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心理的安全性のつくりかた -メリットとデメリット、ぬるま湯組織にならないようにするコツ-

ここ10年で急激に知名度を高めてきた、心理的安全性。
「日本の心理の流行はアメリカの10年遅れ」の例に漏れず、2000年頃からアメリカで知られるようになったビジネス用語です。

侍ジャパンや「理想の上司」の話題でもお目にかかることの多くなったこの用語。
『心理的安全性のつくりかた(著:石井遼介)』を概観しながら、心理的に安全な場の作り方や問題点を解説します。

心理的安全性とは? 心理的安全な場とはどういうものか

1999年、ハーバードビジネススクールで組織行動学を研究していたエイミー・C・エドモンドソン教授によって提唱されたのが、心理的安全性です。
心理的安全性(psychological safety)とは、チームの中で「対人関係上のリスクをとっても大丈夫だ」という信念がチームメンバーに共有されていることと定義されます。

チームの中にいると、他のメンバーから否定されたり、嘲笑されたりすることがあります。
そういった対応に怯えず、発言することを恥じたり、他を拒絶したり、罰せられやしないかと緊張したりせずにいられる状態が、心理的に安全な状態です。
何人かがそう思っているのではなく、メンバー全員に共有されているチームが、心理的安全性の高いチームです。

心理的安全性の高い職場とは? Google社のプロジェクト・アリストテレス

Google社は、2012年から社内180チームを調査し、成果を出し続け成功しているチームの必要条件を探すというプロジェクトを4年間実施しました。
これが、プロジェクト・アリストテレスです。
優秀なチームメンバーがいることや優秀なリーダーが率いていることなどが条件の候補に上がりましたが、結果として分かったのは、心理的安全性を含む5つの条件が整ったとき、優れた成果を出せるチームになるということでした。

心理的安全性「ミスを非難されることはない」と感じられること
相互信頼「メンバーは引き受けた業務を最後までやってくれる」と信じられること
構造と明確さ「チームには有効な意思決定プロセスがある」と感じられること
仕事の意味「チームのために行っている業務は本人にとっても意義がある」と感じられること
インパクト「チームの成果が組織の目標達成にどのように貢献するのか理解できている」と感じられること
プロジェクト・アリストテレスで判明したチーム成功の条件

中でも、心理的安全性の高いチームのメンバーは、離職率が低く、他のメンバーから出されたアイディアをうまく活用でき、収益性が高く、マネージャーから評価される機会が2倍多かったといいます。
このプロジェクトの結果を受けて、心理的安全性の知名度は飛躍的に高まることとなりました。

心理的安全性の具体例は? 心理的「非」安全との比較

心理的安全性に対するリスクとして、4つのカテゴリが挙げられています。
この4つのいずれかがあると、チームは心理的「非」安全な場となり、「行動すること」より「行動しないこと」の方を選択するようになります。

一方、日本の組織の特性を踏まえ、心理的安全性の高いチームを作ろうとするときには、4つの因子を備えていることが大切です。
その因子とは、①話しやすさ②助け合い③挑戦④新奇歓迎です。
先の4つのリスクを排し、4つの因子が存在するとき、日本では心理的に安全だと感じやすいとされています。

話しやすさ業務と相手の状況を把握し、多様な視点から状況を判断し、率直な意見とアイディアが出せる
助け合いトラブルに迅速・確実に対処・対応でき、通常より高いアウトプットを目指せる
挑戦組織・チームに活気を与え、時代の変化に合わせて新しいことを模索し、変えるべきことを変えられる
新奇歓迎メンバー一人ひとりがボトムアップに才能を輝かせ、多様な観点から社会・業界の変化を捉えて対応できる
チームの心理的安全性の4つの因子

心理的安全性には何が必要? 心理的安全性の高め方

心理的安全性を高める方法の一つとして本の中で紹介しているのが、行動分析(Behavior Analysis)です。
行動の前に「行動を誘発する因子(きっかけ)」、行動の後に「行動を増やしたり減らしたりするような結果(みかえり)」を設定し、きっかけ→行動→みかえりの3つによって事象を理解する、心理学的手法の一つです。

『心理的安全性のつくりかた』では、行動分析を用いて、話しやすさ、助け合い、挑戦、新奇歓迎をどう増やしていくかについて、詳しく書かれています。

心理的安全性の悪い例とは? 心理的安全性の問題点

まず感じるのは、心理的安全性の適用範囲がたいへん狭いということです。
技術スキル的に優れている人よりも場の心理的安全性を高めることの方が有用、という主張は確かにキャッチ―ですし、そこを誤解したまま優秀な人材の採用を目指したり、優秀ではないからと諦めたりするような方針は転換した方が良い、というメッセージも分かります。

ただ、「発言にビクビクするような職場って良くないよね。のびのび意見を言えて、挑戦にも肯定的な職場の方が良いよね」という主張には、「それはそうだろう」という感想しか出ないと思うのです。
大前提として、心理的安全性を高めようとなるところは、優秀な上司・トップがおり、優秀な部下がいて、ただ今は心理的に「非」安全であるという、その限定的な状況しかないだろうということです。

ここで言う「優秀な上司」「優秀な部下」というのは、技量が高いとか精度が高いということではありません。
目的を理解し、目標に向かって業務を進められるかということです。
会社や組織に所属すればみんな必ず目標に向かうかというとそんなことはなく、むしろそうでない人によって困らされり、悩まされたりしていることが現場的には大半です。

例えば、話しやすくなった職場で、勤務時間の95%を「業務と関係のない雑談」で過ごせる人のいる職場では、心理的安全性を適用することはできません。
本人は「職場環境を明るくしている」「業務上必要な話だ」と思っていても、雑談に付き合う方は手を止めねばならず、また気分よく話してもらうことが感情労働となり、チームの生産性は落ちるでしょう。

中長期的な目標を見据えて動くべきなのに、どうしても短期目標を取りに行き、また短期目標を取れた部下を称揚してしまう上司にも、心理的安全性を適用してはいけないでしょう。
挑戦しようが新しいことを取り入れようが、短期的なことしか評価されないのですから。
ここで言う「短期目標」も、1,2ヵ月先のこともあれば、今ここでの会話の「仕事した感」のこともあります。

現場の困りごとというのは、こういった「優秀でない人」によるものが、存外多いものです。
この辺りを端的に言い表すと、「いやgoogleだからできるんでしょ」となります。

実際、あと1歩で心理的に安全な職場になれる、惜しい職場もあるでしょうから、心理的安全性が全く無意味とは思いませんが、それ以上に「うちではできない」と感じる職場の方が多いのも、また事実でしょう。

心理的安全性が適用できないもう1つの例は、「非」安全な人が心の傷トラウマを抱えているケースです。

異動前の部署でパワハラを受け、異動後も元気の良い挨拶やくぐもった低い声を聞くと頭が真っ白になってしまう人は、どんなにリーダーが否定的な発言を排しても、感謝を伝えても、症状を起こらなくすることはできないでしょう。
ショックトラウマを受けた人への対応に周囲も疲れ、「意見もアイディアも出さなくてもいいや」と、部内の雰囲気まで妥協的なものになるかもしれません。

両親の喧嘩を見て育ち、家庭内にも外にも安心感のなかった人は、いきなり職場で「心理的安全性を高めよう!」と言われても、動揺してしまうでしょう。
「自由に発言しても良い」なんて社風は「これまで一度でも自由に発言することのできた人たちの道楽」と受け取られ、「非」安全に対する身体的な緊張には太刀打ちできないでしょう。

心の傷トラウマを持った人には、本書とはまた別のアプローチが必要になります。

これは、私が臨床現場に身を置き、そこでの相談を主に受けていたために、その件数を多く目の当たりにしたことに由来しているかもしれません。
ただ、一般に認識されているよりはずっと多くの方がトラウマによって安心感を持てなくなっているのも事実であり、トラウマ治療もせぬまま心理的安全性を高めようとし、より自責的になったり、職場全体の困り感が増したりしてしまうケースも、現実問題として存在します。

どうしても職場で自由に発言できない、新しいことを受け入れられず、新しいことに挑戦もできない背景には、トラウマが隠れている場合があります。
職場で涙が止まらなくなったり、頭が真っ白になったりされる方は、一度当オフィスにご相談ください。

まとめ

心理的に安全なチームとは、①話しやすさ、②助け合い、③挑戦、④新奇歓迎の風土のあるチームです。
一方、「非」安全なチームとは、①無知、②無能、③邪魔、否定的と思われるのを恐れるチームです。

4つのリスクを排し、4つの因子を備えることで、「リスクを取っても大丈夫」とメンバー全員が思えるのが、心理的安全性の高いチームです。

本書では触れられていませんが、心理的安全性を高めるには、一定以上の目的遂行能力と達成意欲のある上司と部下でチームが構成されていないと、達成は難しいと考えられます。
また、職場にトラウマを持った人がいる場合には、その治療を優先した方がいいとも考えられます。

より詳しく心理的安全性の高め方が気になった方は、本書を手に取ってお読みいただければ幸いです。

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