宿命論的時間観とは?
未来はある程度決定づけられており、人生もまた運命や宿命に従って行われるものである、という考え方を宿命論的時間観(fatalistic time perspective)といいます。
未来や人生に対する、ある種の諦め、無力感、絶望感のようなもののことをいい、この観点を持つ人は「何をやってもどうせ結果は同じ」「成功する人は成功するし、自分のような落伍者は何をやってもうまくいかない」等、生活上の満足度が低下していくとされます※1。
若い人や中年の人は、宿命論的時間観を持つ人ほど生活上の満足度は低下しましたが、高齢になると宿命論的時間観を持つものの満足度までは低下せず、生きてきた年月が長くなればなるほど、宿命論的時間観を持ちつつ、高い満足度を維持することができることが示唆されています。
この宿命論的時間観ですが、内向的な人と外向的な人では、捉え方が異なる可能性が指摘されています。
内向性と外向性とは?
内向的な人、内向性の高い人とは、外部の刺激に興味関心が即座には向かず、頭の中の考えや空想、感情や気分の方に関心を強く惹かれる人を指します。
一人、もしくは少人数と関わることを好み、大勢と会話したり友好的に関わったりすることはあまり好きではない人です。
内気な人、いわゆるシャイな人とは限らず、人前で話すことをあまり苦とも思わない人もいれば、ひどく繊細で人前で話すことを避けたがる人もいます。
内向的な人が宿命論的時間観を持つと、自尊心が高まり、「自分には価値がある」と感じられるようになる可能性が、研究によって報告されています。
宿命論的時間観と内向性の関連
ポーランドの研究では、内向性/外向性と宿命論的時間観、そして自尊心の関連があるかどうかが調べられました※2。
その結果、内向的な人が宿命論的時間観を持つと、自尊心が高くなることが判明しました。
一方、外向的な人が宿命論的時間観を持っても、特に自尊心には変化がありませんでした。
宿命論的時間観を持つ人は、能動的に問題解決に働きかけたり、困難を自ら切り開こうとしたりするのではなく、時間と共に問題が自然と片づいたり、相手や他者が課題に気づいて解決させたりするのを待つ傾向にあるとされます。
内向的な人もまた同様に受け身なところがあり、それと宿命論的時間観が合わさった結果、納得感と共に自尊心が高まったのかもしれません。
つまり、内向的な人の中にあった「何とかしなきゃ」という考えと「どうにもできない」という考えの葛藤が、宿命論的時間観を得たことで変化し、「事の顛末は予め決まっており、自分が手を出そうが出すまいが、最後には収まるべきところに収まるのだ」と、ある意味諦めがついて、葛藤の中にあった(≒自尊心の低い)状態から、葛藤を超越した(≒自尊心の高い)状態になったと考えられます。
葛藤を手放し自尊心を高めたい方はカウンセリングへ
社会や世間には「何とか自力で問題を解決させよう」「能動的かつ主体的に取り組めば困難も乗り越えられるはず」という空気が蔓延しています。
そういった問題もある一方、親や上司、他人の問題に関しては、「その人が変わらなければ外からはどうしようもない」問題も多くあります。
内向的な人はこういった“空気”に過度に当てられ、「自分で何とかしないと」「積極的な自分にならなければ」と強く思い過ぎているのかもしれません。
宿命論的時間観は、そういった強いコントロール感から解放され、「どうにもできないこともある」と諦めたり、結果を素直に受け入れたりする感覚を高めてくれると考えられます。
社会の仕組みや世間の目、他者の思考や感情など、一人では容易に変えられないものに囲まれて、私たちは生きています。
それらを変えたいという思考に囚われたり、変えられない苦痛に苛まれたりすることが、内向的な人の自尊心を低下させている可能性があります。
適度に諦め、とらわれを手放したい方は、心理カウンセリングが効果的かもしれません。
お困りの方は、ぜひ一度当オフィスにご相談ください。
※2 運命か、己が未来をコントロールするか?外向型と内向型における宿命論的時間観と自尊心 https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/00221309.2021.1878486?journalCode=vgen20
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