嫌いなものについて考えていると、気持ちもつらくなるものです。
嫌いというだけでストレスなのに、そう考えることがまたストレスになったりして、余計つらくなっていませんか?
そんな「嫌い」という感情を反転させ、むしろ「好き」に変えることのできるフランクリン効果をご存じでしょうか。
ここでは、フランクリン効果と、その仕組みについて解説します。
フランクリン効果とは? 好意的であることが好意を生む心理
フランクリン効果とは、人に何かをしてあげると、する前より相手を好きになったように感じる心理現象です。
「自分が相手を助けたのは、自分が相手を好きだからだ」と錯覚し、そのような認識のほうに修正される現象のことをいいます。
「ベン・フランクリン効果」「ベンジャミン・フランクリン効果」とも呼ばれます。
ベンジャミン・フランクリンとは?
ベンジャミン・フランクリンは、アメリカ合衆国建国の祖である政治家です。
彼が自伝の中で語ったエピソードが、フランクリン効果という名称のもとになっています。
フランクリンは、ペンシルベニア州議会で議員だったとき、敵対議員の反感にどのように対処していたかについて語っています。
敵対議員の所有している本の中に、非常に希少で好奇心をそそる本があると聞いたので、私はその本を読みたいと書いて彼に伝えました。
彼はすぐさまその本を送ってきてくれたので、1週間ほど後、彼にそのことへの感謝と友好の気持ちを書いたメモを同封して本を返送しました。
その後、彼に議場で会ったとき、彼は私に話しかけ(そんなことはこれまで一度もありませんでした)、とても礼儀正しく接してくれました。
彼とはそれ以来、大の親友となり、彼が亡くなるまでその関係は続きました。
フランクリン効果は、それまで抱いていた自分自身の概念が“攻撃”された結果、人生の矛盾が書き換えられ、編集され、錯覚しうることを示しています。
認知的不協和理論
フランクリン効果は、認知的不協和という認知バイアスによって説明されます。
認知的不協和(cognitive dissonance)理論では、人は自分の「考えや信念、態度」と「行動」の間にある緊張、すなわち不協和を解消するために「態度」か「行動」を変えるとされています。
人は、認識と行動の間で一貫性を保とうとするということです。
フランクリン効果の場合、「元々抱いていた相手への否定的な態度」と「好意的な行動」との間に不協和が生じたと考えられます。
その結果、「好意的な行動をとるということは、自分は相手に対して好意的であったということだ」と認知の書き換えが起こり、実際に好意的な行動が増加したり、否定的な行動が減少したりするのです。
師匠と弟子、上司と部下、先輩と後輩の関係においても、フランクリン効果が生じることがあります。
技術や情報を与える側は、知らず知らずのうちにその行為を「好意的である」と認識し、自分が与えられる側のことを「好きである」「好ましいと思っている」と錯覚するようになります。
フランクリン効果の例と使い方
教師が生徒のことを好きになったり、OJTが新入社員に好意を持ったりするのも、フランクリン効果といえるでしょう。
反対に、与えられている側が好意を返そう、施しに応えようとすればするほど、役割が逆転したり、「自分は与える側のことが好きなのだ」と錯覚したりすることも、フランクリン効果によって起こり得ます。
営業の分野では、クライエントや見込み客からあえて情報を与えてもらうことで、クライエントからの好意を高められるかもしれません。
例えば、いま業界を取り巻く状況はどうなっているか、価格の高い商品や手頃な商品は何かなどを、あえてクライエントから教えてもらうのです。
クライエントは情報を与える側ですが、「与える」という行為をしたことで認知や態度も変容し、「(この営業は)好意的である」と認識する確率が高まります。
ここには、人の持つ教えたい欲求や、知識を披露したい欲求も働いています。
まとめ
嫌いな人、ネガティブな感情を抱く人というのはどこにでもいるものです。
そういう人と遭遇したとき、かのベンジャミン・フランクリンのように、あえて好意的に接することが自分の感情を浄化させ、うまくいけば周囲の状況も友好的に変える糸口になるかもしれません。
一方で、それほど嫌ってもいない人に意地悪なことをしたり、無視や陰口を叩いたりしていては、「私はあの人のことが嫌いなんだ」という認識に徐々に傾いていく可能性があるともいえます。
ネガティブな感情に囚われやすい人は、好き嫌いをすぐに判断せず、とりあえず人を助けてみたり物を与えたりするところから始めてみると、ネガティブ感情が生じにくくなるかもしれませんね。
今まさに他者へのネガティブ感情やストレスでお悩みの方は、ぜひ一度当オフィスにご相談ください。
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