困っている人と「相対する」仕事
一般的な心理士の仕事のイメージを一言で表せば「メンタルケア」ということになると思います。
傷ついた人の心を癒す、落ち込み挫けた人に寄り添い理解者となる、対象や場所は様々ですが、日本において心理士に期待されている働きの第一義はメンタルケアということになるでしょう。
メンタルケア業務のお金の発生方法はいくつかあります。
一番分かりやすいのは困っている人を助けて直接お金をもらうことですが、困っている子の親を援助したり、会社と契約を結んで苦しんでいる人や苦しむリスクの高い人を助けたりことで料金が発生するものもあります。
中には、ある地域や公共団体(学校など)に所属している人を治し、公的機関によって税金や公費から料金が支払われる場合もあります。
それら全てに共通しているのは、心理士が相対するのは「困っている人自身」という点です。
困っている人と「相対さない」仕事
直接困っている人の対応をする業務の他に、間接的に困っている人の対応をする業務――治療者育成ビジネスがあります。
治療者が一人で困っている人を助けても限界がある、だから治療者の数を増やしてより多くの困っている人を助けよう、というのが治療者育成の大義名分です。
先のメンタルケア業務に比べ、このビジネスは金額が格段に高いのが特徴です。
その理由は2つあります。1つは日本においてメンタルケア業務の相場感が極端に安いから、もう1つは治療者志望の人が少ないために高額にしないと採算が取れないからです。
一般書や日用品は安く、専門書やプロ仕様の工具は高いように、欲しがる人が少なければ少ないほど高価になるのは他の経済原理と同じです。
人に叡智を授けられるくらい学問を修めるまでには様々な書籍を読んだり研修を受けたりしなければならないため、その元を取るためには高額に設定するのも致し方ないという意見もあります。
苦しみを治療する者が苦しむ心理士資格ビジネス
ある流派の治療者が弟子を育てたとします。弟子からは講習料や月謝を受け取ります。
その弟子のうちの2人がまた別の分派をそれぞれ創出したとしましょう。
するとその次の世代に移ったとき、1つの流派を修得しようとする者より、2つの流派を修得しようとする熱心な者の方がより講習料や月謝の負担に苦しむことになります。
これが、日本の心理士の現状です。
多くの心理士は勉強熱心で、探究心と知的好奇心に富んでいます。
にもかかわらずカウンセリングやセラピーが一般に普及しない理由の一つは、こういった治療者育成ビジネスが資格ビジネスとなって心理士を困窮させているから、そして学を修めた者ほどこの資格ビジネスの方が実入りが多いために「困っている人」より「より高額な費用を払ってくれる専門職」を相手にするビジネスの方に流れていってしまうからです。
心理士が心理士を、専門職が専門職を食い物にするようなものですから、経済活動は当然のように閉じた世界でのやりとりに終始し、蓄財の多い富裕層だけが残るので心理士人口は減少の一途を辿ります。
なり手も教え手も減っていき、本当に困っている人が優秀な治療者に出会える確率はどんどん減っていきます。
本当に困っている人を助けるには
この悪循環を断つ方法はいたってシンプルです。治療者が弟子を雇用すればよいのです。
弟子は流派を学びながら給料を手にすることができ、その次の世代も学びたいところを増やせば増やすほど収入も増え、勉強熱心な者ほど裕福になることができます。
心理士が資格ビジネスに走ってしまう理由は大きく分けて2つあります。
1つは、心理士は興味の範囲が極端に狭いことが多く、心理学やカウンセリングにしか興味がないところがあります。
集客するにはどうすればよいか、利潤を生むにはどのように収益を上げいかにコストを下げるか、そういったことに全くと言っていいほど無頓着で不勉強な心理士は他業種よりも多いように見受けられます。
もう1つは、実は治療者としての実力がそれほどなく、困っている人を助けたり治したりできないということがあります。
例えば、特定の症状を高い確率で治療できるなら成果報酬型や失敗時の返金保証型の料金設定をすることも可能ですが、そういったアウトカムに応じた包括払いを導入できない一因には、治療者の自信のなさが垣間見えます。
こうした社会構造を変革すべく、当オフィスは育成したい者を研修したり月謝を取ったりせずに雇用することにしています。
実践を重ねて確かな実力を備えた人しか採用していませんので、相談に来られた方にもご満足いただけるものと自信を持っています。
当オフィスのコンセプトに共感した方、一緒に働きたいという方も、是非一度お問い合わせください。
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