九段下駅から徒歩1分
月~土実施

ご予約はこちら

性格類型論

古くからの心理学の一分野として、ヒトの性格を取り扱うものがあります。
性格や人格といったものはあるのか、あるとしたらそれはどのように描写されるべきなのかといった命題は、古く紀元前から存在しました。

性格描写の方法は、大別して類型論と特性論に分けられます。
ここでは類型論と特性論それぞれの特徴から、臨床で用いられている心理検査やカウンセリングの課題を解説します。

類型論

類型論とは、性格をいくつかのタイプに分け、個人がそのどれに当てはまるかによって分類するという考え方です。
日本人に最も馴染みの深い類型論は、血液型占いです。

例えば、A型は几帳面で神経質、O型はおおらかで大雑把、といった分類は類型論になります。
複数の心理学的な研究によってこの性格分類は否定されていますが、直観的で分かりやすく簡単なため、根強い支持者がいることも事実です。

特性論

特性論とは、性格をいくつかの要素に分け、その要素の度合いが高いか低いかで性格を描写しようとする考え方です。
ポケモンやドラクエで例えると、攻撃力や防御力、素早さといったパラメータに当たります。

特性論は個人の性格を詳細に描写できる反面、直観的に分かりにくくなるという側面も持っています。
「HP108、こうげき130、ぼうぎょ95、すばやさ102」と言われても、どんなポケモンかパッとは分かりにくいですよね?
しかし、どんな人でもその特性に限れば比較検討できるため、現代の心理学研究では特性論は非常に多く用いられています。

こういった背景もあり、心理士やカウンセラーも目の前にいる相談者(クライエント)を特性論的に見ようとするところがあります。
「この人は外向性が高く、一方で誠実性には欠けるところがある」といったように。

しかし、これではその人の性格を正確に記述はできているのかもしれませんが、心理学の知識に精通していない人にはいまいちピンとこないのではないでしょうか。
それならまだ「この人は典型的なB型です」と言われた方が何となく分かると思うのです。

ジョハリの窓

類型論を用いるもう一つのメリットとして、本人も気づいていない側面に気づくことができる点が挙げられます。
本人の気づいている/気づいていない側面について理解する概念として、ジョハリの窓というものがあります。

ジョハリの窓とは、対人コミュニケーションにおける自己開示と隠蔽について分かりやすく捉えるための考え方です。
自他の気づいているかいないかについて4分割し、主に円滑なコミュニケーションを促進するために用いられます。

特性論による心理検査はその多くが自己回答式のアンケートによって測定されるため、「自分は優しい人として回答しよう」と思って回答すれば優しい人という結果になりますし、「自分は誠実な人として回答しよう」と思って回答すれば誠実な人という結果が出ます(回答を偽っているにも関わらず)
これは、ジョハリの窓の「開放の窓」の部分しか取り扱っていないからです。

一方、類型論はあくまでどのタイプに分類されるかを見ていますので、そのタイプに関する記述を読んでみると、自分でも気づいていない側面に気づくことができます。
これはジョハリの窓で言うところの「盲点の窓」や「未知の窓」への気づきに相当します。

性格検査はどのように活用されるべきか

心理士やカウンセラーはクライエントの個別性と特性を重視し、また重視するよう教育を受けています。
その反動として、他の人との共通性やクライエントの類型を見落としがちです。
その結果、「クライエント本人のことは良く分かっているけれど、彼らがどうすれば他の人との間でうまくやっていけるか」に関する有益な情報を提供できなくなってしまっているのです。

類型論の歴史は特性論のそれより古く、紀元前の古代ギリシャにまで遡ることができます。
それ故に現代では特性論の方が重視されがちですが、今こそ直観的で分かりやすい類型論が再注目されるべきと考えています。
実社会や臨床で大事なことは、まず類型論で相手を大まかに把握し、その後特性論で細かく修正していくという二段階を順に行うことであり、他者への理解の手順を正しく踏むべきなのだと思います。

カウンセリングでも同様に、類型論軽視・特性論重視のカウンセラーが多く見受けられます。
クライエントの詳細な特徴や個別性に囚われるあまり、大掴みで把握できることを念頭に置かないまま話を進めてしまうのです。

例えば、女性の多い職場やグループであることを失念して安直な自己主張法を伝授していないか(性別)、年配の相談者に安易に「分かる人に訊きましょう」とプライド度外視の提案をしていないか、会社の規模を知らないまま管理職としての苦労話を聴き流してしまっていないか(所属組織)といったことです。
こうした類型的な情報は、関係が深まれば深まるほど改めて聞きづらくなる情報でもあります。

当オフィスではこのようなことが起こらないよう、初回のカウンセリングではしっかりと構造化された面談を行うよう心がけています。
初対面ということもあって冷たく感じることがあるかもしれませんが、全てはその後のカウンセリングを最適なセッションとするためのものですので、ご理解いただけますと幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました