢よりも年上に見える子どもたちにより顕著であったことから、トラウマ体験が目を合わせることへの不快感を増大させ、細胞老化も加速させていると考えられます。
まとめ
まだ社会どころか世間も知らない子どもたちにとっては、家族からの虐待や無視は個人の許容量を超えた過度のストレスです。
小さいうちにそういった過度のストレスがかかると、不安定な環境に対処するため、身体が細胞レベルで早く成熟せざるを得なくなるのかもしれません。
安定し、人から支持され支援される環境に身を置くことで、加速する細胞老化を遅らせることができるのではと期待されています。
虐待や離別、無視などの過度のストレスを受けた人は、なるべく早く治療した方が苦痛も少なく、改善も多く見込まれます。
幼い頃に多大な苦労をした方、目を合わせることに強い抵抗感のある人などは、ぜひ一度当オフィスにご相談ください。
※1 トラウマを経験した人の脅威に対する反応 -PTSDの有無を問わず- https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26215078/
※2 暴力への曝露は児童のエピジェネティックな老化を加速させる https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28827677/
※3 マルトリートメントを受けた子の行動・情緒の困難さとエピジェネティッククロックの変化、および社会的視線注視との関連 https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0321952
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