冬季うつとは? 冬季うつの症状
冬季うつは、冬になると症状が出現する精神疾患の1つです。
1984年、アメリカ精神科医ノーマン・ローゼンタールによって、冬季うつ病として発表されました。
一般的に知られているうつ病(大うつ病性障害)であると同時に、冬季うつは季節性感情障害(Seasonal Affective Disorder)の一種です。
冬だけでなく、季節の変わり目や特定の季節になると症状が出現するのが、季節性感情障害の特徴です。
うつ病と同じく、気分が落ち込むようになります。
それに加え、睡眠時間が増えたり、食欲が増進したり、体重が増加したりします。
炭水化物を欲する傾向も強まります。
これらは、非定型うつ病と同じような症状です。
つまり、冬季うつを症状だけで診断することはできず、毎年繰り返し症状が起きているかどうかがポイントになります。
冬季うつの診断基準は?
アメリカ精神医学会発行の診断基準(DSM-5)では、抑うつ障害(反復性・季節型)と診断されます。
症状が秋から冬にかけて始まること、季節が変わると症状が治まること、最低でも2年は治まった後に症状が再出現することなどが診断基準になります。
また、少数ではありますが、夏から症状が出現するタイプも存在します。
冬季うつになりやすい人の特徴は?
うつ病と同じく、冬季うつにもなりやすい人がいます。
ここでは、特に冬季うつに限ってなりやすい人の特徴を見ていきましょう。
高緯度
赤道から遠く離れ、寒い地域の人ほど冬季うつの症状がみられやすいです。
赤道に近い緯度の地域に移動しただけで、症状が消失したり、緩和したりしたという報告もあります。
若年者
年齢の若い人の方が冬季うつになりやすいです。
特に20代前半の人は、それ以外の年代の人より症状が出現しやすい傾向にあります。
女性
女性の方が冬季うつになりやすいと報告されています。
これは、どの年代、どの国での調査でも認められています。
またこれは、うつ全般にみられる傾向でもあります。
なぜ冬季うつになる? 冬季うつの原因
日照時間の短さ
冬季うつは、日照時間の短さと関連することが知られています。
高緯度に住む人の方が発症しやすいのも、日の出ている時間の短さが関連しているといわれています。
秋から冬にかけて日照時間が短くなるにつれ、気分の安定している時間も減り、ネガティブな考えになったり、意欲的に行動できなくなったりしていきます。
メラトニン不足
眠気をコントロールする脳内ホルモンとして、メラトニンという物質があります。
起床後、日の光を受けることでメラトニンが抑制され、夕方以降に日が沈むと、メラトニンが生成されて眠気を催しやすくなります。
冬季うつの人は、このメラトニン産生の働きが充分でなく、睡眠が乱れやすい可能性が示唆されます。
日没後もメラトニンが生成されづらかったり、朝になってもメラトニンが生成され続けて眠かったりする、というわけです。
概日リズムの乱れ
一般に「体内時計」と呼ばれている機構が、人体には備わっています(概日リズム)。
毎日同じような時間活動すると眠くなるのも、同じくらいの時間帯に空腹になるのも、体がこの概日リズムを常に刻んでいるからです。
冬季うつの発症には、この概日リズムに関する遺伝子が関連しているという説があります。
概日リズムに関するタンパク質の設計図を担っている遺伝子を、ZBTB20遺伝子といいます。
この遺伝子に変異があると、日照の短さを鋭敏に察知し、それによって気分や活力を低下させている可能性があります。
ZBTB20遺伝子の変異が冬季うつの症状にどう関与しているかは研究中ですが、将来的には遺伝子治療によって冬季うつを治せるようになるかもしれません。
冬季うつの治し方は? 冬季うつの治療
光療法
起床時に強い光を浴びることでメラトニンを抑制し、概日リズムを調整して症状を緩和させることができます。
特に高照度光療法は、1日1~2回、2500~10000ルクスの強い人工光を見つめることで、落ち込みや意欲低下を改善する治療法です。
2500ルクスというと、晴れた日のオフィスの窓近くの明るさですから、晴れている日なら朝カーテンを開けて生活するだけでも、光療法の効果を得られるでしょう。
光の種類としては、青色(寒色)より赤色(暖色)の光の方が治療効果が高かったと報告されています。
夜は寝やすいように寒色や暗色のカーテンを閉め、朝になったらカーテンを開けて、室内の色調を明るくするのが良いでしょう。
期待を手放す
身体的な不調が続くと、不調でないときにやることを色々と詰め込んだり、「より良い一日」を実現させようとしたりする傾向が強まります。
何年も前に実現したような、「完璧な一日」を追い求めるのはやめましょう。
理想に邁進するのは、過去に囚われているのと同じです。
日没の早い日は日没の早い日の、天気の悪い日は天気の悪い日の楽しみ方があり、一定の期待を手放せるようになることが、冬季うつから脱する第一歩です。
瞑想
うつ病を始めとする精神疾患に瞑想が有効とする根拠は徐々に蓄積されていますが、冬季うつにも効果的であるという結果が出ています。
瞑想は感情抑制に関わる左前頭前野の働きを高め、その機能を向上させます。
現在最もよく知られている瞑想法が、マインドフルネス瞑想です。
当オフィスでもガイドをしながらの瞑想をおこなっていますので、冬季うつにお困りの方は一度ご相談ください。
まとめ
ウィンター・ブルーと聞くと、ちょっとした憂うつ感のことのようにも聞こえてしまう、冬季うつ。
実際にはうつ病の一種であり、しかも反復性で罹患したり寛解したりを何度も繰り返すため、実際になっている人からしたら、うんざりしているかもしれません。
今回紹介した方法以外にも、一般的なうつ病治療の方法が有効です。
遺伝性疾患の色彩が強く、家系的になりやすい人もいるかもしれませんが、抗うつ薬や認知行動療法、マインドフルネス瞑想などを取り入れることによって、今ある苦痛を緩和していくことは可能です。
今や国民病とも言われる花粉症同様、冬季うつも、今の苦痛がなくなれば「治療しなくてもいいんじゃないか」と思われやすいところがあります。
冬場に備えて治療に取り組んでおきたい方、今まさに寒さから否定的になられている方は、一度ご相談ください。
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